自民党って居心地 悪くないの?「こども庁」ってなにするの?乙武洋匡が自民党・山田太郎氏に迫る!

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今回は2021年7月15日に公開された対談の様子をご紹介。ゲストは自民党・山田太郎議員です。デジタル推進やこども庁の構想について伺いました。

自民党内の雰囲気は変わってきている

以前、みんなの党にも所属していた山田議員。乙武氏は、「自民党とみんなの党は正反対の党だ。ベンチャー政党で経営者も多かったみんなの党は、山田さん向きで相性が良かったと思う。言いづらいかもしれないが、自民党は居心地悪くないのですか?」と尋ねます。

山田議員は、「自民党は与党だから常に緊張状態にはあるが、意外と風通しも良くて言いたいことも言える仕事をしっかりやったら、それも認めてもらえる。自民党は保守からリベラルまでいる普通の政党。少し過激な大会社という感じだ」と話しました。

乙武氏は、「外から見ていると、自民党はすごくまともなことを言っている人達がいるのに、上の分からず屋から何となくダメにされて潰されていくイメージだ」と投げかけます。

山田議員は、「私はデジタル・こども庁に関して党内で責任者をやらせて頂いているが、『2年ほど前から党内の雰囲気が変わってきた』と同僚議員とも話している。何故かというと5Gやデジタルが中心戦略になったから。議論をしていても『分からないから任せた』という感じになった。ネットやクラウドという単語が出ると、先輩議員に『日本語で話せ』と言われる」と話しました。

デジタル推進は山田議員の得意分野!?

自民党デジタル社会推進本部の事務局を務めた経験もある山田議員。今後、デジタル庁はどのような形になっていくのでしょうか?

山田議員は、「第一次提言ではデジタル庁創設について、第二次提言ではデジタル庁の機能についてを盛り込んだ。私が責任者としてまとめた第三次提言では準公共3分野(健康・医療・介護、教育、防災)に絞って、変わっていく姿を詳しく提案した。たとえば医療分野の電子カルテは、病院単位でデジタル化してもなかなか進まない。

教育分野のギガスクールも同じで『デバイスだけ配ってもどうするの?』という話になる。教師の役割も変わってくるし、コンテンツを誰が提供するのかという問題もある。政治主導でどんどん前に出していかないと、現場だけでは変われない。領域をしっかり決めてどうやって実現していくかのフェーズに入ってきており、もう少しすれば形になって見えてくると思う。

組織ごとにバラけてしまっているプラットフォームを一元化して、使いやすくするためのグランドデザインを作る。共通のプラットフォームを作るために、国も税金を投入しつつ支援する」と話しました。

乙武氏は、「そうなると民間との連携も欠かせなくなると思う。ずっとビジネスをやってこられた山田さんにとっては得意分野ですね」と投げかけます。

山田議員は、「私はデジタル施策調査小委員会 小委員長も務めている。各民間のベンダーから説明を受けて党内でも議論し、政府に対して『こういったものを作ればいいんじゃないですか』と私が提言している。政府がやると言ったら責任が発生するから、政府内では自由な議論は難しい。私はIT会社で務めていた経験もあるから言葉が通じる」と話しました。

 

こども庁の構想について

乙武氏は、「こども庁の構想をご披露頂いてもいいですか?」と尋ねます。山田議員は、「この国で子どもの政策について責任を持っている大臣もいなければ責任者もいない。たとえばイジメの問題は、学校外だと文科省は関係なかったり、市の教育委員会で隠蔽されたりする。プラットフォームを作って問題を解決していこうというのがこども庁構想だ

こども庁というとマスコミもすぐ幼保一元化の話をするが、幼稚園も保育園も、目的・ニーズがあるから別々になっている。幼稚園は、余裕のあるご家庭がより高い教育を施したいというニーズがある。保育園は、共働き世帯等で預かることを前提にして欲しいというニーズがある。

だから一体にしても意味がない。所轄の省庁をどうするかは今後議論をすればいい。問題は小1の壁で、小学校に上がる時、ある子は幼稚園でアルファベットの勉強をしてくるが、ある子はアルファベットどころか名前も書けない。これでは就学後すぐに格差が生まれてしまう。

だから、どこを就学前のスタンダードにするのか決めた上で、そこを義務教育に近い形で国が差を埋めるのが大事。他にも周産期の産前産後で、子どもは産まれる前は産婦人科で、産まれたあとは小児科へ移る。お産は人生はじめての経験だから、お母さんは不安。ニュージーランドではMy助産師がついて話し相手がいる。

日本でも連携を取るような仕組みが必要で、そうでないと産後うつの問題がある。児童虐待死が一番多いのは0歳児0ヵ月。自分で育てられずに無理心中してしまうケースも多く、妊婦の死亡原因の第1位は自殺だ。子どもの死因究明も、遊具で亡くなれば消費庁で公園であれば国交省と対応が分かれる。こういうところを何とかしないといけない」と話しました。

乙武氏は、「お母さんのお腹の中に命が宿った時から小学校に入るまで、ワンストップで相談できる場所を設けることは大賛成だ」と投げかけます。

山田議員は、「ネウボラ(周産期〜就学迄ワンストップ相談)は、こども庁で検討すべき仕組みの中に入っている。他にもOfsted(教育水準監督局)というイギリスの仕組みは、学校でどういったことが起こっているのか、他校と比べた時の教育水準の評価等を、教育委員会とは別に実施している。

また、一時保護にも色々な問題があって、無理やり一時保護されているケースもあれば、児童相談所が踏み込めないケースもある。アドボカシー(子どもの立場代弁・擁護・権利実現機能)活動は、子どもの意見を聞く代弁者として医者や弁護士がつく活動だ。(こども庁の構想では)このような話を全部、制度として取り込んでいる」と話しました。

乙武氏は、「こども庁構想を進めようとすると大工事が必要になる。その時の政権が本気で取り組んではじめて意味のあるものになると思っている。軽い気持ちでやられると、中途半端なものができて作る前より酷くなることもあり得ると思う。現政権はどこまで本気なのですか?」と尋ねます。

山田議員は、「担当大臣を置くことも大事だし、予算権限を与えることも大事。こども庁が子ども政策の予算をコントロールできるかどうか。日本は世界の中でも子ども関係支出が少ないと言われていて、どんどん削られるいっぽうだ。予算がなければ政策もできないから、欧州並みにGDPに対して3〜4%の予算をつけられるかが勝負だ」と話しました。

乙武氏は、「こども庁の担当大臣には、経験や能力がある人をつけて欲しい」と訴えます。山田議員は、「あとは世論が味方につかないと厳しい。これまでも与野党含めて少子化対策を色々とやってきた。効果が出なかったのは、本気で少子化対策に取り組める環境がなかったから。

今回はこども庁を作ることが目的ではなく、これだけの問題があって解決していかなくてはならないという世論形成ができるかどうか。そして、予算をコントロールできる権限を持てるかどうかが大事だ」と話しました。

山田太郎氏プロフィール

1967年東京都生まれ。慶応義塾大学経済学部卒、早稲田大学大学院博士課程単位取得退学。外資系コンサルティング会社を経て製造業専門のコンサルティング会社ネクステック社を創業、3年半で東証マザーズに上場。国内・海外企業を買収、中国を含むアジア各国に積極展開。その後日本企業の海外進出支援会社を創業。東京工業大学特任教授、早稲田大学客員准教授、東京大学工学部非常勤講師などを歴任。

2010年、参議院議員通常選挙にみんなの党から立候補するも落選。2012年に繰り上げ当選となる。これまでの経営者・教育者の経験を活かすステーツマン(政治家)として活躍中。

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