酒卸し、おしぼり、氷… 酒類提供再開で「うれしい悲鳴」関連業者に活気

全国の得意先へ商品を発送する酒類専門店「山仁」の従業員たち=9月30日午後、宇都宮市川田町

 緊急事態宣言の解除に伴い、10月1日、栃木県内でも飲食店などで酒類の提供が再開される。支える業者にも活気が戻り、酒店では従業員がワインやビールなどの配送に汗を流し、貸しおしぼり業者には注文が殺到、氷の製造も急ピッチで進む。飲食店の多くが休業してから約2カ月。「止まっていた時間が動きだした」。関係者は「仕事ができる喜び」をかみしめている。

 30日午後、宇都宮市川田町の酒類専門店「山仁(やまじん)」。広々とした倉庫で従業員がボトルを丁寧に梱包(こんぽう)する。発送先は都内の飲食店や静岡県熱海市の高級旅館など。大橋次郎(おおはしじろう)専務(53)は「仕事ができることが何よりありがたい」と安堵(あんど)する。

 取引先は海外も含めて約2千軒に上る。その大半が飲食店。相次ぐ休業に伴い、「2カ月仕事がストップしていた」という。大量の在庫を抱え、賞味期限が近い商品は「泣く泣く」処分せざるを得なかった。

 売り上げはコロナ禍前から8~9割減った。宣言の解除は歓迎するが、第6波への危機感も強い。「この状態を繰り返せば、業界全体が衰退してしまう」

 県内を中心に居酒屋など飲食店約4千軒と取引する貸しおしぼりの「三協(さんきょう)」(さくら市氏家)には、注文が殺到している。2日間で数千件の問い合わせがきているといい、添田泰弘(そえたやすひろ)社長(47)は「うれしい悲鳴だ」と急ピッチで出荷準備を進めている。

 感染拡大前は1日約20万本を出荷していたが、9月の宣言期間中は約8万本まで落ち込み、工場も週3日休業せざるを得なくなっていた。「手指衛生がコロナ予防には重要。何とか生産を追い付かせて注文に応えたい」と意気込む。

 「3日ほど前から注文が戻り始め、今はホッとしている」。宇都宮市南大通り4丁目、氷販売業「関本氷店」の店主関本修一(せきもとしゅういち)さん(71)は胸をなで下ろした。

 JR宇都宮駅周辺の飲食店やスナック計約40店に氷を販売。売り上げの8割を占めるが、宣言発令以降、ほぼ全ての飲食店から注文が途絶えた。「廃業が頭をよぎることもあったが、どうにか持ちこたえた」

 補償があっても「すずめの涙ほど」だったという。関本さんは「制度を見直してほしい」と求めた。

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