岸田政権 枝野政権 国民は選択機会を逃すな

  4日発足した岸田内閣。最初に試されるのは31日の「政権選択選挙」。岸田政権か 枝野政権か 有権者は一票を投じ、選択する権利を行使し、政治参加の義務を果たそう。

 岸田総理は14日に衆院を解散、19日に公示、31日投開票を明言。選挙の勝敗ラインを「与党(自民・公明)で過半数」と低く設定した。過半数割れなら下野し、政権を譲る潔さが必要。

 総選挙の争点は岸田総理掲げる「新しい資本主義」か、立憲・枝野幸男代表が掲げる「まっとうな・憲法遵守の政治、支え合い・分かち合う社会の実現」か。

 岸田総理は8日の所信表明演説で『信頼と共感を得られる政治』を力説した。その背景を国民は踏まえなければならない。

 自公が支えた安倍・菅政権の9年間。福島第一原発事故を忘れたかのエネルギー政策の転換。専守防衛を逸脱する「敵基地攻撃能力保有」への踏み込み、岸田総理が諸々の問題にブレずに、信頼と共感を得られる政治を実現できるのか、早々に見極めなければならない。

 岸田総理は自民党総裁選では「敵基地攻撃能力の保有も有力な選択肢」としていた。しかし、8日の所信表明演説には「更なる効果的措置を含むミサイル防衛能力など」とぼかした。総選挙を睨んだ表現なのだろう。本音はかわっていないはず。

 さて、過去9年間に起きた問題を政権選択では踏まえておく必要がある。(1)民主主義の根幹でもある公文書の改ざん・隠ぺい・廃棄(2)立法府で総理自ら100回以上行った虚偽答弁=桜を見る会前夜祭に関し、ホテル発行の領収書を秘書が破棄したことも知らなかった?(3)学問の自由を脅かす日本学術会議の会員推薦に総理が任命拒否。

 (4)大企業優遇税制と富裕層優遇金融所得課税(5)所得格差の拡大(6)経団連・電事連言いなりの原発回帰(7)敵基地攻撃能力保有を見据えた防衛政策と防衛費の拡大路線。

 「政治とカネ」の問題。東京地裁は9月7日にカジノを含む統合型リゾート(IR)事業を巡り、収賄罪に問われた秋元司衆院議員(無所属)=元自民=に懲役4年、追徴金約760万円の『実刑』を言い渡した。

 丹羽敏彦裁判長は「倫理観はおろか、最低限の順法精神すら欠如している」と猛省を促した。それでも秋元被告は控訴した。

 今月6日には元自民党議員による収賄を巡る事件に、贈賄側のアキタフーズ元代表に対して東京地裁は懲役1年8か月、執行猶予4年を言い渡した。国際的な鶏飼育指針や日本政策金融公庫からの業界向け融資に便宜を図ってもらおうと元自民党組織運動本部長代理・元農林水産大臣の吉川貴盛元衆院議員=元自民=に計500万円を贈った罪に問われた。吉川元農水相は政治献金と無罪を主張。

 極めつきは参院選当選無効となった河井案里氏と夫の克行前衆院議員=元法務大臣=の選挙買収事件。案里氏は1月21日、東京地裁で懲役1年4か月、執行猶予5年の判決=確定=。克行被告は6月18日、懲役3年、追徴金130万円の実刑判決=量刑を不服として控訴=。

 河井氏側には自民党本部から選挙資金1億5000万円が提供された。自民党本部は「買収資金に使われたことはなかった」と説明するが自民党広島県連からも『国民は納得していない』と岸田総理・総裁に再調査を求めている。

 岸田総理は安倍・菅政権との違いを「信頼と共感を得られる政治にする」と力説するが、今後に向けても課題は山積している。

 岸田政権が党内3A(安倍晋三・麻生太郎・甘利明の3氏)や経団連べったりの経済政策・エネルギー政策から外れ、あるいは意向に沿わない政策を実現できるのか、疑問がある。

 仮に総選挙で与党過半数が実現したとして、例えば、株式譲渡益や配当金などで得る「金融所得課税の見直し」(現行の20%=所得税15%、住民税5%=という税率からの引き上げ)を22年度の与党税調に盛り込めるのか。

 経団連は金融所得課税見直しに「経済成長を支え国民の資産形成を支援する金融資本市場の重要性を踏まえて、投資者の資産選択に重大な影響を及ぼす懸念にも十分留意し、慎重に検討すべき」と事実上の反対を示して、強くけん制する。

 財界側エコノミストも「金融所得の強化は株価を下げ、企業収益の悪化、年金財政への悪影響の可能性」とけん制する。

 岸田総理は自民党総裁選で明確に語っていた「金融所得課税の見直し」を所信表明演説では触れることさえなかった。

 1週間持たずに後退か。テレビで「森友再調査」と言ったが、安倍元総理に会ったとたん「再調査しない」。どこまでの覚悟と責任を持って発言しているのか、『信頼と共感』を自らが早くも壊している。

 「税の不公平」を是正するための見直しは当然の話。現況をみるにつけ、岸田総理・総裁が語ったことのどこまでが具体化できるのか。税制・安保・原発・森友など諸々の積み残しにメスを入れることができるのは結局、政権交代のほか、ないのだろう。国民の選択を注視したい。(編集担当:森高龍二)

4日発足した岸田内閣。最初に試されるのが31日の「政権選択選挙」。岸田政権か 枝野政権か 有権者は一票を投じ、選択する権利を行使し、義務を果たそう

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