『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』©︎2021 POGL SALES AND COLLECTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

映画冒頭から筆文字でドドンと「ニコラス・ケイジ」の名が。園子温監督のハリウッドデビュー作『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』は、まさにニコケイらとともに作り上げたぞ！という喜びが溢れ出る、そして誰もが認めるであろう「怪作」に仕上がっている。

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「園×ニコ」ケミストリー

サムライタウンの銀行を襲撃した強盗が、街を牛耳る悪徳知事から“行方知れずの孫娘を連れ戻す”ことを条件に自由を手にし、彼女が消息を絶ったという不思議な街ゴーストランドへ足を踏み入れる……。そんな導入部から、『ニューヨーク1997』（1981年）や『マッドマックス』（1979年）、そして“クロサワ”な侍～マカロニ映画など、つまり映画ファンとしての園監督の夢や憧れが詰まっていることが分かる。

一言で言ってしまえば本作は、チンケな強盗が贖罪（？）のために戦い、やがて英雄になる……といったお話。いわゆるディストピアものでありながら、そこに和のテイストを衒いなくぶち込んでいるためクラクラしてくるが、ジョージ・オーウェルの「動物農場」的な設定を拝借し、限られた予算でディストピア感を醸成しようと試みている。

正直、あまりにもぶっ飛んだ世界観のせいでかなりファンタジー要素が強くなっているものの、ニコラス・ケイジの一挙手一投足を凝視していれば特に気になるものではない（というかニコケイの存在のせいでファンタジーみが増している）。これまで漫画原作映画も多く手がけてきた園監督だけに、むしろ本作のほうが（映画としては）ベーシックな世界観であり、そういった部分も奇妙な感覚に陥らせる理由の一つかもしれない。

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“初めてのニコケイ”が満載

ニコケイファンとしては、とにかくしんどい目に遭うニコケイを見つめていればじゅうぶん楽しめるはず。なお、ビル・モーズリイ演じる知事に着せられたレザースーツには爆弾が搭載されていて、命令に反すると即爆発するのだが、首や腕だけでなく、なんと◯ン◯マにも丁寧に2つ装着されているという気の利いた（？）仕様。このレザースーツは気合を入れて作ったのだろうか、最後の最後まで活用されるのでお楽しみに。

他にも、ママチャリを駆るニコケイ、◯◯◯を爆破されるニコケイ、負傷した少女をスルーして全力で逃げるニコケイなどなど、園監督ならではの“初めてのニコケイ”が満載の本作。かつて某企業のCMで「アイラブパチンコ！」と叫んでいたニコケイの鬼気迫る表情が蘇る、ファン垂涎のニコケイ映画である。もちろん、演技力もアクションスキルもずば抜けているソフィア・ブテラにも要注目だ。