「平成の怪物」平山相太さん 母校・国見高でストライカーの“極意”伝える

母校の国見高で教育実習中の平山さん。サッカー部にストライカーの極意を伝えている=雲仙市、県立百花台公園サッカー場

 190センチの長身を武器に、相手がヘディングしようとするボールをいとも簡単に胸トラップしてゴール-。
 2000年代初頭、高校サッカー界で「平成の怪物」の異名を取った平山相太さん(36)が、母校の国見高で3週間の教育実習に励んでいる。「自分自身が成長できるように。そして生徒に少しでも何かを与えられるように」。11年ぶりの全国選手権出場を目指す後輩たちに、ストライカーの極意を伝えている。
 実習初日の今月1日、午前8時半。頭をぶつけないように、少し首をすくめて教室の戸をくぐった男は、高校時代と変わらない静かな口調で語りだした。
 「仙台大学から来ました平山相太です。まだまだ未熟ですが、よろしくお願いします」
 「怪物」の経歴は圧巻だ。全国選手権で優勝2回、準優勝1回。2年連続得点王となり、3年時は1大会9点の最多ゴール記録を樹立した。現日本代表の大迫勇也(31)に更新されたが、3年間の通算ゴール数(17点)はいまだに破られていない。
 2017年のプロ引退後、Jクラブや高校サッカーの指導者になりたいと一念発起して30代で自身2度目の大学生に。4年生になって教育実習先を探していたところ、母校が受け入れてくれた。
 担当科目は保健体育。サッカー部顧問でOBの木藤健太教諭(40)が指導教官を務める。担当学級の3年1組は18人中15人がサッカー部。放課後は生徒と一緒にボールを蹴りながら、特にFWの選手たちに熱の入った個別レッスンを続けている。2年生の荒木政斗選手(17)は「パスの引き出し方やシュートまでの持っていき方を細かく教わった」と偉大な先輩との交流を喜んでいる。
 有意義な時間を過ごしているのは自身も同じ。実際に高校生と向き合ってみて「成長過程という感じがひしひしと伝わってくる。すごくやりがいを感じている」。Jクラブか、高校教師か。今後どちらに進むかはまだ決めかねているが、いずれにしても「サッカー選手としても、人としても成長させてくれる」ような指導者になりたいと強く思っている。
 国見サッカー部は平山さんの年代をピークに思うような成績を残せずにいたが、今年2月の九州新人大会で優勝。復活を期すタイミングで母校に戻ってきた“レジェンド”は、選手権予選を月末に控える教え子たちに「ピッチに立てば選手が主役。後悔がないように、1分1秒を真剣に戦ってほしい」とエールを送っている。


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