「小学生平和大使」実現へ なぜ?どうやって?考える授業 長崎・福田小

活動アイデアを発表したグループ(奥)に対し、質問する児童(左)=長崎市立福田小

 「平和」とは何だろう-。長崎市福田本町の市立福田小(木下和敏校長、360人)の5年生が9月30日、児童同士やゲストを交えて対話を重ねる授業に取り組んだ。テーマは「小学生平和大使になる」。今月挑戦する活動として「ポスター作り」「募金」「ごみ拾い」などの案を発表。お互いに「なぜ?」「どうやって?」と質問や意見を繰り返しながら、平和の実現に向け考えを深めた。
 他人を尊重しつつ自らの言葉で語り、行動する子どもを育てようと、市教委が2018年度に始めた新たな平和教育「対話型授業」の一環。本年度は同校など市立小中3校がモデル校で、この日の授業は市内の教育関係者に公開された。
 5年生は9月上旬、「高校生平和大使」を経験した大学生の講義を受け、核兵器廃絶に向けた活動内容や思いなどを聞いた。その上で小学生版の“平和大使”として、班ごとに「平和」につながる行動を考え、実行に移す予定という。
 発表当日はゲストティーチャーに、同市で被爆者の体験を語り継ぐ「交流証言者」の山野湧水さん(25)を招待。班ごとに「どんな世界を目指すか」「そのために何をするか」を発表し、他の児童や山野さんと意見交換しながら案を磨いた。
 ある班は「みんな楽しく仲良く協力する」世界を目指し、「好きなことが自由にできる」のが大事だと考えた。これに対し児童の一人は「好きなことができることが、なぜ『仲良く』につながるの」と質問。班のメンバーはしばらく話し合い、「好きなことができず命令されたら、ストレスがたまり、平和につながらない」との意見を導いた。
 さらに他の児童から「マスクを付けないといけなくて給食も楽しく食べられない。命令されている感じ」とコロナ禍の実体験に即した感想も。山野さんは自身の経験を交え「絵を描くのが好きで仕事にも生かしている。それが自信につながり、人に優しくなれた」と考えを語った。
 他にも▽平和をイメージした言葉や笑顔の人を描いたポスターを作る▽商業施設で募金をして医療従事者や世界の苦しんでいる人に寄付する▽核兵器保有国に英語で手紙を書いて核廃絶を求める-などのアイデアを出し合った。
 担当した佐藤まどか教諭(24)は「今まで平和の大切さや原爆の恐ろしさを授業で学んでも『じゃあ自分はどう行動するか』を考えてもらうのは難しかった。対話型授業を通じて、児童にも行動したいという気持ちが芽生えている」と手応えを語った。

同級生からの質問を受け、グループで話し合って具体的な取り組みを考える児童たち(手前)

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