山で、キャンプで作りたい! プロが教えるシーン別『簡単外ごはん』

ファミリーキャンプや山登りなど、さまざまなシーンで楽しみたいのは、やっぱり「外ごはん」。でも、初めての外ごはんでは、どんな道具を使えばいいのか、どんなレシピが簡単でおいしくできるのかがよくわかりません。そこでアウトドア料理のプロに、それぞれのシーンに適した道具の選び方と簡単なレシピを紹介してもらいましょう。

きちんと準備して、おいしい「外ごはん」を作ろう!

初めてでも簡単に作れる外ごはんを教えてくれるのは、アウトドア料理が得意な料理研究家・山戸ユカさん。旬の食材を使った循環型レストラン「DILL eat, life.」のオーナーシェフをつとめるかたわら、レストランクオリティの無添加トレイルフード「The Small Twist Trailfoods」の製造も手がけています。

そんな山戸さんに外ごはん作りのレクチャーを受けるのは、チャンネル登録者数17万人を超える人気登山YouTubeチャンネル「かほの登山日記」を運営するかほさん。自身のチャンネルでは、手軽に作れる山ごはんを紹介していますが、今日は料理研究家の先生にひと味違った料理を教えてもらいます。

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今日は、家族でオートキャンプに出かけたとき、簡単に作れる「ファミキャンごはん」と、山歩きのときに手軽に作れる「山ごはん」、ふたつの外ごはんを紹介しますね。かほさんは外ごはん、作りますか?

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山へ行ったときに「山ごはん」は作りますけど、大人数で出かけることがあまりないので「ファミキャンごはん」を作る機会はないですね。

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それじゃ、今日はぜひ「ファミキャンごはん」を覚えて帰ってくださいね。

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よろしくお願いします~!

簡単でおいしい「ファミキャンごはん」を伝授!

おいしいごはん作りのためのアイテム選び

山戸さんに「ファミキャンごはん」のレシピを紹介してもらう前に、ファミリーキャンプ向きアイテムの選び方についてもレクチャーしてもらいましょう。

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オートキャンプでよく使われるのは「ツーバーナー」。バーナーの火口がふたつあるので、複数の調理を同時に行えます。またゴトクが大きいので、大きめの鍋も載せられます。ガソリンを燃料に使うモデルもありますが、初心者には簡単に着火できて火力調節がしやすい「ガスツーバーナー」がおすすめです。

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家庭用カセットこんろにも使用する「CB缶」を使うモデルと、アウトドア用に設計された「OD缶」を使うモデルがありますが、初心者は家庭でも扱い慣れているCB缶のほうが、馴染みがあるかもしれませんね。

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好みのモデルの燃料がOD缶なら、OD缶仕様でもかまいませんよね?

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もちろん! ただ、どちらのバーナーを選ぶにしても確認したいのが、ガスこんろに「PSLPGマーク」が付いているかどうか。

このマークが付いていれば、法律で定められた国の検査に合格したガスこんろという証明になるので、安心して使えます。

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このあいだ私も工業会の方から教えてもらって、マークの意味を知りました。すべてのこんろに付いているかと思ったら、インターネットを中心に出まわっている輸入品には、付いていないものも多いんですよね?

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そうなんです。本来「PSLPGマーク」が付いていない製品を日本で販売することはできないんですけど……。ガス器具なので、ちゃんと認証を受けた安心できる製品を使いたいですね。

調理器具は、3~4人分の料理が作れる「クッカーセット」がファミリーキャンプのスタンダード。大鍋、小鍋、フライパンなど複数の鍋がセットになっているものが多いですが、すべてが大鍋に収まってしまうので、コンパクトに収納できます。

BBQの炭や薪の火おこし、料理の仕上げに表面をあぶってこんがり焼き色を付けるのにも便利な「トーチバーナー」も、あると便利なアイテムです。

調理を始める前に確認しておきたいコトとは?

