2021年10月から車検費用が一律400円アップへ! OBD対象外の車両も一律負担はひどすぎる!

自動車の整備士界隈では言わずと知れた話だが、2021年10月1日より継続車検にかかる法定手数料が、従来に対して400円アップされる。これは先進安全支援システムが正常に作動するかどうか、確認するためのOBD(オン・ボード・ダイアグノーシス:車載式故障診断装置)を活用した車検が必要となるからで、致し方ないこととも受け取れるが、OBDが装着されていない車両でも一律負担となる。OBD検査の内容と料金負担の謎について解説したい。

車検のイメージ

10月から車検時の技術情報管理手数料が400円追加

法定手数料というのは車検更新にかかる事務手数料といえるもので、具体的には、軽自動車が1400円から1800円に、小型自動車が1700円から2100円に、普通自動車は1800円から2200円になった。軽自動車でいえば、28.5%アップである。

法定手数料なので、二輪と大型特殊を除く全車両の車検費用が黙って400円高になるというわけだ。とはいえ、この400円は単に手数料を値上げしたものではない。

具体的には、自動車技術総合機構の技術情報管理手数料が400円アップの根拠となっている。

先進運転支援システムが正常に作動するかどうかの確認のために必要

では、この「技術情報管理手数料」が生まれた根拠とは何だろうか。

その理由はAEBS(衝突被害軽減ブレーキ)やACC(追従クルーズコントロール)といった先進運転支援システムの普及にあるというのが、国土交通省の説明だ。

いずれの機能についても新車搭載率はうなぎ登りとなっており、とくにAEBSについては2021年11月から新型車においては装着義務化となっている。

先進運転支援システムを搭載したモデルは増えている

しかし、こうした先進運転支援システムが正常に作動するかどうか、従来型の車検システムでは確認していないし、チェックすることもできない。仮に、センサーの故障や、カメラ位置のズレなどでAEBSが正常でなかったとしても車検は通ってしまう仕組みだった。

そこで、2021年以降の新型乗用車、バス・トラックについて車載式故障診断装置(OBD)を使った検査が実施されることになった。具体的には、運転支援システムと排ガス関係について電子的な検査を行なうことになっている。

ところで、OBD自体は、すでにほとんどのクルマに備わっているので珍しいものではない。OBDに接続するメーターやレーダー探知機などがアフターパーツとして売られているので利用しているユーザーも少なくないだろう。

OBDを活用した検査は2024年からだがプレテストとして始まる

というわけで、2021年以降の新型車についてOBDを活用した検査が実施されるというわけだ。乗用車でいえば3年車検であるから、OBDを利用した車検がはじまるのは2024年ということになる。

OBDを利用した車検がはじまるのは2024年からだ

その準備として2021年10月からOBDを使った検査のプレテストが開始されるのと同時に、情報管理手数料400円がすべてのクルマの車検時に上乗せされるというわけだ。

検査の手法としては、自動車技術総合機構が開発して無料提供する「特定DTC照会アプリ」をスキャンツール、パソコン、スマートフォン、タブレットなどにインストール。自動車のECUに記録された故障コードを読み出し、同機構のサーバに接続して判定結果を受け取るというものだ。

こうしたアプリの開発やサーバの維持管理費として、400円という金額が設定されたというのが、国土交通省の説明だ。

対象外の車両においても一律負担となる理由とは?

とはいえ、OBD検査の対象外となるクルマまで一律400円を徴収されるのは理解できない。その点について国土交通省は、「クルマ社会全体の安全性向上のために全車に負担をいただく」としている。

たしかに先進運転支援システムの普及によって日本の交通事故発生件数が圧倒的に減っているのは事実だが、電子制御とは無関係のクルマのオーナーとしては、実質的な値上げとなるのは納得できるものではないだろう。

先進運転支援システムが搭載されたクルマが普及することは事故軽減につながる

逆にいえば、2021年以降の新型車においては車検時に、先進運転支援システムが正常に作動しているのかどうかの検査が必須になるということで、その点では安心感が増す制度改正といえる。

こうした検査は、将来的に自動運転が本格的に普及するためには必須といえるものだ。前向きな見方をすれば、自動運転社会の実現に向けて、日本の制度改革が進んでいるということである。

【筆者:山本 晋也】

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