SBK第11戦ポルトガル:ラズガットリオグルとレイが各1勝。レイはカタルーニャ以来の優勝を飾る

 スーパーバイク世界選手権(SBK)第11戦ポルトガルラウンドがアウトドローモ・インターナショナル・アルガルベで行われ、決勝レース1でトプラク・ラズガットリオグル(パタ・ヤマハwith BRIXXワールドSBK)、スーパーポール・レースでマイケル・ファン・デル・マーク(BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)、決勝レース2でジョナサン・レイ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)が優勝した。
 
 野左根航汰(GRTヤマハ・ワールドSBKチーム)は決勝レース2で13位でフィニッシュしている。
 
 前戦スペインラウンドに引き続き、第9戦カタルーニャで負傷したトム・サイクス(BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)の代役としてユージン・ラバティが、同じくカタルーニャで負傷したチャズ・デイビス(チーム・ゴーイレブン)の代役としてロリス・バズが今大会にエントリー。また、アッセンで喫した転倒による骨折の影響が残るルーカス・マヒアスに代わって、ティト・ラバットがカワサキ・プセッティ・レーシングから参戦する。
 
 初日には走行を行っていたアレックス・ロウズ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)は、カタルーニャでのクラッシュで負った右手と手首の状態により、土曜日からの走行を見合わせ、今大会を欠場することになった。
 

■レース1:ラズガットリオグルが優勝。レイは痛恨のクラッシュ

 スーパーポールの結果により、レース1のポールポジションにはラズガットリオグル、2番グリッドにはレイ、3番グリッドにはレオン・ハスラム(チームHRC)が並んだ。野左根は16番グリッドからのスタートとなった。
 
 迎えたレース1は、気温25度、路面温度44度のドライコンディション。ホールショットを奪ったのはラズガットリオグルだったがラインを外してはらみ、そのすきに2コーナーでレイが前に出る。しかし、ラズガットリオグルはすぐさまレイをかわしてトップを奪還すると、先頭で1周目を終えた。
 
 レイは2周目にラズガットリオグルにオーバーテイクを仕掛けて一時前に出るが、13コーナーでラズガットリオグルが軽く接触しながらレイのインにバイクをねじ込みトップを奪う。激しいトップ争いを展開する二人の後ろには3番手のスコット・レディング(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)が続く。4周目、そのレディングがトップ争いを繰り広げるラズガットリオグルとレイをかわし、トップに浮上した。
 
 レディングの後方ではレイとラズガットリオグルによる激しい2番手争いが繰り広げられる。チャンピオンシップでトップにつけるラズガットリオグル、ランキング2番手のレイ。お互いに一歩も引かない激しいポジション争いだった。しかし5周目、レイが15コーナーでまさかのクラッシュ。ハイスピードでの転倒によりバイクは大破し、レイは痛恨のリタイアとなった。
 
 レイがリタイアとなったことで、トップ争いはいったんの落ち着きを見せる。トップはレディング、2番手はラズガットリオグル。その約5秒後方では、5人のライダーによる3番手争いが展開されていた。残り9周、6番グリッドからスタートしたアルバロ・バウティスタ(チームHRC)が3番手に浮上。しかし、バズとファン・デル・マークがバウティスタの背に迫る。
 
 バズは残り6周でバウティスタをオーバーテイク。3番手に浮上した。3番手を争う集団にいたファン・デル・マークはアンドレア・ロカテッリ(パタ・ヤマハwith BRIXXワールドSBK)とともに残り6周の5コーナーで転倒。3番手争いはバズとバウティスタにしぼられた。
 
 一方、トップ争いは、僅差でレディングを追っていたラズガットリオグルが残り10周の1コーナーでレディングをかわしてトップに立った。ラズガットリオグルは一時、レディングとの差を広げたものの、レディングが再びその差を詰めていく。
 
 優勝争いを展開するラズガットリオグルとレディングは、何度もオーバーテイクを繰り返す。ラズガットリオグルをテール・トゥ・ノーズで追うレディング。しかし、ラズガットリオグルがトップで迎えた最終ラップでは、レディングがラズガットリオグルから遅れてしまう。
 
 ラズガットリオグルはそのままトップでチェッカーを受けて、優勝を飾った。2位はレディング。最後までラズガットリオグルと優勝争いを展開したが、あと一歩及ばなかった。そして3位はバズ。バウティスタとともに激しい表彰台争いを展開したが、バウティスタは15コーナーでクラッシュ。バズが代役参戦ながら表彰台を獲得した。
 
 4位はマイケル・ルーベン・リナルディ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)、5位はハスラム。野左根は14位でレースを終えた。
 

