「使い勝手が良くない」 新上五島町の商品券 若い世代からは「不要論」も

新上五島町で流通している主な商品券

 長崎県新上五島町では、主に4種類の商品券が流通し、住民の間で「使い勝手が良くない」との声が根強い。人口約1万8千人の町でなぜ4種類もあるのか。一つにまとめられないのか。島民100人にアンケートをして「本音」を探った。
 同町は2004年8月、若松、上五島、新魚目、有川、奈良尾の旧5町が合併して誕生。各地区に商店街があり、「買い物は地元で」という意識はまだ根強いが、最近は島内の交流が盛んになっている。地区を越えて買い物に出掛ける人も少なくない。
 島内で主に使われている商品券は以下の4種類。
 (1)「新上五島商品券」=新上五島スタンプ協議会(有川郷)が発行し、有川地区を中心に約43事業所が加盟。有効期限は6カ月。
 (2)「カミティ商品券」=ショッピングセンター、カミティ(浦桑郷)発行。加盟店は有川地区を中心に70事業所。期限なし。
 (3)「ドゥインググループ商品券」=ドゥイング(青方郷)発行。グループ店のエレナ、オサダ、ローソンで利用可能。期限なし。
 (4)「農協全国商品券」=全国農業協同組合連合会発行。Aコープ2店で使用可能。
 よりどりみどりではあるが、町民は使い分けに頭を悩ませる。同地区では冠婚葬祭などの返礼品として商品券を贈ることが多いが、その場合も相手の生活圏で役に立つかどうかも考えて選択しなければならない。町民は今の状況をどう思っているのか。旧5町の住民各20人、計100人を対象にアンケートを実施。すると、「予想通り」とも言える結果が出た。

 「町内共通商品券があったら便利だと思う」と回答した人が87人。94人が「あれば利用する」と答えた。「返礼などの贈答品に使いたい」「飲食店でも使えるようにしてほしい」「買い物ポイント付与の統一を望む」などの意見の一方、小規模店や商店街の負担にならないか心配する声も。若い世代からは電子マネーの方が便利として「不要論」も飛び出した。
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 商品券の発行側はどう考えているのか。
 町商工会は、加盟店舗をどうやって増やすかや、今ある発行団体を統一できるか-など共通商品券の発行に向けてはいくつかの「壁」があると説明する。
 ドゥイングは約10年前、現金チャージやポイント付与機能を備えた町内共通買い物カードの発行を町商工会に提案したが、対応レジなど設備投資がネックとなり断念した。道津吉章社長は「共通商品券もいいが、高齢者にも分かりやすい電子決済を見据えたい。買い物籠をレジに置くだけで精算できるようになったら便利だと思う」と語る。
 カミティの中村繁男社長は「以前『買い物バス』の運行を呼び掛けたことがあったが、なかなかまとまらず、単独で始めた。これよりハードルは高いが、商品券を統一するのはいいと思う」と前向きに話す。
 行政の見方はどうか。石田信明町長は「(地区、企業に限定されない)共通の商品券なら、町民への各種お祝い金支給などの支出にも使える。町内で消費されるし、町内経済活性化に役立つ。いずれ電子マネーの地域通貨が必要になる。それまでの通過点として統一した方がいいし、町商工会が取り組むなら協力、支援したい」と踏み込む。
 どの発行団体も「地元経済活性化」という同じ目標を掲げている。町民の声は届くだろうか。


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