なぜネット選挙?若者がバーチャルで次々と参加した秘策とは?乙武洋匡が自民党・山田太郎氏に迫る!

選挙ドットコムでは、乙武洋匡氏をMCに迎え選挙や政治の情報をわかりやすくお伝えするYouTube番組「選挙ドットコムちゃんねる」を毎週更新中です。

今回は2021年7月14日に公開された対談の様子をご紹介。ゲストは自民党・山田太郎議員です。ネット選挙の戦い方や、政治家とネットの展望について伺いました。

 

ネットでの戦い方はみんなからアイデアを頂いた 

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ネット選挙に強いことで有名な山田議員。乙武氏は、「なぜそこまでネット選挙に張ろうと思えたのですか?」と尋ねます。山田議員は、「2015年までは次の選挙をネットでやる予定はなかった。みんなの党がなくなって、そのあと作った日本を元気にする会もなくなった。新党改革に傘を借りて出馬したが、戦い方はネットしかなかった。仕方がないからネットで戦った**」と答えました。

続けて乙武氏は、「具体的には何をしたのですか?」と質問します。山田議員は、「表現の自由に関してはネット上で評価を頂いていた。表現の自由を守る会をバーチャルで立ち上げて会員を集めた。1〜2ヶ月で5,000人いかなければ政治家を続けるのは無理だろうと思っていたが、2週間で20,000人集まった。『これでイケるかもしれない』ということでスタートした。

それと全国比例ということもあり、Twitterの中で味方を増やした。お互いが仲間同士で可視化できるように徹底した。たとえばハンドルネームの後ろに黒リボンマークをつけて、表現の自由に対する応援団ということを認識してもらった。黒リボンマークのアイデアもネットの力によるもので、『ネットで戦うのであればこうしてみれば?』とみんなからアイデアを頂いた」と話しました。

電子為書きは政治への参加意識を作った

2019年の選挙時には、電子為書きがたくさん届いたそうです。山田議員は、「通常は政治家から為書きを貰うのだが、政治家から貰ったところで何にもならないし、おっかない事務所になってしまう。そこで私は『普通の人から応援を貰ったほうが良いだろう』と考えた。

電子で為書きを貰い、プリントアウトして壁に貼った。その壁を見た人が『私も送りたい』という気持ちになって、政治への参加意識ができる。自分が送った為書きが貼られてあるのを見ると嬉しくなる。Twitterでも拡散され、相乗効果でどんどん広がっていった」と話しました。

乙武氏は、「良くできたシステムですね」と感想を漏らします。山田議員は、「『若者の政治参加』とみんな口では言うものの、高齢のプロっぽい方々が集まっている事務所には怖くて入れない。バーチャルでも参加意識があるという意味では、電子為書きは分かりやすくて非常に良かった」と答えました。

 

私のやり方はネットどぶ板

乙武氏は、「この時はまだ山田さんも政治歴が浅かったから、既存のやり方に固執せずに振り切れたのですか?」と尋ねます。山田議員は、「私は今でも特定の団体や政党の派閥に入っていないから、既存のやり方がよく分からない。だから自分で考えるしか方法がなかった。

私のやり方はネットどぶ板。Twitterで『この野郎』と思うコメントにはスルーするが、褒めてもらえたらコメント返し以外の別な方法でメッセージを返す(※コメントを直接返してしまうと公職選挙法上の問題がある)。本人からメッセージが届くと嬉しくなるから、それを丁寧にやっている。エゴサーチして、私の名前や表現の自由に関してツイートしている人に1件ずつ丁寧にメッセージを届ける。まさにネットどぶ板だ」と話しました。

しかし、この作業には膨大な時間がかかるのだそうです。乙武氏は、「途中で『俺って何やってるんだろう』という気持ちにはならなかったのですか?」と尋ねます。山田議員は、「逆に依存症のような状態で、見ていないと心配になるぐらいエゴサーチしていた。ストレスに感じることはなかった。エゴサーチは今でも続けていて、ネットでの世論はどうなっているかが良く分かる」と話しました。

続けて乙武氏は、「山田さんから見て今の政治家のネットの使い方は下手くそだと思いますか?」と尋ねます。山田議員は、「(政治家は)ネットが何かを根本的に分かっていない。ネットは双方向のツールであると同時に、コンテンツと熱量が必要だということを分かっていない政治家が多い。単純にビラとかをネットに載せて安く簡単に拡散できると思っているが、そうではない。たとえば、動画を載せたら政治家の思いや熱量が細部まで伝わってしまう。特に熱量がないと拡散しない」と話しました。

乙武氏は、「ネットを使う中で怖さはありますか?」と尋ねます。山田議員は、「自分では正しいと思う表現でも、他人から見たら違う捉え方をされることも沢山ある。たとえば私は子ども食堂をサポートしていて、地域の交流の場として重要な位置付けであるから広まったほうが良いと思っている。でも、『元々はないほうが良い場なのだから、それをあるほうが良いと広めるのはおかしい』と捉える人もいる。自分とは違う側面から見る人もいるから難しい」と答えました。

 

山本太郎議員は演説のプロ

乙武氏は、「与野党問わずネットの使い方が上手だと思う政治家はいますか?」と尋ねます。山田議員は、「山本太郎議員は圧倒的に上手いと思った。彼はプロだ。演説する時間帯も夕方〜夜で、照明を点けて『命が大事だ!生きろ!』という最も伝わりやすいことを熱量込めて話すから(聴衆の心に)響く。演説は与党と野党でも内容が変わってくる。与党は『〇〇〇が反対だ』とは言えないから、昼に安定感のある演説をする。野党は攻撃も批判も含めて演説するから、夜の時間帯が画的にも強い」と話しました。

乙武氏は、「これだけ結果を出すとベテラン議員から『ネットのことを教えてくれ』と言われませんか?」と尋ねます。山田議員は、「選挙前だと毎日のように聞かれる。私が持っている知識や経験を説明しつつ、ホームページやTwitterの使い方をサポートしている。2016年と2019年ではネットの使い方もまったく違う

2016年はどちらかというとWebやブログが中心で、検索されて待っている状態だった。2019年はSNS等での積極的な発信が中心で、ブログやホームページは見られていなかった。次はどうかというと圧倒的に動画時代。我々もどんどん新しいことをやっていかないと、今までの方法を踏襲するだけでは勝てない。私は全国比例の同じ自民党の競争相手であっても、ネットの使い方を教えている」と話しました。

 

山田太郎氏プロフィール

1967年東京都生まれ。慶応義塾大学経済学部卒、早稲田大学大学院博士課程単位取得退学。外資系コンサルティング会社を経て製造業専門のコンサルティング会社ネクステック社を創業、3年半で東証マザーズに上場。国内・海外企業を買収、中国を含むアジア各国に積極展開。その後日本企業の海外進出支援会社を創業。東京工業大学特任教授、早稲田大学客員准教授、東京大学工学部非常勤講師などを歴任。

2010年、参議院議員通常選挙にみんなの党から立候補するも落選。2012年に繰り上げ当選となる。これまでの経営者・教育者の経験を活かすステーツマン(政治家)として活躍中。

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