「限られたマンパワー前提に」 京都産業大教授・田村正博氏 長崎県・佐世保署員自殺から1年

 福岡県警本部長、秋田県警本部長などを歴任した京都産業大の田村正博教授(警察行政法)に警察の当直態勢や働き方改革に関して話を聞いた。
 -当直態勢をどう考えるか。
 当直は、現状にかなり問題がある。多くの人が誤解していると思うが、当直は待機の時間で勤務ではない。当直時間中に事案があって行動したら、それは勤務扱いになり、翌日は早く帰らせるべきだ。
 当直をなくすことは不可能だが、当直に入る日数の間隔をあけたり、当直人数を減らしたりという議論は可能。また、警察署の統廃合にもつながる話でもある。警察署あたりの人数が増え、1人当たりの回数を減らせるからだ。限られたマンパワーを前提に組織の在り方を考えるべき。
 -警察の超過勤務をどう減らすか。
 本来、労働基準法で定められた時間以外に人を働かせてはいけない。超過勤務のない範囲内で市民にサービスを提供すべき。もちろん、連続放火事件や誘拐事件など命に関わる事件が起き、それを原因とする超過勤務の発生はあり得る。そのような事案を昼夜問わず受け付けるのは、これまでと変えてはいけない。だが、各種窓口の受付時間を短くするなど業務を減らすべきだ。その際、ある程度のパフォーマンスが落ちることを覚悟すべきで、市民にも理解してもらわないといけない。
 -警察の働き方改革をどう考えるか。
 警察には労働組合がない。すなわち職員が意見を上げられる仕組みがないため、職員の声に気付きにくい。消防も警察と同じく労働組合がないが、福利厚生や労働条件について話し合う協議会がある。警察も職員の意見が出やすい環境を整えるべきだ。
 また、地方警察の幹部らは、労働基準法に基づいた勤務形態を理解していないのでは。理解してもらうためには、例えば、上級幹部向けの研修会に労働局職員を講師として呼ぶことが考えられる。


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