総書記演説のメッセージを読み解く “北南関係悪化の原因解消、行動で示せ”

金正恩総書記が日本の国会にあたる最高人民会議第14期第5回会議(9月29日)で施政演説を行った。演説では、朝鮮の社会主義建設が労働党第8回大会を契機に、「わが国家国第一主義」を全面的に具現する画期的な発展段階に入ったことが強調され、政府の施政方針が示された。また演説では、現在の北南関係と朝鮮半島情勢が概括的に評価され、現段階の対南政策も明らかにされた。

金正恩総書記が最高人民会議で施政演説を行った。(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

「わが国家第一主義」を具現

 4年前、米国本土を射程内に収めるICBM試射成功により国家核武力を完成し、戦略国家としての地位を固めた朝鮮は、過去とは異なる高みから情勢変化を捉えている。

施政演説では、「北南関係悪化の原因を知りながらも、これを無視して放置し、何の変化も見せない南朝鮮当局の態度」が指摘され、「今、北南関係は冷却関係を解消し和解と協力の道に進むか、もしくは対決の悪循環の中で分裂の苦痛を受け続けるかという、深刻な選択の岐路に立っている」との見解が示された。

そして「北南関係を根本的に解決するうえで提起される原則的問題」について述べた。対南政策の目的は、悪化した北南関係を一時的に緩和することではない。「根本的な解決」とは、すなわち不可逆的な関係発展を目指しているということだ。

金正恩総書記の施政演説を読み解くためのキーワードは「わが国家第一主義」だ。これは、トランプ前大統領が唱えた「アメリカファースト」の自国第一主義とは違う。

今年1月に開かれた朝鮮労働党第8回大会は、党第7回大会(2016年)以降の5年間に獲得した最大の成果が新たな発展の時代、「わが国家第一主義」の時代を切り開いたことだと強調した。

歴史の荒波の中でもチュチェ(主体)の航路を変更させなかった祖国に対する誇りと自負、その国力を最高レベルに高めていこうとする意志が本質であるとされる「わが国第一主義」は、施政演説でも言及されたように、朝鮮の内外政策に全面的に具現されている。

民族問題の解決に対する政策的立場も例外ではない。朝鮮が言う国力とは、他国に頼らずとも、自らの尊厳と自主的権利を守ることができる力のことだ。

党大会の決定に従って対外分野では、国威向上・国益守護を第一使命として捉え、自主の原則を堅持し、朝鮮の前進を妨げる基本障害、最大の敵である米国を制圧・屈服させることに活動の焦点を合わせている。

また、党大会で示された「国防科学発展および兵器システム開発5カ年計画」を遂行し、国家と民族の尊厳と安全、平和守護の担保となる国防力をたゆまなく強化するとともに、「強力な国家防衛力は外交を排除するのではなく、正しい方向へと導き、その成果を担保する強力な手段になる」(党大会報告)との観点から、戦略的構想が練られ実行されている。

変わるべき対決姿勢

 北南関係に対する立場と民族問題の解決方法は、北南首脳会談(金正恩総書記・文在寅大統領)で発表された共同宣言に示されている。

自らの力を増強し、「わが国家第一主義」の時代、自尊心と繁栄の新時代を切り開いた朝鮮の立場からすれば、民族自主の精神を核とする板門店宣言(2018. 4.27)と9月平壌共同宣言(2018.9.19)がすでにある。

残された課題は宣言履行の実践行動だ。これはどちらか一方の努力だけで解決される問題ではない。

施政演説は「北南関係を根本的に解決するうえで提起される原則的問題」について、「南朝鮮当局は、わが共和国に対する対決的な姿勢、常習的な態度から変わらなければならず、言葉ではなく実践によって民族自主の立場を堅持し、根本的な問題から解決しようとする姿勢で北南関係に取り組み、共同宣言を大事に扱い誠実に履行することが重要だ」と述べた。

北南関係のこれらの原則的立場は、党第8回大会でも表明されたが、今回は言葉ではなく実践で証明すべき姿勢と立場が、より明確に指摘された。

施政演説は「互いに対する尊重が保障され、他方への偏見的な視点と不公正な二重的態度、敵視の観点と政策がまずは撤回されなければならない」と述べた。

朝鮮の国防力強化を「挑発」だと罵倒し、自らの軍備増強は「対北抑止力の確保」であると美化する「米・南式の対朝鮮二重基準」と決別しなければならないという要求は、最高人民会議に先立ち、金与正党副部長の談話(9月25日)を通じて既に公にされた。

南当局は「北南関係の悪化の原因を知りながら無視」してきたが、共同宣言をともに発表した北側は、南当局が米国に従属し、自らの運命の手綱を他国に任せるのは愚行だと繰り返し指摘してきた。

自らの力が、分断と対決を追求する米国を圧倒しない限り、民族の願いはかなわない。朝鮮にとって「わが国家第一主義」時代の国防力強化の目的は明らかだ。

金正恩総書記は、施政演説で「我々は、南朝鮮を挑発する目的も理由もなく、危害を与える考えもない、南朝鮮は北朝鮮の挑発を抑制しなければならないという妄想と、ひどい危機意識・被害者意識から早急に抜け出すべきだ」と述べた。

局面転換を望むなら、米国追随の表れである対北対決姿勢を変えなければならない。残り任期僅かの文在寅大統領は、施政演説に込められたメッセージを真摯に受け止めるべきだろう。

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