性による違い

 亡くなって40年になる作家の向田邦子さんに「女地図」というエッセーがある。料理店の場所を確かめようと店に電話をしたら、おかみが言う。「右曲がるでしょ。そいでねえ」。どこを右なのか、向田さんは分からない▲「角(かど)はなんですか。区役所ですか」「でもないわねえ。教えにくいところなのよ」…。妙なやりとりが続くエピソードのあと、向田さんはこう結論づける。「女は地図が苦手である」▲名文家による軽妙なエッセーにコメントは無粋だが、「道をまるで覚えられない」と家族にいつも笑われる男、筆者としては「地図が苦手」に女性も男性もない気がする。性による違いを測るのは、どうも難しい▲性別による役割などをどう捉えるか、内閣府は今夏、初めて全国調査をした。36項目について尋ね、男女とも「女性には女性らしい感性があるものだ」という見方が最も多かったという▲性による感性の違いに肯定的な人は多いらしい。その一方で、男女とも2番目に多いのは「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」。なかなか変わらない見方もある▲多いのか少ないのか「男性は人前で泣くべきではない」と思う男性は3割いた。「男のくせに泣くな」「女性らしい振る舞いを」…。言葉は世につれ変わるものだが、こんな言い回しの行く末は、さて。(徹)

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