長崎県内被爆者ら「核軍縮政策 前進を」 岸田内閣発足に期待の声

 被爆地広島を地元とする岸田文雄氏が首相に選出された4日、長崎県の被爆者らからは、核軍縮政策の前進や、国の指定地域外で原爆に遭った「被爆体験者」の被爆者認定に向け、期待や注文の声が上がった。
 長崎平和推進協会の調漸理事長(66)が期待を寄せるのは、核保有国と非保有国との「橋渡し役」だ。岸田氏が外相時代、双方で核軍縮策を話し合う「賢人会議」設置を主導したのを、調氏は評価。来年3月に開催見込みの核兵器禁止条約締約国会議には「日本はまずオブザーバー参加を」と求めた。
 長崎原爆被災者協議会の田中重光会長(80)も締約国会議への参加を求め、「(核軍縮を巡る)世界の動きを見て被爆国の役割を果たして」と注文を付けた。
 県・長崎市と争う被爆体験者訴訟の原告、岩永千代子さん(85)は「『国民の声を聞く』のなら私たちを切り捨てないで」。広島原爆の「黒い雨」訴訟は広島高裁が指定区域外での内部被ばくの可能性を指摘した。岩永さんはこれを念頭に「岸田氏は核問題に知見があり、長崎の実態も分かってくれるはず」と希望をつなぐ。
 田上富久長崎市長は「被爆体験者を一刻も早く救済し、核軍縮の実質的な進展に向け役割を果たすことを期待する」とコメントした。

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