約3人に1人が「職場はブラック企業」と回答、辞めたいのに辞めないのはなぜ?

サービス残業、給料未払い、ハラスメントの横行……。ブラック企業と言われたらどんな職場を思い浮かべますか。

日本労働調査組合が「ブラック企業に関するアンケート」を実施。約3人に1人が自身の勤務先をブラック企業だと思っていることがわかりました。また約7割の人が退職を検討しているものの、実際にはなかなか退職に踏み切れない人も。辞められない理由は何なのでしょうか。

調査結果から、ブラック企業で疲弊する人たちの実態が見えてきました。


約3人に1人が「勤務先はブラック企業」

いまの勤務先はブラック企業だと思いますか?

日本労働調査組合が全国の20~49歳の会社員、男女516名を対象に「ブラック企業に関するアンケート(https://nichirou.com/3870)」を実施。自身の勤務先がブラック企業だと「思う」と回答した人は全体の31.2%に上りました。

逆に「思わない」と回答した人を年代別に見ると、40代が一番多く56.6%、20代が48.3%、30代が41.5%という結果になりました。

40代にもなると自分で仕事量を調整でき、職場の労働環境にも慣れてくるので、特にブラック企業だとは感じにくくなるのかもしれません。

ブラック企業の定義とは?

長時間労働、パワハラの横行、過剰なノルマ……。そもそも、ブラック企業の定義とは何でしょうか。

あなたが思うブラック企業の定義について聞いたところ、最も多い回答が賃金が支払われないのに残業を強いられる「サービス残業(36.9%)」でした。次に「ハラスメント(17.2%)」「長時間労働(15.8%)」「残業が多い(13.7%)」「給料が安い(10.8%)」と続きます。

実際に勤務先がブラック企業だと実感したのは、どんな時なのでしょうか。悲痛な声が聞こえてきます。

「上司から『サービス残業ではなく思いやり残業だと思って仕事しろ』と言われた」
「定時8:30~だが7:30迄の出社を強制される」
「残業代が30分ごとに出るが強制的に29分でタイムカードを切らされる」
「上司から『サービス残業ではなく思いやり残業だと思って仕事しろ』と言われた」
「本人が特定されないはずの内部通報制度で本人が特定される」

年代が上がるほどブラック企業でも退職しない

また同社が、自身の勤務先が「ブラック企業だと思う」と回答をした全国20~49歳の会社員男女552名を対象に実施した、もうひとつの「ブラック企業に関するアンケート」では、退職を検討していると回答した人は全体の68.7%に上りました。

年代別にみると、20代では約8割の人が退職を検討していることがわかります。一方、年代が上がるほど転職が難しくなるためか、ブラック企業に勤めていると自覚していても40代の約4割の人は退職は検討していないと回答。

また、会社を辞めたい理由を聞いたところ、最も多い回答が「給料が安い(37.2%)」でした。次に「従業員を大切にしない(30.6%)」「仕事量が多い(28.2%)」「不当な人事評価(24.3%)」と続きます。

ブラック企業でも会社を辞めない理由

辞めたいと思っても、いまの仕事が忙しくて転職活動ができなかったり、勤務先が応じてくれなかったり、ブラック企業の場合はなかなかスムーズには退職できないことも。会社を辞めていない、辞められない理由は何なのでしょうか。

最も多かったのが「転職活動が不安(41.7%)」、次に「生活が困窮する(38.9%)」でした。転職や退職後の不安が大きいため、踏み切れない様子がうかがえます。また「家族を不安にさせる(19.9%)」「同僚や関係者に迷惑が掛かる(17.6%)」など、周囲への影響を気にして思いとどまっている人も多いようです。

しかし、周りへの気遣いよりも「一番優先すべきことは自分自身の身を守ることです」と話すのは、アクセス社会保険労務士事務所の菅原伸也さん。「体調を崩して社会復帰に時間がかかるケースを見てきました。身体や精神を壊してもブラック企業が保障をしてくれることはありません」。

ブラック企業を退職したいと思ったらすべき「3つのこと」

菅原さんによると、ブラック企業を退職したいと思っているなら、その前にやっておくべき3つのことがあるといいます。

ひとつ目は、体調や精神面で影響が出ていたら病院へ行くこと。「うつ病や身体的に症状が出ているのであれば、病院へ行き診断書をもらいましょう。診断書や症状次第では休職して、傷病手当金を受給できます。また『やむを得ない事由』にあたる可能性が高いため退職する場合もスムーズに進みます」。

次に、引き継ぎの準備をしておくこと。「基本的に会社が情報管理すべきですが、ご自身しか知りえない営業情報や社内情報があるのであれば、まとめておきましょう。ブラック企業は、情報がないために損害が発生したと言いかねません」。

最後に、早めに退職の意思表示をすること。「就業規則や雇用契約書を確認し、決められた期間と手続きのもと退職を申し出るようにしましょう。ただし、ブラック企業の場合は、退職の意思表示をしてから悪質な対応をするケースも考えられます。もし身の危険を感じるようであれば、無理に退職の意思表示をして相手を過敏にさせるのではなく、警察・弁護士・労働組合などに相談することをおすすめします」。

自分の身を守れるのは自分しかいません。せっかく就いた仕事だから、生活があるからそう簡単には辞められないと自分を追い込まず、体調に異変を感じる前に退職を視野に入れてみてはいかがでしょうか。

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