線路の安全を守る車両 陰の功労者「保線車両」「工臨」とは!?

多くの人が毎日のように利用している鉄道ですが、その安全面はどのように保たれているでしょうか。利用者でも多くの人は知らないと思います。そこで、線路の安全を守る車両について紹介したいと思います。

保線とは

「保線」とは線路を安全に列車が走行できる状態に保つ作業全般のことを指します。主に線路のレールや砂利の部分であるバラストなどを点検や交換する作業のため、列車が頻繁に往来するラッシュ時をはじめ、日中にその作業を目撃することは難しいと言えるでしょう。保線作業が行われるのは終電後の深夜から早朝に施工されることが多く、列車が全く走っていない時間をメインに作業が行われています。そのため短時間で作業を終了させる必要があり、昔は人力で行われていた測定や点検の一部も今では機械によって行われています。

保線や検測に使用される車両

機械扱いで目的地へ運搬されるマルタイ(筆者撮影)

代表的なものが「マルチプルタイタンパー」です。正式名称が長いため「MTT」や「マルタイ」などと略称で呼ばれることが多い保線用機械です。普通の列車と同じようにレールの上を走行してレールの歪みやバラスト軌道を突き固めて修正を行い、傷んだレールを補正することで安全性の向上や乗り心地の良さを維持する役目を果たしています。営業列車が走行出来ないように線路閉鎖をした深夜の時間帯であれば、目的地までレール上を走行して移動し、現場ですぐに作業に取り掛かることができるので作業員や作業時間を大幅に縮小することに貢献しています。

電気機関車に牽引されるマヤ50系建築限界測定検測車両(筆者撮影)

また、検測目的であればマルタイのほかにも「East i(イーストアイ)」と呼ばれる車両があります。こちらはマルタイと違い車籍があるので、営業時間帯に走行することができます。線路閉鎖をする必要がないので、日中も走行しており比較的目撃しやすい車両です。車両は白地に赤いラインが入っており、レーザーを照射することで車両が無事に走行できるか建築限界を測定して安全の確保に努めています。測定車両のマヤ50系は機関車に牽引されることで何処へでも出張して検測を行うことができる優れものです。

工事臨時列車(通称工臨)

線路を守る保線ですが、壊れた場所の発見にあたる検測をするだけではなく、壊れた個所は当然ながら修理する必要があります。傷んだレールや消耗したバラストは工事臨時列車と呼ばれる列車により修理箇所の目的地まで運転されます。この工事臨時列車によって運搬してきた資材を修理箇所で卸す作業が行われ、その場で交換作業や修繕作業が行われます。修繕作業中に列車が往来してしまうと作業ができないので、これらの作業も夜間に行われることが多く、鉄道ユーザーであっても日頃から目にする機会は滅多にないものだと思います。夜間は列車の往来がなくなる時間があり、この時間を活用して列車がその付近に進入することができないようにする線路閉鎖がしやすくなるからです。もし、線路閉鎖を行わずに保線作業を行った場合、工事個所の修繕作業中に列車が工事中の場所を通過し作業員が負傷したり壊れた個所を走行してしまったり、とても危険だということが想像できると思います。線路閉鎖後の作業は交換資材により内容が変わりますが、貨車によって運搬してきたレールを卸したり、運搬してきたバラストという砂利を散布したりします。

実際の現場では

線路閉鎖の様子(筆者撮影)

私が今年の七月に遭遇した工事現場では、新しいバラストを散布する作業を見ることができました。その現場では、EF64形電気機関車の牽引により鉱石運搬用貨車であるホキ800形貨車を使用した作業が行われていました。列車が低速で作業現場を通過しながら貨車に乗った作業員が貨車に付髄しているハンドルを回すことで貨車下部の仕切りを開閉し、バラストを散布する作業が行われていました。

バラストの散布作業の様子(筆者撮影)

画像からも分かるように線路閉鎖中の踏切は動作しておらず、代わりに多くの作業員が踏切の一時的な閉鎖作業を行っていました。現場は独特な雰囲気が漂っていました。

おわりに

今回の記事をまとめると、鉄道の安全を守るためには多くの車両や車両のような機械が存在していることがご理解いただけたと思います。車両か機械かは車籍の有無により決まりますが、どちらも夜間に安全を守る為に働いています。そのため、普段は目にすることがないかも知れませんが、知れば知るほど奥が深い話題であることは間違いないと思います。日の目を浴びることのない縁の下の力持ちのような存在ですが、陰ながら日々安全確保に努めています。何気なく利用している鉄道ですが、陰から支えているこれらの存在があってこそ成り立っているのだと少しでも多くの人に知ってもらえたら嬉しいです。

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