子宮頸がんワクチンの「積極的勧奨」再開へ 厚労省専門部会が容認 再開時期は示せず

 厚生労働省のワクチン接種に関係する専門部会が1日開かれ、2013年以来積極的勧奨が手控えられている子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)に関する今後の取り扱いについて議論が行われ、勧奨再開が事実上容認された。正式な再開決定の手続きや時期について部会で合意が得られなかったためこの日の方針決定はなされなかったが、部会では再開自体について異論はまったく出ず、近日中に方針変更されることは確実となった。

専門部会「積極的勧奨を妨げる要素はない」 

 この日の部会では、ワクチンの安全性について検証した国内外の研究結果が提示された。計9つの論文や報告がなされたが、いずれもワクチンによってなんらかの症状(副作用)が有意に増加している、あるいは関連性が推定されるという結果は出ていなかった。他方、スウェーデンで行われた調査では、17歳になる前に接種した場合子宮頸がん発症のリスクが88%低下、オランダでは16歳以前に摂取した場合、同様にリスクが86%低下したという分析結果も示された。

 この様々な研究、調査結果の提示を受けた議論では、勧奨再開についての異論は出ず、むしろ再開を前提に、これまで自治体や学校などで勧奨されなかったこと接種機会がなかった人への費用補助も含めた対応や、接種後に症状が出た場合の体制整備について意見が複数あがった。そのためこの日の部会では正式な方針決定までには至らず、厚労省側が再開にあたっての課題をまとめたうえで、後日正式に決定することとなった。

 いわゆる「子宮頸がんワクチン」は正式には「HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン」と呼ばれ、主に性交渉で感染するHPVの体内増殖を防止するワクチン。ほとんどの子宮頸がんの発症に関わっていることが分かっているほか、中咽頭がん、肛門がんなど、男性がかかる病気の原因ともなることも分かっており、海外では男性の接種に対して公的補助を行う国もある。

 日本では2013年に積極的勧奨を開始したところ、接種後に様々な症状に悩まされる事例が複数報告されたため、数ヵ月で勧奨を停止。15%だった接種率は1%以下に低下、その状態が昨年中頃まで8年間も続いていた。この間、接種を受けなかった20代から40代を中心に子宮頸がんの患者数が増え、毎年約1万1000人の女性が子宮頸がんを発症、そのうち約2800人が死亡という統計調査も出ている。このような状況に対して、欧米と比べ死者数が突出しているとして、専門家の間では一刻も早い勧奨再開が求められていた。

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