2020年現在の世代別インターネット利用状況について(データアナリスト・渡邉秀成)

2013年参院選よりネット選挙運動が可能となり、現在では国政選挙、地方選挙を問わずインターネットを活用した選挙運動が行われています。

過去のネット選挙運動等のデータを参照しながら、各政党、候補者が第49回衆議院選挙のインターネット選挙運動の準備をなされている最中だと思います。

ネット利用者の動向等が気になるこの時期に総務省 情報通信白書 令和3年版が公開されました。

その白書を読んでいくと、「全年代では、平日の「インターネット利用」の平均利用時間*28が「テレビ(リアルタイム)視聴」の平均利用時間を初めて超過」(令和3年版 情報通信白書 第2部 335P)という記述があります。

これまでもインターネット利用時間が徐々に長くなる傾向がありましたが、平日ではありますがテレビ(リアルタイム)視聴時間よりインターネット利用時間のほうが長いという調査結果が出ました。

図1_世代別インターネット利用時間

全世代のネット利用時間がテレビを上回った今回の調査ですが、世代別で見ると、10代,20代は2016年からテレビよりネット利用時間のほうが長くことがわかります。

ネット利用時間が伸びる一方、テレビ視聴時間が減少傾向にあることもわかります。30代、40代も2020年でテレビ視聴時間よりネット利用時間が上回っています。50代、60代はテレビ視聴時間がネット利用時間よりも長い傾向が続いていますが、徐々にネット接続時間が伸びている傾向がわかります。

時間が経過するにつれて、全世代がテレビを視聴する時間よりインターネット接続時間が長くなるのもそれほど遠くない時期なのかもしれません。

2013年にインターネット選挙運動が解禁された頃と比較をすると、2020年のほうがインターネット利用時間が伸びているので、今後、選挙関係者がインターネットを活用したさまざまな活動を活発化させていくものと思われます。

では、インターネット利用時間が伸びる傾向の中で、どのようなSNSを活用しているのかについても観察してみます。

表 5-1-1 【令和2年度】主なソーシャルメディア系サービス/アプリ等の利用率(全年代・年代別)p66
https://www.soumu.go.jp/main_content/000765258.pdf
令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書 令和3年8月 総務省情報通信政策研究所

図2_利用されているSNSサービス

こちらを見ると、全世代を通じて利用されているサービスはLINE,YouTubeであることがわかります。次いでTwitter,Instagramあたりが多く利用されています。LINEの利用率は40代までで90%をこえていますので、日常的に利用されている連絡ツールになっていることがわかります。

また、性別ごとに利用しているSNSツールをグラフ化したものが下記になります。

図3_性別ごとに利用しているSNSサービス

女性、男性で各SNS利用状況を比較すると、YouTube、ニコニコ動画では女性利用者より男性利用者のほうが若干多いことがわかります。
一方、Instagram、TikTokでは男性利用者より女性利用のほうが多い傾向があります。男女差があまりないものとしてはFacebook、Twitterとなっています。

そして年代ごとにSNS利用状況をグラフ化したものが下記グラフです。

図4_年代別利用状況

年代別利用状況を見ると各年代でLINE、YouTubeの利用が最も多く、Instagramの利用状況に注目すると、30代までは利用状況が半分以上に達することがわかります。

インターネットの利用時間が長くなる傾向があるので、今後、インターネットの各種サービスを利用した政治活動、選挙運動がより盛んになることが推測されます。

ただ、インターネット選挙運動が解禁された当初に期待された効果として投票率向上があります。インターネット選挙運動が可能になってから投票率が上昇したのかについて見ておきます。
1890年から2017年までの投票率の推移のグラフと、投票率と非投票率(投票しなかった人の割合)について色分けグラフを作成しました。

図5_投票率推移

インターネット選挙運動が可能になった2013年以降の衆議院選挙投票率をみると、2014年より2017年の投票率が若干上昇していますが、大きく投票率を伸ばすところまではいっていないようです。

そして投票率と投票をしなかった人の割合を帯グラフで表現すると、投票をしなかった人の割合が徐々に増えていることが、折れ線グラフよりも実感することができます。

各年齢層のインターネット接続時間は長くなる傾向があり、インターネット選挙運動も可能になりましたが、それが投票率の大幅な向上というところにまではつながっていないようです。

今回は2020年現在の世代別インターネット利用状況について観察してみました。

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