「福山には何もない」と福山の人はよく言います。
本当にそうでしょうか?
地元の魅力をもっと知ってもらいたい!との思いから生まれたのが、「瀬戸内SamPo(さんぽ)」という小さなツアーです。
今まで知らなかったワクワクする場所や、伝統文化、とびきりの食材などを体験して、地元を見つめ直してみませんか?
瀬戸内SamPoとは?
よく知っていると思っている地元にも、意外な穴場があるもの。
瀬戸内SamPoが焦点を当てるのは、「ちょっとおもしろい」場所やもの、そして「普段はできない体験」です。
体験型のミニツアーで地元の魅力を再発見
「御領古墳群ハイキングツアー」に「食べるバラの摘み取りとスイーツ作り体験」、「うんちく若大将の寿司体験」など、瀬戸内SamPoのツアーを眺めていると、ワクワクしてきます。
長く住んでよく知っていると思っていた瀬戸内に、こんなにいろいろとおもしろそうな場所があったなんて!
その場所やその食べ物などの魅力を知リ尽くしたローカルガイドさんが案内してくれる、地元ならではの小さな旅が、瀬戸内SamPoです。
地元の魅力を再発見する小さな旅に、ぶらりと出かけてみたくなりますね。
瀬戸内SamPoのミニツアーとは、どんなもの?
瀬戸内SamPo代表の伊藤さんが、「このようなツアーはなかなかないんですよ」とイチオシしてくれたツアーが「うんちく若大将の寿司体験」です。
伊藤さんがお父さんの代から通っていた、回らないお寿司屋さん「男寿し」。
その若大将のお話があまりにもおもしろい!と、ツアーになりました。
はじめに若大将から、バランやガリ、幕の内弁当などについてのうんちくを聞きます。
え?そうなの?まあ、歌舞伎が?など、お寿司の世界が広がることでしょう。
次に、若大将のレクチャーを受けながら、参加者は自分で2貫のお寿司を握ります。
自分で握ったお寿司と、大将もしくは若大将が握ってくれた同じネタのお寿司を並べてじっくり観察、そして実食!
他のネタのお寿司6貫や茶碗蒸しなどがついたランチを、そのままいただきましょう。
実に学んで楽しい、食べて美味しいツアーです。
瀬戸内SamPoのツアーは、こんなふうに「これはおもしろい!」「これは意外!」から生まれているのですね。
短時間のツアーで「旅ナカ」需要にも対応
瀬戸内SamPoのツアーの所要時間は、どれも2時間前後。
現地集合、現地解散の小さな旅で、非日常の「ちょっとおもしろい体験」ができます。
地元のかたの参加はもちろん、たとえば広島から大阪への移動中に空いた時間を有効に使いたいという、「旅ナカ」需要にもぴったりです。
体験だけじゃない!コミュニティーづくりにも力を入れる
地元が好き、という要素には「おもしろい場所がある」の他に「そこに自分の居場所がある」ことも大切なのかもしれません。
瀬戸内SamPoでは、地元がもっと好きになる仕掛けを組んでいます。
参加者同士の交流を生む仕掛け
瀬戸内SamPoが大切にしているのは、単なる体験ツアーだけで終わらせないこと。
参加者同士の交流と、ほっとするコミュニティーづくりにも力を入れています。
そのための仕掛けのひとつが、参加者につけてもらうネームプレート。
普通なら、ここに「山口」なんて苗字を書くことが多いのですが、瀬戸内SamPoでは
「ではネームプレートに小学校のときのアダナか、下のお名前を書いてください」
と呼びかけます。
次に、簡単な自己紹介。
「最近ハマっていることはなんですか」
とスタッフに促されてお話が始まれば、その場にたまたま居合わせた参加者同士が、お互いのことを知りあって、小さなコミュニティーが生まれます。
あっと驚くスタンプ特典
瀬戸内SamPoでは、スタンプカードも導入しています。
企画に参加すると1枚ずつもらえるシールは、企画ごとに絵柄が異なっているので、集めることも楽しみですね。
スタンプやシールがたまると、割引があったり記念品がもらえたりするのが一般的ですが、瀬戸内SamPoは一味違います。
なんと、お客さんが受け取ったのは「スタッフになれる権利」!