■レース2:レイが2大会ぶりの優勝

 日曜日に行われたスーパーポール・レースでは、天候は回復していたものの、ウエットコンディションで行われた。レースはレイがトップ走行中の1周目で転倒。ファン・デル・マークが優勝し、2位がレディング、3位がバズだった。チャンピオンシップリーダーのラズガットリオグルは6位、野左根は転倒リタイアだった。
 
 レース2は気温22度、路面温度38度にまで上昇し、路面状況はドライに回復した。スタートは技術的な問題によりディレイとなり、20周の予定だった周回数は19周に減算されて行われることになった。
 
 先頭で1コーナーに飛び込んだに見えたのはロカテッリだったが、ブレーキングではらみ、2番手スタートのレディングがトップを奪う。2番手にロカテッリ、3番手にラズガットリオグル。そしてスーパーポール・レースで転倒リタイアに終わったため10番手からスタートしたレイが好スタートを切って、4番手に浮上していた。
 
 レイは1周目でラズガットリオグルをとらえて3番手に浮上すると、さらに2周目のメインストレートでロカテッリをかわし、2番手にポジションを上げてトップのレディングを追う。レイは2周目でレディングをオーバーテイクし、トップに立った。

 しかし3周目のメインストレートから1コーナーでレディングがトップを奪還。さらにラズガットリオグルがそれに続き、トップがレディング、2番手がラズガットリオグル、3番手がレイというレース1の序盤と同じ3人がトップ集団を形成する。
 
 一度は3番手に後退したレイだったが、4周目にラズガットリオグル、レディングをパスして再びトップに立つ。7周目にはラズガットリオグルが1コーナーでレイをオーバーテイクするも、レイが再びラズガットリオグルをかわす。今大会で2回の転倒リタイアを喫しているレイとしては、残りのレース数を考えてもラズガットリオグルの後ろでフィニッシュするのは避けたいところなのだ。
 
 レイは8周目にファステストラップを叩き出し、トップを守る。わずかながらレイとラズガットリオグルとの差が広がり始めていたそのとき、残り9周で2番手を走行中だったラズガットリオグルが15コーナーで転倒。奇しくもレイがレース1で転倒を喫したのと同じコーナーでの転倒により、ラズガットリオグルはリタイアとなった。
 
 ラズガットリオグルの転倒により、レディングが2番手に浮上する。レイとの差は1秒以上。レイはほぼ独走状態での走行となった。
 
 一方、3番手争いはロカテッリ、バズ、バウティスタによって争われた。ロカテッリは3番手につけていたが、残り7周でバズとバウティスタに相次いでかわされ、5番手に後退し、この二人から遅れていった。代わって3番手に浮上したバズは、バウティスタと接戦の3番手争いを展開する。

 終盤にオーバーテイク合戦を繰り広げていたバズとバウティスタ。残り2周の5コーナーでバウティスタがバズのインに入るが、クロスラインでバズがバウティスタに先行しようとしたそのとき、二人が接触。アウト側にいたバウティスタは転倒し、ここでリタイアとなった。
 
 トップを独走していたレイは中盤以降、独走態勢を譲ることなくトップでフィニッシュ。第9戦カタルーニャのスーパーポール・レース以来となる優勝を飾った。ラズガットリオグルが転倒リタイアに終わったことで、チャンピオンシップのランキングトップであるラズガットリオグルとランキング2番手のレイとの差は24ポイントに。その差は4ポイント広がったが、今大会、2レースでリタイアを喫したレイとしてはダメージを最小限に抑えたと言えるだろう。
 
 2位はレディング。3番手でフィニッシュしたのはバズだったが、レース後に1ポジション降格のペナルティが科されて4位。よって、4番手フィニッシュだったロカテッリが繰り上がって3位となった。5位はギャレット・ガーロフ(GRTヤマハ・ワールドSBKチーム)。野左根は13位だった。
 
 スーパースポーツ世界選手権300(WSS300)は、このポルトガルラウンドで今季最終戦を迎えた。レース1では岡谷雄太(MTMカワサキ)が2番手でチェッカーを受けたが、最終ラップでトラックリミット違反を喫したために1ポジション降格となり、最終結果は3位。表彰台を獲得している。また、この決勝レース1では岡谷のチームメイト、アドリアン・ヒュータス(MTMカワサキ)が2位表彰台を獲得し、2021年シーズンのWSS300チャンピオンに輝いた。レース2では、岡谷が一時はトップを走行するも、最終的に6位でフィニッシュ。2021年シーズンをランキング6位で終えた。

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