CB缶とOD缶では取り付け方法が若干異なりますが、どちらも簡単に取り付けることができます。

CB缶タイプ
OD缶タイプ

※説明のために横向きにしていますが、カートリッジの取付けは各製品の指定通りに行ってください

モデルによっても違いますが、CB缶ならガスカートリッジ(ガス缶)をホルダーにセットして固定。OD缶ならねじ込んでガスカートリッジを固定します。

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それではガスカートリッジを取り付けておきますね。取り付け前に「Oリング」の確認もちゃんとしておきます!

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そうですね。急いでいるとつい忘れてしまいますけど、毎回確認しておかないといけませんね。

ガス器具とガスカートリッジを接続させる「Oリング」は、ガス漏れを防ぐためのゴムパッキンです。これって、使用状況や経年劣化でヒビ割れたり、ささくれたりしてしまうんです。

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もし劣化したまま使用したら、ガスが漏れて炎上してしまうこともありますね。使う前には、必ず目で見て確認しないといけませんね。

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炙り料理に使うトーチバーナーにも、同じように「Oリング」が付いているので、こちらも確認しておきましょうね。

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これは手で持って使うものだから、ガスが漏れて炎上したら怖いですね……

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トーチバーナーとガスカートリッジが正しく取り付けられていないと、隙間からガスが漏れてしまうことがあるので、斜めになったりしないように取り付けることも大事ですよ。

カンタンだけど本格的!「炙りチキンのスパイス炊き込みご飯」

準備が整ったところで、さっそく山戸さんに「ファミキャンごはん」を教えてもらいましょう!

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この料理のポイントは、トーチバーナーであぶって一気の焦げ目を付けて、香ばしさを出すことです。やってみます?

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やりたいです! トーチバーナーは山へ持っていかないので、あまり使ったことがないんです。

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焦げ目を風味にするので、ここでよく焦げ目を付けてくださいね。

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めっちゃ香ばしいにおいがしてきました! 焼き鳥みたいでお腹がすいてきた(笑)

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あとはミックスナッツ、タマネギ、キノコを炒めて……

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え~、ミックスナッツも入れちゃうんですか!?

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粗く刻むと食感があっておいしいんですよ。材料が炒まって味付けをしたら、あとは炊くだけ。工程が少ないので初心者でもカンタンです!

炙りチキンのスパイス炊き込みご飯

<<材料>>

【A】
鶏モモ肉(ひと口大に切る)…200g
塩…小さじ1/4
しょう油…小さじ2
酒…小さじ2
きび砂糖…小さじ1
ニンニク(すりおろし)…1かけ

白米…2合
タマネギ(みじん切り)…1/4個
お好きなキノコ…1カップ分
ミックスナッツ(粗く刻む)…大さじ2
オリーブオイル…大さじ1~2
ガラムマサラまたはカレー粉…大さじ1
塩…少々
ブラックペッパー…適宜
パセリ…適宜

<<作り方>>

①あらかじめ自宅で、Aの材料をすべてボウルに入れ、鶏肉に下味をつける(暑い時期は容器に入れて冷凍するとよい)。

②現地で①の鶏肉をバットに並べ、皮目を上にしてトーチでしっかり焼き色が付くまで炙る。

③鍋にオリーブオイルを熱し、ミックスナッツ、タマネギ、キノコをしんなりするまで炒め、白米とガラムマサラ、塩も加えて軽く炒める。

④お米がやや透き通ってきたら水(米の1.3~1.4倍)を加え、②の鶏肉を上に載せてフタをする。

⑤沸騰したら弱火にし、15分ほど炊いて火を止め10分蒸らす。器に盛って、お好みでブラックペッパーやパセリを加えれば完成。

おいしさの秘密は出しの出る食材!

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おいしい~! 鶏肉をあぶったのが効いていますね。あっ、ナッツの食感もいい!!

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ミックスナッツだから、いろんな味や食感が楽しめるんです。これ、ほとんどかほさんが作ったんですよ!

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そう考えるとカンタンですね~(笑) 味付けも塩とガラムマサラだけなのに、ホントにおいしい!

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鶏肉やタマネギ、キノコなど、ダシが出る食材を使っているから、コンソメなどを使わなくても十分おいしいんですよ。

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これ、帰ったらもう1回作ってみます! それくらいおいしい!!

