介護保険の払い込み満了、このまま契約を続けるべき?解約か一生涯の保障か

銀行にお金を預けても大して増えない、、と貯金代わりに貯蓄型保険を利用している人も多いのではないでしょうか。今回は保険料の払い込みが終わった介護保険をどうしたら良いかお悩みの方からのご相談を例にお伝えします。


貯金代わりの保険で年利0.5%の運用

私は日頃からファイナンシャルプランナーとして活動していますが、50代からの相談の機会が多くあります。50代はちょうど子どもが独立する時期でもあり、老後に向けて最後の貯め期とも言われています。500万円などある程度まとまったお金があり、運用先にお悩みの人も多いことを肌で感じています。

私たちを取り巻く環境を考えると、現在は定期預金の利率が0.01%といった超低金利時代です。銀行に500万円預けていても年間500円の利息、その上税金が引かれるのですから、どうにかして増やす方法はないかと思うのは当然のことです。

貯金の代わりに保険に加入している人が多いことも感じています。今回相談きたAさんも50代、今から5年前に使う予定がないお金を介護保険に入れて運用をしていました。入れていた、というのは全期間分の保険料を契約時にまとめて支払っていたので、本人にとっては、より利率のいい安全な金融商品に預けているイメージでした。

保険を契約したきっかけを聞いたところ、銀行の窓口で「当面使う予定がない資金を預けて一番増える保険はないか」と相談し、案内されたのが介護年金保険だったのです。払込期間の5年を過ぎたので、解約すると約12万円の利益が出るのでどうするのがいいのか相談したい、と私のところに来られた次第です。

具体的に払込金額約463万円に対して現在解約すると約475万円、年利に換算すると0.5%程度の利率で預金していたようなものですから、銀行預金に比べて実質50倍の利率です。

介護年金50万円を一生涯受け取れる保障はメリットなのか?

加入している介護年金保険の保障内容を確認したところ、金融資産としてしか考えていなかったので保障自体にはあまり興味がなかったとのこと。この機会に一緒に詳しく見てみることにしました。

保障内容は大きく分けると2つ、介護保障と万が一の死亡保障がついています。介護保障については、公的介護保険制度で要介護2以上、保険会社の定める要生活介護状態が180日間継続したと医師により診断確定されたときに、給付が一生涯受けられます。

Aさんの契約では、保障額は年額50万円、なお、10年間の支払保証期間が付いているので、仮に給付から10年以内に死亡した場合でも10年分の年金額500万円は残された家族が受け取れます。また、介護年金を受け取らずに死亡した場合には、死亡給付金が支払われます。Aさんは、既に保険料の払い込みを済ませているため、死亡給付金額は基本年金額50万円に保証期間10年を掛けた500万円になります。

ここで気になったのが介護年金の給付要件です。公的介護保険の要介護度には有効期間があり定期的に見直し(更新)が行われます。仮に要介護2であっても要介護1や要支援に介護度が軽くなる可能性があるわけです。保険会社に確認をしたところ、一度要介護2になれば一生涯介護年金を受け取れることがわかりました。

では、要介護2以上の人は一体どのくらいの割合でいるのでしょうか? 厚生労働省の介護保険事業状況報告を見ると、65歳以上の介護保険第1号被保険者数は約3,555万人(令和2年3月末)です。それ対して要介護2以上の認定者数は約346万人 、割合としては約9.7%になることがわかります。また、要介護認定者数の割合は女性が男性の2倍以上、これは女性の平均寿命の方が長いので当然かもしれません。

なお、介護の年数・費用については生命保険文化センターが行った調査が参考になります。介護を行った年数の平均は約4年7ヶ月、費用は一時的な費用と月々の費用を合算してトータルで494万1,000円ほどです 。あくまでも平均値ではありますが、介護年金の保証期間10年で介護費用500万円をまかなえるイメージです。

保険を減額して一部を現金化することへ

Aさんと保障内容を見てきて感じたことは、要介護2になれば一生涯介護年金を受け取れるものの、要介護2になるかどうかは予想がつかないということでした。ただし、お守り代わりと考えたら、今後保険料を払う必要もないのでこのまま残しておいてもいいのではないかとも思うし、とお悩みの様子でもあり、減額についてアドバイスをさせてもらいました。

どのくらいの保障を残すかは、他の保険の加入状況や保有資産額にもよりますが、今回は万が一の時に200万円あれば葬儀代として子供たちに使ってもらえるのではないかと思われたようです。保険会社に試算してもらったところ、減額で戻ってくる解約返戻金は約286万円、現金であれば医療費でも介護費でも用途は自由です。また、預貯金が充分にあれば、老後に向けて少しでも増やすためにつみたてNISAなど長期間の運用に回すことも検討するといいのではとアドバイスを付け加えました。

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