五島・富江-黒島の定期航路が廃止 黒島唯一の島民、最後の便に乗船

定期航路として最後の運航となった船便=五島市、富江港

 長崎県五島市富江町と約7キロ先に浮かぶ二次離島の黒島を結ぶ市営定期航路が9月30日、廃止された。黒島に1人で居住する島民も最後の利用となった。
 市富江支所や旧富江町郷土誌によると、町営船として1947年から運航を開始。60年には約200人が暮らしていたが、次第に減少し、航路の収支は赤字が続いた。92年には年間延べ5720人だった利用客数は、2020年度延べ約150人まで減った。
 市は16年10月から、週1日1便で、ほかは予約制の「デマンド運航」を実施するなどして航路を維持。しかし、利用者増による収支改善のめどが立たないことなどから、10月以降、国の補助航路としての認定が難しく、市単独の運営も困難と判断した。
 今後は、島民に対し海上タクシー利用時にこれまでの運賃相当額との差額を補助する。島民以外は海上タクシー代が必要となる。
 30日は、月に2~3回黒島から渡ってくる島民の山中マサ子さん(73)が午前中の便で富江へ。買い物を済ませ、午後の便で出港した。山中さんは最後の運航となる船長に対し礼を述べた。
 同市の市営定期航路は奈留-前島のみとなった。


© 株式会社長崎新聞社