読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、50歳の夫と暮らす49歳・会社員の女性。家計は夫婦別財布。財布を合わせたほうが今後の老後資金作りに有利だと考えていますが、お互い独身生活が長かったため抵抗が強いといいます。プロが教える、上手なやり方は? FPの横山光昭氏がお答えします。
夫婦で財布を合わせるとよいと聞きますが、なかなかできずにいます。ですが、互いにもう50歳。老後のことも考え、お金を貯めるには、そろそろ本気で家計を合わせることを考えなくてはいけないかなと思っています。
私たちは50歳の夫婦で、3年前に初婚同士で結婚しました。長いこと独身でしたから、自分の収入の使い方、価値観等がそれぞれに出来上がっています。彼はしっかり貯め込むほうです。私はおしゃれを楽しめる年齢もあと少しかなと思っているので、洋服代や美容関係にお金を使いたいほう。そのため、あまり貯めることができていません。結婚前からの貯金は、私はボーナスの残りなどが貯まり50万円ほどしかなく、夫は800万円ほど蓄えているようです。
家計を合わせると、どうしても私のほうが多く使ってしまうだろうと思います。そうなると、彼のお金を使うようで、大変申し訳なく思い、財布を合わせることをためらってしまいます。やはり財布を合わせないと、お金も貯まらないし家計管理もうまくいかないものなのでしょうか。
【相談者プロフィール】
・49歳、会社員。夫、50歳、会社員
・手取り収入:
相談者/月収26万5,000円、年間ボーナス約70万円
夫/月収34万4,000円、年間ボーナス約120万円
・貯金:相談者約50万円、夫約800万円
・毎月の支出の内訳:44万3,000円
【毎月の支出の内訳】
・住居費(家賃・管理費):11万6,000 円
・食費(外食含む):8万2,000 円
・水道光熱費(電気・水道):1万8,000 円
・通信費(スマホ2台・ネット回線):1万2,000円
・生命保険料:2万4,000 円
・日用品代:1万円
・医療費:3,000円
・教育費(妻・習い事):1万2,000円
・交通費:5,000 円
・被服費:4万2,000円
・交際費:2万円
・娯楽費:2万5,000 円
・その他(それぞれ自由に使う分含む):7万4,000円
横山:夫が上手くお金を残しているのかもしれませんが、家計表を拝見すると黒字でやりくりできているようです。今後は、ご夫婦でやりくりを考え、老後資金の準備などとして、「ご夫婦の貯金」を増やしていければよいのではないかと思います。
価値観はゆっくり合わせていきましょう
自分なりの暮らし方、お金の使い方がしっかり出来上がっているお二人が一緒に暮らすのですから、遠慮ややりにくさを感じることもあるでしょう。それでも、ご夫婦になったのですから、時間をかけてでも価値観を合わせ、2人の目標に向かいお金を貯めたり、何かを成し遂げたいと思われているのでしょう。素敵ですね。
価値観を合わせることは、急にできることではありませんが、家計を運営する際やお金を貯める際にはとても大切なことです。話し合いを重ねながら、お金をかけたいと思っていること、さほどお金をかけなくてもよいと思っていることなどを、共有していくようにしましょう。
お互いの考えが分かると、家庭にとって大切な支出、そうではない支出が分かってきます。その上で、ファッションや美容関係などにお金をかけることが必要だと思うのなら、そのお金をどのようにねん出すべきかも話し合って決めていけるようになると良いですね。また、お金をかけたいことだからと無計画に使うのではなく、より必要なものに絞った使い方も検討してみることもできるはずです。
お金について話し合っていくと、自分が自由に使うために手元に置いておく金額、2人の暮らしのために共有しておく金額の見通しも立ちます。ぜひ、積極的にご夫婦でお金の話をしていってください。
夫婦でお金を貯めるには、支出の「見える化」を
ご夫婦で家計を合わせる第一歩として、こづかい以外の、共有すべき生活費についてざっくりと支出を記録することは有効です。お金の管理をしているのがそれぞれであっても、支出の「見える化」ができれば、家庭のお金の流れを把握しやすくできます。
記録は手書きでもよいですし、家計簿アプリでもよいでしょう。特にアプリでは支出の記録を夫婦で共有できる仕組みもあるので使いやすいかもしれません。また、お金と家計簿の両方を夫婦で共有できるプリペイドカードもあります。
支出の記録が共有できればよいので、手段はどれを選んでも良いでしょう。仮にやってみて合わなかったら、変更や工夫をしてもいいのです。そして、記録するだけにとどめず、それをもとに振り返り、話し合いの材料にしてください。
数字で確認すると、いろいろなことが見えてきます。意外とこんなところで無駄遣いをしていたんだとか、思っていたより使っていないとか、いろいろな感想を持つはずです。二人で振り返ることで、1人でお金を使うよりも減らせる費目も見つかるかもしれません。
次のステップは、貯金と投資を組み合わせて老後資金作り
家計の共有がある程度できたら、老後に向けての資産作りに取り組んでいきましょう。現在お互いにお持ちの貯金は婚前の貯金ですから、基本、それぞれの資産となります。ご夫婦の資産は、ご結婚されてからの収入で作らねばなりません。
家計を合わせると、貯蓄計画もしやすくなります。いまはまだ、「生活防衛資金」となるような蓄えはないようですが、毎月の余剰金をしっかり作り、貯金と投資をしていきましょう。始めは貯金の比率を多めにし、お金がたまってきたら投資の割を少しずつ上げていくようなやり方がよいでしょう。
老後資金などの大きな金額は、貯金だけではなかなか作り上げられません。老後資金作りに向いているiDeCoやつみたてNISA等を利用し、毎月積み立てていく投資を組み合わせていくことを検討してみましょう。これらは税制優遇されている制度で、長期投資を勧める制度でもあるので、複利の効果で、時間をかければかけるほど、お金を膨らませることができる可能性があります。50歳から始めれば、65歳まで15年、70歳まで20年運用することもできます。意識を合わせ、頑張ってみてください。