阪神は逆転V狙う気あるのか ヤクルト戦で違和感覚えた矢野監督の “消極サイ配”

ヤクルトとの首位決戦に敗れ、首をひねる阪神・矢野監督(東スポWeb)

ヤクルトがセ・首位攻防の天王山となった阪神との直接対決3連戦初戦(8日、神宮)を4―1で快勝。破竹の7連勝で優勝マジック11をついに点灯させた。このままの勢いで高津ヤクルトがゴールテープを切るのか。開幕から長く首位を独走してきた矢野阪神に大逆転Vの秘策はあるのか。ヤクルトOBで本紙評論家・伊勢孝夫氏(76)の見解は――。

【新IDアナライザー 伊勢孝夫】この試合のポイントは、ともに先頭打者を出しながら得点につなげることができなかった6、7回の阪神の攻撃だ。6回は疲れが見え始めてきたヤクルト先発・奥川から木浪が右前打を放つも、続く近本が初球に手を出して二ゴロ。甘いコースに入ってきた球ではあったし、初球に手を出す以上、一撃で仕留めてほしかった。

マルテ、糸原の安打などで二死一、三塁とした7回の場面では、島田に代えて佐藤輝を代打で使ってほしかった。スコアは1―4の3点ビハインド。試合終盤ということもあり、あの局面では一発を狙うしかない状況だ。スランプ中とはいえ、島田と佐藤輝では相手バッテリーにかかる圧力は違ってくると思うのだが…。

ヤクルトは長年の課題だった救援陣が充実している。打線も依然好調ではあるし、順当にいけばこのまま阪神を押し切ってペナントを制することができるだろう。ひとつ気がかりな点があるとすれば先発陣の疲労か。ピッチングスタッフには、コンディション管理に十分に気を払ってもらいたい。ここ数試合は中9日、8日で先発登板している奥川に関しても、これ以上登板間隔を詰める必要なないだろう。

一方で阪神は「これが優勝争いをしているチームの攻撃か」と、この日の試合をみて思ってしまった。ヤクルトと比較してボックス内で打者の気迫を感じることができない。終始覇気を欠き、シュンとしていた印象だ。残り13試合「全て勝つ」くらいの必勝態勢を見せなければ、ヤクルトを逆転することは難しいだろう。

先発の高橋が降板した後、残りの6回から8回を勝ちパターン投手でもない馬場と小林に託したのにも違和感を覚えた。点差は3点。ここはナインに『この試合は絶対に勝ち取るぞ』というメッセージを送るためにも、岩崎、スアレスを投入するべきだったのではないか。前日のDeNA戦(横浜)で、この2人を〝温存〟した理由は何だったのか…。馬場と小林は結果的に無失点のナイスリリーフをしてくれたが、その点は疑問だ。

リリーフの層に不安があるなら、西勇をブルペン待機させるのもひとつの手だ。残り試合も少なく、日程も変則気味になっていくため、先発の頭数は5枚もいれば十分だろう。西勇は走者をためた状況でも、シュート系の変化球を軸にゲッツーで打ち取る技術を持っている。2イニング程度なら抑えてくれるだろう。

最後にCSでの戦い、そして来季以降も見据え矢野監督には佐藤輝のより積極的な起用を求めたい。シーズン最終盤の優勝争いを経験させることは、彼にとって大きな糧になる。腹をくくった采配を期待したい。(本紙評論家)

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