米海兵隊のF35B戦闘機2機が海自護衛艦「いずも」で発着艦試験実施

軽空母化への大きな一歩

© 高橋浩祐

Kosuke Takahashi

Journalist

Kosuke Takahashi

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英軍事誌ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー東京特派員。ホリプロ所属。ハフポスト日本版前編集長。米コロンビア大学院ジャーナリズムスクールと国際公共政策(SIPA)修了。NK Newsや論座等にも寄稿中。英語ツイッター@TakahashiKosuke

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防衛省は10月5日、米海兵隊のF35Bステルス戦闘機2機が3日に海上自衛隊の護衛艦「いずも」で発着艦試験を実施したと発表した。いずも型護衛艦の軽空母化に向けた歴史的な大きな一歩を踏んだことになる。

防衛省の発表によると、実施海域は四国沖で、米海兵隊岩国航空基地に属するF35Bが参加した。防衛省報道室は筆者の取材に対し、2機のF35Bが発着艦試験を行ったことを明らかにした。

海上自衛隊のツイッター投稿では、米海兵隊のF35Bが「いずも」から短距離離陸をし、「いずも」に垂直着陸する写真や映像が写っている。

防衛省は発表文で「米海兵隊の支援を得て、F35Bの発着艦に関する検証を実施し、発着艦が可能であることが確認できました。海上自衛隊の艦艇にF35Bが発着艦するのは今回が初めてとなります」と述べた。

さらに、「米国の支援を受けた検証作業の実施は、日米同盟の深化及び日米の緊密な協力を示すものです」と述べ、発着艦試験が日米同盟強化の賜物であることを強調。「米海兵隊のF35Bが『いずも』へ発着艦できることが確認されたことは、日米の相互運用性の向上に資するものであり、日米同盟の抑止力・対処力の強化につながるものです」と述べた。

護衛艦「いずも」に垂直着陸する米海兵隊のF35B(写真:海上自衛隊)
護衛艦「いずも」から短距離離陸をする米海兵隊のF35B(写真:防衛省)

●「いずも」の1回目の改修は6月末に終了

海上自衛隊史上最大の艦艇である「いずも」と「かが」の「軽空母化」は中国の太平洋進出を念頭に抑止力を強化する狙いがある。軽空母化改修は、5年に一度実施される大規模な定期検査を利用して、それぞれ2回にわたって行われる。

「いずも」の1回目の改修は、2019年度末から横浜市磯子区のジャパンマリンユナイテッド横浜事業所磯子工場で実施され、今年6月末に終了した。具体的には、特殊な塗装などによる飛行甲板の耐熱処理工事や誘導灯の設置などが行われた。

防衛省は8月31日に閣議決定された2022年度の概算予算で、いずも型護衛艦改修費用として67億円を要求した。このうち、12億円を米軍からの技術支援経費として要求した。いずも型護衛艦でF35Bのオペレーションを実現するためには米軍の協力はやはり欠かせない。

岸防衛相は7月30日の記者会見で、今年度中に米軍の協力を得て「いずも」でF35Bの発着試験を行うことを明らかにしていた。

岸防衛相は、「今年度は、1回目の改修の後の『いずも』において、F35Bが支障なく発着艦可能であるかといった点について確認することを想定した検証・試験を実施予定である」と発表。さらに、「いずも型護衛艦でのF35Bの運用に向けては、運用経験を有する米軍の協力を得て、改修後に検証試験を実施し、改修や運用に関する知見を得る必要がある」と述べた。

●来年度予算で「いずも」の着艦誘導装置を先行取得

防衛省はいずも型護衛艦改修費用67億円のうち、「いずも」の着艦誘導装置を先行取得するための費用36億円を要求した。防衛省によると、この着艦誘導装置としては、米海軍と米レイセオン社が共同開発した「ジェイパルス(JPALS:Joint Precision Approach and Landing System)」が予定されている。JPALSはGPS衛星信号と慣性航法システム(INS)を使って、F35Bやオスプレイといった軍用機を自動的に安全かつ正確に着艦誘導する全天候型のシステムだ。防衛省は2022年度予算では「いずも」の分のみのJPALSを取得し、「かが」の分は後年度に取得する方針だ。

ただ、来年度予算で着艦誘導装置が先行取得される前に、3日に「いずも」で米海兵隊のF35Bの発着訓練が行われたことになる。では、この米海兵隊との訓練で使われる着艦誘導装置はどうしたのか。

海上幕僚監部広報室は筆者の取材に対し、3日の四国沖の天候は快晴だったこともあり、今回の発着艦試験では着艦誘導装置が使用されなかったことを明らかにした。

防衛省は「いずも」改修が当初予定通り、2026年度中に終了すると見込んでいる。

●2022年度は4機のF35Bを取得へ

防衛省は2022年度の概算予算で「いずも」と「かが」に搭載するF35Bの4機の取得費として521億円を要求した。今年度予算では2機の取得費として259億円を計上した。一方、2020年度予算で793億円を計上し、取得する6機のF35Bは、2024年度に調達されて同年度末までに配備される予定だ。航空自衛隊は計42機のF35Bを導入する計画だ。

防衛省は、F35Bの国内配備先としては宮崎県新富町にある航空自衛隊新田原基地が最適と判断している。

なお、米軍では、通常の滑走路で離着陸するF35Aが空軍仕様、短距離滑走での離陸と垂直着陸が可能なF35Bが海兵隊仕様、艦載機として使うF35Cが海軍仕様となっている。

【追記:2021年10月8日午前11時10分】海上幕僚監部広報室は筆者の取材に対し、今回の発着艦試験では着艦誘導装置が使用されなかったことを明らかにしたため、追記しました。

(Text by Takahashi Kosuke)無断転載禁止