【高校野球】高校通算70発の千葉学芸・有薗直輝 スカウトが本塁打よりも評価した点は?

千葉学芸・有薗直輝【写真:川村虎大】

プロを目指すきっかけは高1で放ったZOZOマリンでの本塁打

打撃練習をすれば、木製バットで快音を響かせて柵越えを連発。ノックを受ければ大きな体を器用に動かし、一塁へ矢のような送球を送る。打っても守ってもハイレベルな技術を見せるが、スカウトや高倉伸介監督が最も評価するのは人間性だという。それが千葉学芸のドラフト上位候補・有薗直輝という男だ。ドラフトを目前に控え、有薗は「ドキドキしています」と純粋な気持ちを語ってくれた。

テレビに映るプロ野球を見たのがきっかけで、小学2年時に地元の軟式野球チームで野球を始めた。6年時にはマリーンズジュニアに選出されるまでに成長。中学では硬式野球の強豪・佐倉リトルシニアで腕を磨いた。クリーンアップを任されていたが、本塁打は2本。千葉学芸に入学した時は大学進学を希望していた。

プロを目指すきっかけになったのは、高校1年夏の一発だった。市原中央と対戦した千葉大会5回戦。快音を響かせ、ZOZOマリンの左翼スタンドに叩き込んだ。打った瞬間、「行ったと思った」という一撃は自分の意識も周囲の見る目も変えた。「スカウトさんも見にきてくれるようになって、プロに行きたいという気持ちなりました」。そこから最後の夏が終わるまでに70本塁打を積み上げた。

支えになったのは両親だった。常に自分の意思を尊重し、やりたいことをやらせてくれた。全体練習後に自主練習に励むと、終電に間に合わないこともしばしば。そんな時は学校に迎えに来てくれた。ただ、ドラフト当日の10月11日、会場に来られるのは母のみ。父は半年ほど前から中国に単身赴任している。

記入したプロ野球志望届の写真を父に送ると、「頑張って」と連絡が来たという。「当日はいい報告がしたい」と中国へ吉報を届けるつもりだ。

春季千葉大会はボールを受けた目が腫れた状態でプレー、優勝に貢献

今年の千葉春季大会でよく口にしていたのが「新たな歴史を作りたい」。言葉通り、千葉学芸は春夏秋通じて初の千葉県制覇を達成したが、その道のりは苦難に満ちていた。市柏との2回戦で、腕に受けた死球が跳ね返り、左目に当たった。目は腫れ、鼻は曲がり、その試合は途中交代した。それでも次の3回戦からは強行出場。会場を驚かせたのは準々決勝の中央学院戦だった。

2打席目。打球は弾丸ライナーで、ゼットエーボールパークの外野スタンドに消えていった。目が腫れた状態で試合後の会見に応じ、「まだ見にくいですが、自分のスイングができました」と答え、記者を驚かせた。

この日、スカウトが評価したのは本塁打よりも野球に対する姿勢だったという。高倉監督が明かす。「第1打席は三塁ゴロだったんですけど、一塁まで全力疾走して飛び込んだんです。その姿を見ていたスカウトさんが、高く評価してくださいました」。高校野球で全力疾走は当たり前のことかもしれないが、全力プレーを怠らない姿勢にスカウトは二重丸をつけたようだ。

スカウトも惚れ込むほどの野球への情熱を持った有薗は、日本を代表する打者になることを目標に掲げる。「選ばれてからが勝負なので、技術も人間性も磨いていきたいです」。千葉学芸の歴史を変えた男が、次は上の舞台で歴史を作る。

○有薗直輝(ありぞの・なおき)
2003年5月21日、千葉県旭市生まれ。185センチ、97キロ。右投右打。内野手。小学2年時に干潟メッツで野球を始め、6年時にマリーンズジュニアに選出。中学では佐倉リトルシニアに所属した。千葉学芸高では1年春から右翼で4番を務めた。投手も兼任し、2年秋には背番号1を背負った。3年時には3番・三塁で出場。春には千葉学芸初の県大会優勝に貢献。高校通算70本塁打。

【動画】柵超え連発! 千葉学芸・有薗の豪快フリーバッティング

【動画】柵超え連発! 千葉学芸・有薗の豪快フリーバッティング signature

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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