初心者のための「つみたてNISA」、投資信託銘柄はどう選ぶ?

日本証券業協会「NISA口座開設・利用状況調査結果(2021年6月30日)」によると、つみたてNISA口座における投資未経験者の割合は85.7%。年々増加しています。
これからつみたてNISAで投資デビューしようという方が一番悩むのは、つみたてNISAの商品選びでしょう。

“つみたてNISA入門”知っておきたいメリットとデメリット でも解説している通り、つみたてNISAは頻繁に商品を変えるのには向いていない制度でもあります。
そこで今回は、お金をより効率よく、上手に増やしてくれる投資信託選びのポイントを伝授します。ぜひつみたてNISAの投資信託選びに役立ててください。


つみたてNISAの投資信託選びのポイント

私たちが購入できる投資信託は6000本以上あります。その中で、つみたてNISAで購入できる商品数は約200本だけ。これは、金融庁がつみたてNISAの投資対象商品を「長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託」に絞っているからです。ですから、極端な言い方をすれば、どの商品を選んだとしても「大外れ」することは考えにくいでしょう。

しかし、大外れしにくいからといって、適当に選ぶのではもちろんよくありません。お金をより効率よく増やしていくためには、いい商品を選ぶことが大切です。そのためのつみたてNISAの投資信託選びのポイントを5つ、順に紹介していきます。

ポイント1:買いたい投資信託を扱っている金融機関に口座を開設する

つみたてNISAで購入できる商品数は約200本と紹介しましたが、どの商品を扱っているかは、金融機関によって異なります。一般に、SBI証券・楽天証券・マネックス証券といったネット証券では、対象商品の大部分を扱っています。一方、銀行や店舗の証券会社では、商品数を数本から十数本程度に絞っています。

銀行や店舗証券では商品が絞られている分、商品選びに迷いにくいという利点もあるのですが、おすすめはやはりネット証券。欲しい商品が購入できるうえ、最低投資金額も100円からとしているところが多いからです。また、投資信託をクレジットカードで購入したり、投資信託の資産残高が増えたりすることで、ポイントがもらえる証券会社もあります。

ポイント2:初めての投資はインデックス型・バランス型が選びやすい

投資信託には、大きく分けて「インデックス型」と「アクティブ型」があります。

インデックス型は、株価などの指標(ベンチマーク)と同じ値動きを目指す投資信託。どの指標に連動するのかは、商品ごとに異なります。対するアクティブ型は、ベンチマークを上回ることや、ベンチマークを設けずにできるだけ利益をあげることを目指す投資信託です。

また、「国内・国外の株と債券」などという具合に、複数の資産に投資する投資信託のことを「バランス型」といいます。

生まれて初めての投資をつみたてNISAではじめるなら、比較的リスクやコストの低いインデックス型・バランス型の投資信託がおすすめ。はじめはコツコツ投資して、堅実に資産を増やすのがいいからです。もっとも、「だからアクティブ型がだめ」というわけではありません。アクティブ型の商品は、きちんと資産形成ができてからでもいいでしょう。

ポイント3:広い指数・指標を対象にしている商品を選ぶ

たとえば、最近「FIRE」(経済的自立と早期リタイア)ブームのなかで、米国株に注目が集まっています。つみたてNISAでは、米国株そのものに投資することはできませんが、米国株に投資する投資信託を買うことはできます。しかも、投資信託を利用すれば、複数の米国株に分散投資したのと同じような効果が得られます。

米国株に投資するインデックス型の投資信託が連動を目指す指標(ベンチマーク)には、次のようなものがあります。

・NYダウ(ダウ平均株価)
・S&P500
・CRSP USトータルマーケット

このうち、もっとも有名なのはNYダウでしょう。しかし、NYダウが組み入れている銘柄は米国を代表する30銘柄のみ。分散投資というには、ちょっと少ないように感じます。S&P500も有名な株価指標ですが、名前のとおり主要な500銘柄を組み入れた指標です。

一方、CRSP USトータルマーケットはNYダウ・S&P500に比べると知名度が低いかもしれませんが、米国で投資可能な大型株から小型株まで、約4,000銘柄を網羅した指標です。

株式市場全体の成長力を享受しつつ分散投資の効果を得たいならば、NYダウやS&P500に投資する投資信託よりも、CRSP USトータルマーケットのような、幅広く投資する指標と連動する投資信託を選んだほうがいい、と考えます。また、これ以外の指標で比べる場合も、なるべくたくさんの銘柄を組み入れている指標を選ぶようにするといいでしょう。

ポイント4:信託報酬が安いものに注目!

