染みる 待望の一杯 「緊急事態」解除、宇都宮の夜

約2カ月ぶりに店内で酒類の提供を始めたビアパブ=1日午後5時15分、宇都宮市池上町

 緊急事態宣言の解除に伴い、約2カ月ぶりに飲食店などで酒類の提供が再開された1日、明かりが戻り始めた宇都宮市中心部の夜の街を歩いた。なじみの店で「待ちわびた」一杯を堪能し、日常のありがたみをかみしめる酔客。店は「通常営業がずっと続きますように」と願い、感染対策を徹底する。一方で台風16号の影響で大荒れの天候となり、思うように客足が伸びない店も多かった。

 「お店のビールはやっぱり最高!」。種類豊富なクラフトビールが飲み比べできる池上町のビアパブ「BLUE MAGIC(ブルーマジック)」。午後3時の開店から常連客が足を運び、舌鼓を打った。

 宇都宮市山本1丁目、会社員上野俊一(うえのしゅんいち)さん(29)も心待ちにしていた一人。アクリルパネルで仕切られたカウンターで「フルーティーで香りがいい」と3杯目を味わっていた。

 店は緊急事態宣言下、持ち帰り用の量り売りなどで難局をしのいできた。醸造も手掛ける中尾真仁(なかおまさひと)店長(33)は「自分たちが作ったビールを、お客さまが飲んでくれる姿まで見るのがやりがい」と語り、カウンター越しの交流を楽しんだ。

 一方で人流の増加は感染拡大の引き金にもなりかねない。もつ焼きが売りの「もつたじ宇都宮釜川沿い店」の飯田知晃(いいだともあき)店長(33)は「宣言の解除はありがたいが、怖い部分もある」と率直だ。「店側が感染対策を徹底するしかない」

 午後6時過ぎ。強い雨に加え、時折、看板が飛ばされるほどの突風が吹く。

 「お客さん、きっと来ないだろうな」。市中央2丁目の居酒屋「立寄どころ おかえり」の店主小森(こもり)まさよさん(58)はがらんとした店内を見渡した。約2カ月ぶりの営業再開も、あいにくの悪天候。「店を開けることが大切」と午後5時半に看板を店先に出した。

 酒類提供の解禁を待ちわびた日々を「長かった」と振り返る。「二度と緊急事態宣言が出ないことを願いつつ、のんびり頑張ります」と話した。

 宣言の全面解除に期待と不安を抱きながら、宇都宮の夜の街は更けていった。

約2カ月ぶりに店内で酒類の提供を始めたビアパブ=1日午後5時15分、宇都宮市池上町

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