人種差別、リンチのトラウマをアートに。ウィンフレッド・レンバート展 Winfred Rembert: 1945-2021 (メディアプレビュー行ってきた)

By 「ニューヨーク直行便」安部かすみ

ニューヨーク、ミートパッキングにある3階建のギャラリー「フォート・ギャンズヴート」では、10/8から12/18まで「Winfred Rembert: 1945-2021 」(ウィンフレッド・レンバート展)が開催される。

ウィンフレッド・レンバートさんの作品は、革をキャンバスに、レザーカーヴィングの技法と靴の染料を使って仕上げられている。

革に描かれているものは、鎖で繋がれた囚人たち(チェーンギャング)、首を吊られていたり、殴られて血が噴き出していたり、警官から追われたりしている黒人男性...。

彼がなぜそのような作品を生み出すようになったか。

ウィンフレッドさんは人種差別が色濃く残っていた南部ジョージア州で1960年代、公民権運動の最中に逮捕状もなく拘束され、7年間も投獄させられた。刑務所内では監守からのリンチ、拷問は日常茶飯事に行われ、出所後もトラウマになる程だった。奥様のパッツィーさん曰く、彼は亡くなるまで悪夢にうなされた。

つまり、彼の記憶から抜け切れなかった悲惨な記憶が、時に色鮮やかにアートとして表現されている。その原動力は、奥様のパッツィーさんが「あなたならできる」と励ましたことによる。刑務所内で覚えた皮製品やデザインなどを生かし、ウィンフレッドさんはこれらの作品を次々に生み出した。

そんなウィンフレッドさんだが、今年の3月に75歳で亡くなった。この日のプレスプレビューにはパッツィーさんが出席し、夫の替わりにそれぞれの作品を解説してくれた。

3階スペースの奥には、首を吊られた黒人男性の絵があり、このようなメッセージが添えられている。

「あぁ神様、私はまだ生きている。生き残った。そして私はリンチを受けてサバイブした生き証人として、絵や本に残し、何が起こったかを後世に伝えることができる。もし死ぬことがあっても老衰であり、ロープで(吊られて)死に至ることはない」

奥様のPatsyさんが来場し、Winfredさんが残した作品を解説してくれました。

Winfred Rembert: 1945-2021 (ウィンフレッド・レンバート展)

10/8~12/18, 2021

Fort Gansevoort New York
5 Ninth Avenue
New York, NY, 10014

Text and photos by Kasumi Abe 安部かすみ 無断転載禁止

© 安部かすみ