投資信託には、3つの手数料がかかります。

・買うとき:販売手数料
・持っている間:信託報酬
・売るとき:信託財産留保額

つみたてNISAの場合、販売手数料はすべての商品で無料になっています。また、信託財産留保額もかからない投資信託が多くなっています。それに対して信託報酬は持っている間ずっとかかります。

投資期間は20年に及びますから、少しの差でもやがて大きな差になっていきます。ですから、できるだけ安いものを選びましょう。

つみたてNISAの商品の中にも、同じ指標に連動することを目指す商品があります。この場合、どちらを買っても運用成果そのものはそれほど変わりません。しかし、信託報酬が安い商品と高い商品では、当然信託報酬が安い商品のほうがいい商品、といえます。0.01%などとごくわずかな差であればともかく、0.1%以上差があるようならば、安いものを選んだほうがいいでしょう。

ポイント5:運用成績・純資産総額が右肩上がりの商品を選ぶ

投資信託の運用成績を表す「株価」のような存在が「基準価額」。また、投資信託の資産の合計金額を表すのが「純資産総額」です。

インデックス型・バランス型の場合、純資産総額は大きいほどいいでしょう。なるべく3年、あるなら5年、10年といった長期間の運用成果(トータルリターン)を見て、右肩上がりになっているものを選びましょう。

なお、逆に基準価額や純資産総額が下がり続けているような商品は要注意。「繰上償還」といって、投資が途中で終わってしまう恐れがあります。

つみたてNISAで選びたい商品は?

以上のポイントを踏まえて、つみたてNISAで買うべきおすすめ投資信託を3本選んでみましたので、ぜひ参考にしてください。なお、数値は2021年9月21日時点のものです。

SBI・全世界株式インデックス・ファンド

純資産総額:348.79億円
基準価額:15,030円
信託報酬(税込):年0.1102%
トータルリターン:13.11%(3年・年率)

「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」という指標と連動することを目指す投資信託。米国・欧州・日本を含む45カ国以上の株式市場の大型株から小型株まで、合計約9000銘柄もの株価をもとにしています。米国株が50%超を占めているので、比較的米国の影響を受けやすい商品です。それでいて、信託報酬も0.1%台と安く抑えられています。

eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)

純資産総額:1137.77億円
基準価額:13,389円
信託報酬(税込):年0.154%
トータルリターン:8.19%(3年・年率)

国内・先進国・新興国の株式と債券、国内外の不動産(リート)に投資する「バランス型」の投資信託。8つの資産に12.5%ずつ、均等に投資します。毎年、値上がりする資産・値下がりする資産は異なり、プロでも当てるのは困難なものです。それであれば、ぜんぶまとめて投資してしまおう、という発想。1本で8つの資産にまとめて投資できる手軽さ、わかりやすさもあって投資家から人気があります。

<購入・換金手数料なし>ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)

純資産総額:152.00億円
基準価額:14,265 円
信託報酬(税込):年0.154%
トータルリターン:7.61%(3年・年率)、8.60%(5年・年率)

国内外の株式と債券、合計4つの資産に25%ずつ均等に投資する投資信託。株式と債券の比率が50%ずつ、国内と海外の比率も50%となります。実はこの運用方針、日本の年金を運用する世界最大の機関投資家「GPIF」(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本運用方針とほぼ同じ。GPIFは約20年間の投資で累積100兆円以上を稼いでいる組織です。そのGPIFのマネをして投資できるという点でもおもしろい1本です。


つみたてNISAで新規に投資できる期間は2042年まで。2042年の投資の利益を最大2061年まで非課税にできる制度です。今年スタートしても、まだまだ合計で40年近く付き合っていく制度です。ですから、投資信託選びのポイントを理解して、本当にお金を増やしてくれる1本を選びましょう。

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