ジャイアンツJr.に女子で初選出 最速114キロのスーパー小学生が描く未来図

114キロを投げる女子小学生の濱嶋葵さん【写真:川村虎大】

濱嶋葵さんは「荻窪ビクトリー」に所属、父と二人三脚で成長

ダイナミックなフォームから投じられたボールが、キャッチャーミットへ一直線に吸い込まれていく。学童野球チーム「荻窪ビクトリー」でエースで4番を務める小学6年生の濱嶋葵さんは、12月に行われる「NPB12球団ジュニアトーナメント2021」に出場するジャイアンツジュニアに、史上初めて女子で選出された逸材だ。ノビのある直球を始めて見た人は皆、目を丸くする。【川村虎大】

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「力と力の勝負。男の子からたくさん三振を取るのが楽しいです」。葵さんは屈託のない笑顔で語る。「転んで怪我をすると、練習ができなくなる」と、友人との遊びも控えるほどの野球好き。現在は土日は所属チームの練習に参加し、平日は近所の公園で父・翼さんと練習に取り組む。

野球に本格的に取り組んだのは小学1年生の頃。父が休日に行っていた草野球に連れていってもらったことがきっかけだった。真剣に野球をする父の姿を見て、自分もやりたいと訴えた。地元の荻窪ビクトリーに所属すると、小学2年生から投手を任されるようになった。

女子プロ野球チーム「埼玉アストライア」に影響を受け、プロになることが目標となった。父に話すと、「本気でプロを目指すならみんなの2倍、3倍は練習しなければいけないよ」と言われ、そこから二人三脚のトレーニングが始まった。

濱嶋葵さんの父・翼さん【写真:川村虎大】

目指すは神戸弘陵から女子プロ野球へ、憧れの存在は島野愛友利投手

「厳しいです。コントロールが悪いとたくさん怒られます。でも、それも全部、自分のことを考えてくれているので」。平日だけでなく、土日もチーム練習が始まる前にグラウンドに行き、チーム練習が終わった後も2人でトレーニングに励む。

努力は徐々に身を結び、頭角を現わしていく。球速は3年生で82キロ、4年生で97キロを記録し、5年生では105キロに到達した。6年生になった今年、最速114キロを計測。史上初めて女子でジャイアンツジュニアに選出される選手へと成長を遂げた。

女子プロ野球選手になる前に叶えたい目標が、女子野球の強豪・神戸弘陵高(兵庫)への進学だ。「愛友利ちゃんの後輩になりたいんです」と、8月23日に史上初めて甲子園球場で行われた「第25回全国高等学校女子硬式野球選手権大会」決勝戦で最終回に登板し、胴上げ投手になった島野愛友利投手(3年)の後を追う。

小学4年生の頃、父からインスタグラムで島野の動画を見せてもらったのが憧れを抱くきっかけになった。「最近では甲子園でも投げていて、改めてすごいなって。変化球のキレやコントロールがいい」と語る。

114キロを投げる女子小学生の濱嶋葵さん【写真:川村虎大】

「甲子園で日本一、高卒でプロ、130キロを投げて注目されたい」

インスタグラムやYouTubeで島野の投球映像を見てフォームを参考にすることも。「腕の振りや体の使い方を真似しています。下半身から上半身という順番で投げるような意識です」。実際に会ったことはないといい「もし、会えたら甲子園のマウンドはどうだったかとか聞いてみたい」と目を輝かせる。

「神戸弘陵に行って甲子園で日本一になって、その後は高卒でプロに行きたい。130キロを投げて注目されたいです。『1番私が凄いんだ!』って言ってもらいたいじゃないですか」

埼玉西武ライオンズ・レディースや阪神タイガースWomenなど、NPBチームと連携する女子硬式野球クラブチームが発足したり、高校野球の決勝戦が甲子園球場で開催されたり、女子野球への注目度は高まってきている。

夢の女子プロ野球は、今は活動を停止している。「高校を卒業する時に、またできていれば」と復活を信じ練習に取り組む。スーパー女子小学生が巨人のユニホームを着て臨むジュニアトーナメントでどんな投球を見せるのか、そして今後どのような道を歩むのか――。期待せずにはいられない。(記事提供:First-Pitch編集部)

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