東京ドーム35.5個相当の巨大温泉施設も 朝鮮各地の名湯、効能に由来するユニークな名称

日本には有名な温泉地が多いが、朝鮮各地にも魅力的な温泉地が数多くある。

代表格は2020年にオープンした平安南道の陽徳温泉文化休養地。東京ドーム35.5個分に相当する166万余㎡の緑豊かな自然の敷地に大小20以上の露天風呂、室内風呂、足湯に加えて、乗馬やスキーなど様々なレジャー施設がひしめく。

平安南道の陽徳温泉文化休養地はスキー場も完備している。(朝鮮中央通信=朝鮮通信)
2020年にオープンした平安南道の陽徳温泉文化休養地 (C) 朝鮮新報

朝鮮には現在、約60の温泉地が分布されているとされ、今も各地で温泉地の開発、温泉探査(源泉調査)が推進されている。

これら温泉の特徴は効能・効果が非常に高いということだ。温泉の名称も、その効能や伝説に由来するものが多い。

黄海南道三泉郡達泉里の達泉温泉には古くから伝わる伝説がある。元来、達泉温泉は「チョンダル温泉」という名前だった。日本語で「ヒバリの温泉」を意味する。

その昔、この一帯がまだ沼地だった頃、脚を負傷した一羽のヒバリがここに降り立った。ヒバリはなかなか空に飛び立つことができなかったが、数日後には元気に羽ばたいていった。不思議に思った住民らが沼地に行ってみると、そこには熱い湯が湧き出ていたという。以来、住民らは「ヒバリが脚を治した温泉」だとして、チョンダル温泉と親しみを込めて呼び、優れた効能の泉質で心身を癒してきた。

黄海南道にはほかにも、シラサギが脚を治癒したとして「ペクロ温泉」(シラサギの温泉)と呼ばれる信川温泉、温泉地一帯に生い茂る梨の木に由来する梨木温泉などがある。道内10余カ所の温泉地はいずれもラドン温泉で、脊髄関節炎、高血圧症、神経痛、卵巣機能不全、慢性胃炎などに効く。

朝鮮の主要温泉分布図 (C)朝鮮新報

一方、平安南道陽徳郡内の温泉地は、皮膚軟化、心筋の収縮および血液循環の促進、消炎および再生の促進、胃液分泌の抑制などに効果がある。中でも石湯温泉は硫黄成分が多くラドンが極端に少ない高温泉(摂氏42度以上の温泉)で古くから皮膚疾患の治療に利用されてきた。石の隙間から温泉が湧くことから歴史的に「トル(石の朝鮮語)湯」と呼ばれ、のちに現在の「石湯」という名前になった。

平壌の西側、南浦市に位置する龍岡温泉は鉱物含有量が朝鮮で最も多い温泉の一つで、臭素イオンとヨウ素イオンなどの成分が含まれ、血圧を下げる働きや鎮静に効果があることから高血圧症患者の治療に利用されてきた。水温は45~54℃だ。開放感のある大浴場に加え、温泉付客室もありプライベートな滞在を満喫できる。

ロシアと国境を接する咸鏡北道の鏡城温泉は朝鮮で唯一の「砂湯」だ。砂湯とは、砂を噴き上げながら湯が湧く温泉のこと。鏡城温泉ではこの砂を用いた砂浴を楽しめる。高い治療効果を得られることから「砂温泉」と親しまれている。関節リウマチ、神経系疾患、不妊症などの婦人科系疾患、手術の後遺症、水銀中毒、肥満症などの治療に効果的だ。源泉の湧出口が複数あるため温泉地の規模も大きい。

平安北道の雲山温泉、朔州温泉、新温温泉、慈江道の昭武温泉は、炭酸水素塩泉、硫黄泉、ラドン温泉で、慢性胃炎をはじめとする胃腸炎や呼吸器疾患、心臓疾患などに効く。とくに雲山温泉は婦人科系疾患に特効があると広く知られている。

江原道の外金剛温泉と咸鏡南道の仁興温泉は、硫黄泉、塩化物泉、水素炭酸塩泉で、血液の循環と新陳代謝の促進に効能があることから慢性胃炎治療や神経痛の治療に良いとされる。

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