テント内での調理は絶対にダメ!

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料理をするときに注意をしたいのが、作る場所です。雨が降っていたり、寒かったりすると、テントの中で料理を作りたくなることもあると思いますが、これは絶対にやってはいけません。

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そうですよね! ガスを燃焼させるためには酸素が必要ですけど、テントの中では酸素不足になって一酸化炭素中毒を引き起こす可能性がありますからね。

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それにテントは非常に燃えやすいものなので、火が燃え移ったら大変です。火事になってまわりのキャンパーさんも、危険な目に遭わせてしまうかもしれません。

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おいしいごはんを食べるためにも、調理は必ず屋外でしなければいけませんね!

簡単なだけじゃない「山ごはん」を食べよう!

山歩きに選びたいアイテムと注意点をチェック!

さて続いては「山ごはん」。先ほどの「ファミキャンごはん」と違って、山歩きで食べるごはんなので、よりコンパクトに、より簡単にという点が重要になってきます。

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ファミリーキャンプと違って、山歩きはザックを担いで荷物を運ばなければいけないので、アイテムもできるだけ軽くしたいですよね? ですから使うバーナーもコンパクトな「シングルバーナー」を使います。

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これもツーバーナーと同じで、燃料が「CB缶」のモデルと「OD缶」のモデルがありますよね?

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はい! 一般的には、高山にはOD缶が向いていると言われていますが、どちらも簡単に扱えるので、自分の登山道具や好みに合ったモデルを選べばいいと思います。

ガスカートリッジとの接続は、それぞれ方法が異なりますが、どちらも簡単に取り付けられますよ。

CB缶タイプ
OD缶タイプ

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あと大事なのは「PSLPGマーク」ですよね!

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その通り! シングルバーナーにも「PSLPGマーク」が付いているので、安全に山ごはんを楽しむためにも、購入時には必ず確認してください。

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ツーバーナーと違って、こんな札に「PSLPGマーク」が付いているんですよね。私が使っているシングルバーナーにも付いています!

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あとはツーバーナー同様、Oリングの確認も忘れないように。ヒビ割れたり、ささくれたりしていないか、きちんとチェックしておきましょう!

調理をするためのクッカーセットは、持ち運びやすい軽量でコンパクトなモデルがおすすめです。

コンパクトにパッキングできるように、シングルバーナーと燃料を入れることができるモデルが便利。これなら荷物もかさばりません。

油を使わず調味料は塩だけ!「トマトとチョリソーのクスクススープ」

続いて山戸さんに作ってもらうのは「山ごはん」。インスタントやレトルトもいいですが「ちょっと味気ないな」と思っている人におすすめしたい一品です!

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チョリソーとかクスクスとか、なんだかオシャレで山ごはんっぽくないレシピですね?

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でもクスクスって、戻すと2倍ぐらいになるので腹持ちがよく、山向きの食材なんですよ。今回選んだキャベツやタマネギも、山では傷みにくい食材ですし。

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山には生野菜を持っていったことがないので、なんだか新鮮です!

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野菜は炒めるんですけど、山に油は持っていきたくないので水で炒めます。

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えっ??? 水で炒めるんですか!?

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少ない水で炒めると、早く炒まるんです。でも、水を入れすぎると100℃以上にならないので入れすぎないでくださいね。

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クスクスは、火が通るまでに時間がかかったりしないんですか?

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「火を通す」というより「戻す」感じなので、ごはんを炊くほどの時間はかかりませんよ。そんなところも山向きですよね。

トマトとチョリソーのクスクススープ

<<材料(2人分)>>

タマネギ(スライス)…1/4個
キャベツ(ざく切り)…1枚
スライス干し椎茸…4~5枚
チョリソーまたはウィンナー(スライス)…2~3本
濃縮トマトピューレ…1本
マッシュポテトフレーク(あれば)…大さじ1
インスタントクスクス…大さじ2
塩…適量
水…2カップ弱

<<作り方>>

①コッヘルにタマネギと大さじ1の水(分量外)を加えて火にかける。

②キャベツも加えて炒め、野菜がしんなりしてきたらチョリソーも加えて炒め合わせる。

③濃縮トマトピューレと干し椎茸、塩少々と水を加える。

④沸騰したら弱火にして2~3分煮る。

⑤マッシュポテトフレークとクスクスを加えてかき混ぜ、フタをして火を止める。

⑥5分ほど蒸らしてから再度火にかけて温め、塩で味を調えれば完成。

味付けが塩だけとは思えないほどのおいしさ!

