長崎県警 働き方改革「歩み止めない」 佐世保署員自殺から1年

捜査車両に乗り込む署員。県警は「働き方改革」を推進する方策として、一部の署で「宿日直制度」の見直しを試行している=長崎署

 佐世保署の40代男性警部補が昨年10月3日に自殺してから1年。遺族が今年2月に提出した公務災害認定請求書では、上司からの度重なるしっ責に加え、超過勤務が過労死ラインを大幅に上回る「200時間前後」の月もあったとされる。県警はハラスメント防止と「働き方改革」に重点的に取り組んでいる。昼夜分かたず県民の安全を守る使命を果たしつつ、業務を効率化し職場環境の改善をいかに図るのか。働き方改革の現状を探った。
 9月下旬にあった定例県議会総務委員会。県警警務課長が「働き方改革」の成果の一端として数字を示した。2018年度延べ1534人、19年度延べ1203人、20年度延べ1075人。過労死ラインとされる「月80時間」を超える時間外勤務をした県警職員の人数だった。警務課長は「徐々に減少している。今後も推移を注視しながら取り組みを進めたい」と語った。
 19年施行の働き方改革関連法で時間外勤務の上限が原則「月45時間、年360時間」と規制された。同法を受け、県警は電子決裁の試行といった業務の合理化や、職員の意識改革を図る取り組みを進めている。昨年10月からは職場の端末から投稿できる「意見箱」の運用を開始。今年8月末までにハラスメント事案に関する情報が74件、業務改善に関する意見・要望が396件寄せられた。
 佐世保署員が自殺した問題では、上司の意向で勤務時間の過少申告が常態化していたとされる。県警は職員のパソコンの起動履歴で出退勤を客観的に管理するシステム構築の検討にも着手している。
 県警は「働き方改革」を総合的に推進する方策で、4月から一部の署で「宿日直制度」の見直しを試行している。現行は午前9時から翌朝10時半までが拘束時間で、午後10時から翌朝7時までが宿直勤務時間となる=表参照=。おおむね週1回のペースである。労働基準法で定める断続的労働とみなし宿直勤務時間は手当を支給し、労働時間から除外する運用をしている。

県警の警察署での宿日直制度

 警察署の勤務者は県の条例で「1週間当たり38時間45分」「1回の勤務時間は15時間30分を超えないものとする」などと規定。見直しの試行では、午前9時から翌朝9時までとし、拘束時間を1時間半削減。「勤務時間15時間30分」「休憩8時間30分」としている。県警警務課は「問題点を抽出、検証した上で、見直し時期について検討していく」とする。
 総労働時間の縮減やワークライフバランスの実現を目指している。だが組織内からは「マンパワー不足や組織力の低下」を懸念する声も聞かれる。複数の幹部職員は「業務の総量を減らし、組織全体の底上げを図るしかない。危機感は持っている」と口をそろえる。
 今年春の組織改編では、業務の平準化などを図るため、県内主要署に「捜査支援課」を新設。重大で悪質な交通事故・事件に的確に対処するため主要署と交通機動隊に「交通特命捜査係」を置き、一般の交通課員の負担軽減を図っている。
 「働き方改革」とハラスメント防止の旗振り役として警務課に新たに配置された「政策調整官」の古川豊久警視(52)。所属の上司が休暇取得や業務を適正に管理するのが基本とした上で幹部職員の意識改革の重要性をこう強調する。「われわれ世代が意識を変えていかないといけない。組織は変わってきていると感じる。歩みを止めない」


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