〈いくやまいまい……き〉

 〈いくやまいまいおやいかさかさかやおてはたかやきかわたはわいさおひはこひあよことこす…〉-決して“謎の呪文”ではない。歴代の首相の頭文字を初代の伊藤博文から順に並べた記憶法。最後の「す」は1945年、ポツダム宣言を受諾した「鈴木貫太郎」で、ここまでが戦前・戦時中の日本▲昨日就任した岸田文雄新首相がちょうど100代目と聞いて冒頭のフレーズを思い出した。首相を務めた政治家は岸田氏で64人目。数が合わないのは、首相の代替わりが国会で首班指名を受けるたびにカウントされるため▲最初の伊藤博文は1、5、7、10代目の首相を務めた。在任期間が史上最長に及んだ安倍晋三氏は90代目と96~98代目に名前が残る。詳しくは17面の解説記事を▲新しい内閣は20人の閣僚中、13人が新顔。本県の金子原二郎参院議員が農相として入閣した。活躍を祈念したい▲新首相は自民党総裁選の直後「丁寧で寛容な政治を行い、国民の一体感を取り戻したい」と語った。丁寧さと寛容を欠いた政治が一体感を失わせた-その現状認識には賛成▲冒頭の文字列はひと続きに丸暗記するのでなく、政治の節目や転換点に一呼吸を入れながら唱えるのがコツだ。考える。新しい「き」と直前の「あ・す」の間にはどれぐらいの隙間が入るだろう。(智)

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