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野菜やチョリソーの旨味がスゴく出てますね。味付けは塩だけだなんてウソみたいです!

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チョリソーのスパイシーさが出ているから、味に深みも出るんですよ。もっと腹持ちさせたいと思ったら、クスクスやマッシュポテトフレークを増やすといいですよ。

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これにパスタを入れてもおいしそう!

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いろいろなアレンジをしてもおいしく食べられるので、いろいろと工夫してみてください!

どんな場合でも車内は火気厳禁!

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山歩きの場合でも、調理する場所は必ず屋外ということを忘れないでくださいね。テント内はもちろん、山歩きへ出かける前や帰ってきたあと、車内で調理をする人もいるようですが、これもやってはいけません!

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一酸化炭素中毒や火災になって、最悪の場合は大事故になってしまうかもしれませんからね。

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車は燃料を積んでいますから、引火したら大爆発です。考えただけで恐ろしいですね……

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みなさん! 料理を作るときは絶対に屋外でお願いしますね!

BBQなどで活躍する「トーチバーナー」の注意したいこと

トーチバーナーを使うときはココに注意!

炙り料理などで活躍する「トーチバーナー」は、炭や薪に着火する際にも非常に便利。しかし使い方を間違えると危険なので、正しい使い方を覚えておきましょう。

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「ファミキャンごはん」を作ったときに使った「トーチバーナー」ですが、使い方を間違えると危険なので、これについても正しい使い方を紹介しておきますね。

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BBQやオートキャンプで、使う人が多いですもんね。ぜひ教えてください!

火口を下に向けて使用しない

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まず気を付けたいのが、トーチバーナーを大きく傾けて使用しないこと。製品によっては、火口が下に向くなど大きく傾けすぎたり、逆さにして使うと、ガスが液体のまま出てきて大きな炎が出てしまいます。ゴジラが吐き出す炎みたいなので「ゴジラ火」なんて呼ばれたりしています。

木製テーブルの上などでの使用はNG

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トーチバーナーを使うとき、まわりに燃えやすいものがないかを確認しておきましょう。プラスチック製の食器が近くにあったり、木製テーブルの上で使うと、溶かしたり焦がしたりしてしまいます。枯れ葉が多い場所では、火が燃え移らないようにしてから使ってください。

トーチバーナーやガスカートリッジが加熱されると危険

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炭や薪の火おこしにトーチバーナーを使うことがありますけど、なかには焚き火台やBBQグリルに突っ込んだまま放置する人がいます。炭や薪に火がおきてきて、その熱がトーチバーナーに伝われば、最悪の場合ガスカートリッジが爆発する可能性もあります。くれぐれも放置しないでください。

使用直後は非常に高温なのでヤケドに注意

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使っているときは注意している人も多いと思いますが、使用後のトーチバーナーにも気を付けてください。使った直後のトーチバーナーは非常に高温なので、誤って触ってしまったらヤケドしてしまいます。使い終わったらまわりの人にひと声掛けて、トーチバーナーが熱いこと、そして置いた場所を確認してもらいましょう。

ガス器具を安心・安全に使って楽しい「外ごはん」を

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アウトドアではとっても便利なガス器具ですけど、間違った使い方をすると危険なものでもあるんですね。

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そうですね。だからガス器具は正しく使って、おいしい外ごはんを楽しく食べたいですね!

この記事の撮影の様子は、YouTubeチャンネル「かほの登山日記」にて動画で見ることができます。気になる人はチェックしてみてください!

撮影協力:富士満願ビレッジファミリーキャンプ場 https://fuji-manganvillage.com/
監修:日本ガス石油機器工業会 https://www.jgka.or.jp/

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