小値賀「沖ノ神嶋神社伝世陶磁器」18点 長崎県文化財に指定  広域貿易の実態示す希少性

県文化財に指定された沖ノ神嶋神社伝世陶磁器18点(県教委提供)

 長崎県教委は7日、県文化財保護審議会の答申を受け、北松小値賀町の「沖ノ神嶋(おきのこうじま)神社伝世陶磁器」を県文化財に指定した。県指定文化財は計391件、うち有形文化財の美術工芸品は計122件になった。
 県教委によると、野崎島の沖ノ神嶋神社に伝わる陶磁器計18点で、14~17世紀の中国、タイなど海外産が主体。指定理由は九州と中国、東南アジアとの広域的な貿易の実態を示す希少性があり、欠けや割れが少なくほぼ完全な形をとどめているため。18点は全て町歴史民俗資料館で展示されている。
 同神社に関する中世以前の文献資料が乏しく、陶磁器が奉納された時期や経緯は不明。しかし同資料館所蔵の岩坪家文書から、江戸時代には18点全てが神社の宝物として保管され、神事で使用されていたことが確認できるという。
 18点の内訳は壺(つぼ)類12点、皿類3点、蓋(ふた)物1点、獅子形香炉2点。このうち壺類は、1323年に韓国全羅南道(チョルラナムド)新安沖で沈没した貿易船の舶載品と類似する小壺をはじめ、ルソン島(フィリピン)からの茶葉輸入に用い、呂宋壺(るそんつぼ)と呼ばれる厚手で大型の「灰釉四耳壺(かいゆうしじこ)」など。「福壽」という押印のある壺もあり、大きいもので高さ約30センチ、口径約10センチ、底の直径約10センチ。
 蓋物は牡丹と草が描かれた「三彩陰刻花文蓋物(さんさいいんこくはなもんふたもの)」。16世紀の中国・明時代の陶磁器とみられるが、ほかに同神社に伝わった品が確認されておらず、県教委は「今後の陶磁器研究にとって重要資料となる」としている。

灰釉四耳壺(県教委提供)
三彩陰刻花文蓋物(県教委提供)

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