ツアーにはスタッフが付き添ってサポートしますが、リピートしてくださるお客さんにスタッフとして参加してもらう作戦です。
もちろん、そのときの参加費は無料。
しかし、タダでツアーに参加できることよりも、スタッフとして一緒にツアーを盛り上げる経験のほうが、より強く心に残るに違いありません。
ここにも、お客さんに楽しんでもらいたい、コミュニティーを作っていきたいという、瀬戸内SamPoの思いがたっぷりと込められているのです。
旅のあとに届く「ちーといいもの」
瀬戸内SamPoのツアー終了後、お客さんの自宅には、感謝の手紙とともに数百円ほどのちょっとしたプレゼントが届きます。
それが「ちーと(ちょっと)いいもの」です。
手紙にはQRコードがついていて、これを読み取ると「ちーといいもの」の作り手からのメッセージ動画が見られます。
まだあまり知られてはいない瀬戸内のいいものを、作り手の思いとともに届けるための仕掛けです。
スタッフが惚れ込んだ「ちーといいもの」が、お客さんとお店との新たな縁をつなぎます。
地元の魅力を再発見できる小さなツアー、瀬戸内SamPo。
代表の伊藤 匡(いとう ただし)さんにお話を聞きました。
代表の伊藤 匡さんへインタビュー
地元の魅力を再発見できる小さなツアー、瀬戸内SamPo。
代表の伊藤 匡(いとう ただし)さんにインタビューしました。
瀬戸内SamPoが生まれたワケ
──瀬戸内SamPoはどんな経緯で生まれたのですか。
伊藤(敬称略)──
うちの本業は「旅行サービス手配業」なんですよ。
父の代から33年目になるのですが、たとえば山陰や四国にある旅館や観光施設の代わりに福山の旅行会社に営業代行をする、橋渡し的な仕事です。
しかし団体旅行の減少や、インターネットの普及で、これまで通りのスタイルでは立ち行かなくなってきまして。
それで、9年前から団体向けのオリジナル企画を作り始めました。
普段できない体験や、ツアーでしか食べられない特別な昼食を楽しめる企画です。
かなり評判になり、取引先が全国に広がりました。
おもしろい体験ができるところを見つけて交渉する、ノウハウのようなものができたのはこのときですね。
ところが、新型コロナウイルス感染症の影響で団体旅行もなくなってきました。
それで、最近流行のマイクロツーリズム(小規模な範囲での限定的な旅行)に乗る形で、2021年の5月から個人向けに切り替えてスタートしたのが「瀬戸内SamPo」。
遠くに行かずに地元で遊ぼう!というコンセプトです。
福山って何がある?の問いに答えを出したい
──時代を見ながら柔軟に舵を切って来たんですね。
伊藤──
はじめはインバウンド(外国人観光客)向けのアイデアだったんです。
広島市には世界中からたくさんの人が観光に来ますが、原爆ドームと資料館と、あと宮島でも見たら、福山は素通りして大阪とかへ行ってしまう。
もったいないですが、でもそれは、そもそも福山にコンテンツがないからなんですよね。
だから、短時間で体験できる「旅ナカ」需要にマッチするものを作ろうと思ったんです。
他県の人からは「福山って何があるの」と、よく聞かれました。
でも、「これがある」と言えなくて。
それがすごく悔しくてもどかしくて、じゃあ自分たちでそのコンテンツを作ってやろうと思っていました。
今の子どもたちが大人になったときに、福山にはこんないいところがあるよ、県外からもたくさんの人が来るんだよ、と胸をはって自慢できるようにしたいんです。
──ジンジャーシロップづくりを体験するツアーも楽しそうです。
伊藤──
ジンジャーダイヤモンドの中尾さんとは、とある会で知り合いました。
福山をもっと盛り上げたい、とても熱い気持ちを持っているかたです。
中尾さんだけじゃなく、そういったアンテナを立てている人とは、いろいろとつながっています。
そういう人たちを集めて、相乗効果でもっともっと面白いことをやりたいですね!
──瀬戸内SamPoさんは、備後とことこの「協賛パートナー」ですね。
伊藤──
実はずっと、そもそも福山に人を呼び込まなきゃいけない、そのためには福山の面白いところやいいものを発信する必要がある、とは考えていたんです。
そんなとき、Aji-to(アジト)の藤井さんをきっかけに、備後とことこを知りました。
それで、ぜひ、協力したいなと思ったんですよ。
──そういう思いで協賛くださったのですね!ありがとうございます。
瀬戸内SamPoのこれから
──これからどんな企画が出てくるのでしょうか。
伊藤──
そうですね、今、たくさんの楽しい企画を練っているところです。
まずは、「バーベキューのプロ」に教わりながら本格バーベキューを食べるツアー。
日本バーベキュー協会の初級、中級、上級のバーベキュー検定があるって知ってますか?
オリンピックのようなバーベキューの世界大会もあって、3日間ぐらいかけて世界中の人が集まってバーベキューをするんですよ。
この話を聞いてたら、プロのバーベキューってのを食べてみたくなるじゃないですか。
お値段は1万円ぐらいになっちゃいそうなんですけど、海の見えるゲストハウスみたいなところでやりたいですね。
また、福山は琴の生産が日本一です。
それで、琴職人に習いながら琴の端材でものづくりをする体験を考えています。
今、琴の生産量は最盛期の約10分の1になりました。
少しでも生産現場を応援できないかと思っています。
ここにはストーリーがあるから、余計に人に訴えかけるものがある、もちろん、品質も大事ですが、物語性を大切にしていきたいんです。
瀬戸内SamPoプレミアム、というものもやりたいですね。
今はお手頃価格のツアーが中心ですが、よりプレミアムな体験もぜひ提供してみたい。
県外の人にも、福山の素晴らしいところを十分に味わってもらえるような、そんな企画を考えています。
瀬戸内SamPoは少人数を対象にしているので、儲けはほとんどありません。
でも、活動し続けるから、新しい道が見えてくる。
何も動かなかったら、何にもつながらない、そう思っているんです。
人がつながる、まちが動き出す
瀬戸内SamPoが目指しているのは、地元の魅力の再発見と、人と人との交流やコミュニティーづくり。
人がつながり、まちが動き出すようすが、伊藤さんのお話から見えてきます。
まちを動かす原動力は、人の思い。
たくさんの思いがつながったとき、大きな力がはたらきます。
今の子どもたちが大人になったときにはきっと、「福山にはこんなに魅力的なところがあるんだよ!」と、目をキラキラさせて他県のかたに話をしていることでしょう。