ZOZOCOSMEの衝撃(最終回)化粧品ブランドとの連携 ― 顧客とブランドの期待に応える組織横断の取り組み

ZOZOCOSME(ゾゾコスメ)の取り扱いブランド数は、右肩上がりに増えている。2021年3月18日のオープン時は500ブランド超だったが、今や600まで増えている。しかも、シャネルやディオールなど、著名なラグジュアリーブランドも相次いで出店したことに加え、アルビオンが主力商品「スキンコンディショナー」のミニボトルを数量限定販売した。これらは化粧品市場においてゾゾコスメの存在感が高まっていることを示唆している。国内外の高級ブランドがゾゾコスメに集まり始めている理由の一つは、営業チームと事業推進チームが各ブランドと二人三脚で販売戦略を練っているからだ。集中連載の最終回では、オープン前から現在に至る、営業チームと事業推進チームの連携についてひもとく。

――アパレルの印象が強いプラットフォームであるがゆえに、ゾゾコスメのオープンに向けて、コスメブランドの新規営業は苦労されたのではないでしょうか。

平井 もちろんその通りですが、ZOZOの今後の成長戦略として、取り扱い商材を広げていくことを掲げていましたので、以前からコスメの取り扱い強化は考えていました。その背景の一つとして、ゾゾコスメオープン前からZOZOTOWN(ゾゾタウン)に出店している、取引先のコスメブランドさまの期待に応えきれていないという課題意識もありました。もともとゾゾタウンは、小規模ながらもコスメを取り扱っていました。アパレルとコスメをクロスできる可能性に期待して出店していただいていたコスメブランドさまから「そろそろ次のステップに進みたいよね」「ゾゾタウンでコスメを盛り上げていきたいね」という声を頂くこともあり、コスメの施策を抜本的に強化することが、われわれの責任だと思ったんです。

新井 アパレルとコスメをうまく融合させると、唯一無二のECモールになるのではないか。社員としてはもちろんですが、ゾゾタウンユーザーとしてもワクワクしました。ZOZOには新しいことにチャレンジする風土がありますが、自分たちだけで進めていけるわけではありません。ですから、営業チームとして大切にしたのは、ZOZOがコスメ強化することに対する共感の輪を、社外はもちろん、社内にも広げていくことでした。

平井 コスメカテゴリーの強化について現場レベルでのディスカッションが始まったのは、2019年春頃ですね。デザインチームや開発チームに、新井と一緒にプレゼンしたところ、そのときすでにファッション以外のカテゴリーについて、自分たち以外の社員もいろいろと考えていたことが分かったんです。改めて、いろいろなチャレンジを考えている社員が集う会社なんだ、と思いました。「アパレルとコスメが両立するECモールは面白いかもしれない」「実現するために必要なユーザーインターフェースは何だろうか」「意外と重たい開発になりそうだ」と多種多様な意見を交わしながら、コスメに共感する仲間をどんどん増やしていきました。そして、最後は経営会議に企画案を預けたんです。

新井 ゾゾコスメの企画案は、私たち現場の意見に共感してくれたデザインチームのトップに預け、経営陣で議論してもらいました。経営陣のゴーサインが出てからは、怒涛の展開でした。やると決まったら組織全体が一気に動き出すのも、ZOZOの社風の一つだと思います。

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