社会の変化待てない 川崎・障害児の母、デイサービス開所 最新技術導入、発信する力を引き出す

視線入力する壮眞君を見守る吉原さん=川崎市高津区

 肢体不自由と知的障害が重複した重度心身障害児の母親が今年4月、同じ障害のある子どもたちのための放課後等デイサービス「そらとわすくーる」を川崎市高津区に開所した。自分から発信できることを目指し、「視線入力」など最新の技術を導入する運動・学習特化型のユニークな施設だ。

 障害児の就学を巡っては、たんの吸引などが必要な「医療的ケア児」と家族を支援するための法律が今月18日に施行された。しかし母親の吉原純代さん(43)は言う。「社会が変わるまで待てない」

◆達成感感じる

 同施設には、中原区にある県立中原養護学校と市立中央支援学校小学部大戸分教室の小学2年~高校1年の10人が登録し、1日5人まで通うことができる。

 通常、重度心身障害児のデイサービスではケアすることが中心だが、同施設は一歩進んで子どもの力を引き出すことに重点を置く。パソコンに付けたカメラで視線を捉えてカーソルを動かす「視線入力」で遊べるゲームや、引き金ではなくスイッチを押すことで動くピストルなどのおもちゃを導入する。吉原さんは「自分で発信し、やったという達成感を感じさせたい」と狙いを語る。

 吉原さんの長男の壮眞君(7)は現在、人工呼吸器をつける医療的ケア児だ。だが4歳までは、障害があるものの保育園に通うこともでき、吉原さんは会社員として働いていた。

 4歳の秋、肺炎になったことをきっかけに気管切開し医療ケア児となった。以来、それまでとは社会の受け入れ態勢が大きく変化したという。

◆1日2回まで

 保育園では吸引は1日2回までという決まりだった。つまり、くしゃみやせき込みは1日2回まで。通い続けることは難しくなり、休むことになった。

 卒園後は地域の小学校への進学を希望したが、医療的ケア児ということでかなわなかった。就学した特別支援学校は保護者の付き添いが必要で、子どものできることを伸ばす教育にも思えなかった。

 「このまま待っていたら大人になってしまう」。危機感を抱いた吉原さんは、壮眞君の能力を伸ばす場として放課後等デイサービスの開設を決意した。自ら「児童指導員」の資格を取得できたのも幸いした。

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