【高校野球】武器はダルビッシュ級の回転数 名電148キロ右腕、同学年ドラ1候補に負けぬ“信念”

愛工大名電・寺嶋大希【写真:間淳】

愛工大名電の寺嶋大希の憧れは楽天・岸「投球フォームが似ていった」

伸びのある直球と、大きく曲がるスライダーの秘密は回転数にあった。今秋のドラフトは直球の最速が150キロを超える高校生右腕に注目が集まっているが、愛工大名電の寺嶋大希投手はキレで勝負し、奪三振を重ねる。直球も得意のスライダーも回転数はプロのトップレベルに達している。【間淳】

しなやかな右腕から投じられるスピンの利いた直球。体への負担が少なくバランスの取れた投球フォーム。愛工大名電・寺嶋が口にした、子どもの頃に憧れた投手の名前を聞いて納得した。

「今は楽天でプレーしている岸(孝之)投手が好きでした。憧れていたので投球フォームが似ていったのかもしれません」

高校入学当時は身長177センチ、体重67キロの“モデル体型”だった。しかし、高校2年の冬、本気でプロ野球選手になると決意。球速アップのために体重を増やし、ランニングと筋力トレーニングを強化した。長い手足はそのままに、180センチ、80キロまで体は大きくなった。

今秋のドラフト上位候補には150キロを超える右投手の名前が数多く挙がっている。世代最速の157キロをマークした明桜・風間球打投手をはじめ、市和歌山・小園健太投手や高知・森木大智投手、中京大中京・畔柳亨丞投手。寺嶋の最速は148キロと、現時点で「数字」では負けている。だが、「自分のやるべきことをやっていくだけです」と焦りや不安はない。自信が揺るがない理由は、自分の強みを分かっているからだ。

「キレのある直球と三振が取れるスライダーは同世代でも負けていないと思います。プロに入ってからも三振を取りにいくスタイルを貫きたいと思っています」

直球の1分間回転数は約2400、スライダーは2600~2700回転

寺嶋が投じる直球の最大の特徴は「伸び」。それを裏付けるのが回転数だ。プロ野球選手の直球は1分間で平均2200回転し、空振りを取れる直球は2400回転以上していると言われている。寺嶋の直球は平均で約2400回転。すでに、プロのトップレベルに達している。

得意とするスライダーの回転数も驚異的だ。1分間で平均2600~2700回転。これは昨シーズンのメジャー平均を200回転ほど上回る。メジャーでも変化の大きさが驚かれているダルビッシュ有投手のスライダーの回転数が平均2789回転だったことを考えると、いかにすごい数字なのかが分かる。

「投手をしていて1番楽しい瞬間は三振を取った時。特に低めに伸びた直球で見逃し三振を取った時が1番気持ちいいです」

三振が取れるスピンの利いた直球。打者の頭の中にはキレのあるスライダーも刻み込まれているため、直球が活きる。150キロを超えなくても、寺嶋には回転数という武器がある。(間淳 / Jun Aida)

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