【高校野球】「落合さんが理想です」 ドラフト候補の大型捕手、3度の3冠王を貪欲に“解剖”

県岐阜商・高木翔斗【写真:間淳】

県岐阜商・高木は1年夏からベンチ入り、高校通算20本塁打をマーク

打てる捕手へのこだわりは次のステージに進んでも変わらない。今秋ドラフト候補の県立岐阜商業・高木翔斗捕手は、捕手歴12年の“ベテラン”。守備ではソフトバンクの甲斐拓也捕手を目指し、打撃では3冠王にも輝いた落合博満氏の理論を学ぶ。プロでも「4番・捕手」を目標に掲げている。【間淳】

小学1年生で少年野球チームに入った時から捕手だった。そして、「4番」にこだわってきた。身長186センチ、体重90キロ。大型捕手の高木は、甲子園常連校の県岐商で1年春からベンチ入りした。守備力が重視されるポジションながら高校通算20本塁打。今夏も「4番・捕手」として甲子園に出場し、ドラフト候補となっている。ところが、高校3年間は順風満帆ではなかった。

「中学まで軟式だったのでキャッチングに苦労しました。最初はパスボールが多くてチームに迷惑をかけました」

初めての硬式にも高校のスピードにも戸惑った。高校1年の秋季東海大会ではチームが終盤に追いついた直後、自らのパスボールがきっかけで大量失点し「勝敗を分ける捕手のワンプレーの大切さ、自分の力のなさを痛感しました」と振り返る。全体練習後にマシンで速いボールを捕る練習を繰り返す日々。チームメートにも協力してもらい、カットボールやツーシームといった手元で動くボールやワンバウンドを捕球する技術を磨いた。

配球にも苦労した。鍛治舎巧監督に作ってもらった冊子で基本を学んだ。録画した映像やデータを見ながら、投手陣と一緒に相手打者を分析した。捕手のリードに正解はないかもしれない。それでも、高木は「抑える確率が高い選択をできるようにするのが捕手の役割だと思います」とベストな組み立てを追求した。

県岐阜商・高木翔斗【写真:小西亮】

二塁への送球タイムは最速1.84秒、打撃は「落合さんが理想です」

高木は捕手としての長所を「肩の強さ」と自己分析する。遠投105メートル。下半身と上半身を連動させるステップを強化し、武器を磨いた。2秒を切るとプロレベルとされる二塁までの送球タイムは最速1.84秒まで縮めた。目指すのは球界で強肩の代名詞とされる存在のソフトバンク・甲斐拓也。二塁までの送球は1.7秒台前半だ。

「肩に自信があるといっても、プロと比べるとまだまだです。コンマ何秒を速くするのが大変ですが、今は1.8秒を目標にしています」。無駄のない動きとコントロールを身に付け、“キャノン”と呼ばれる甲斐の強肩に近づくつもりだ。

高木がドラフト候補になっている理由は打力にもある。どの球団も「打てる捕手」を求めている。高木の魅力は、広角に打ち分け、逆方向にも打球が伸びるところ。参考にするのは3冠王に3度輝いた落合博満氏だ。

美しい放物線を描き右中間にも本塁打を量産した打撃理論に「体が開いているように見えても、逆方向に飛距離を出せるのは参考になります。自分もアーチ状の本塁打が多いので、落合さんは理想です。胸椎、みぞおちのあたりを回してスイングすることなど、現役時代を知らなくても動画を見て取り入れています」と貪欲に知識を吸収している。

高木がプロ野球選手に憧れた理由は「本塁打」だった。ファンが打球を目で追う瞬間、時が止まったように球場が静まり返り、スタンドに入ると大歓声に包まれる。「本塁打がプロ野球選手のかっこよさでした。打てる捕手になって、最終的にはプロで本塁打王を獲りたいです」。こだわり続けてきた「4番・捕手」として、今度は自分が少年たちの憧れの存在となる。(間淳 / Jun Aida)

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