ソフトバンクの長谷川勇也外野手が引退会見後に、2011年のCS名シーンの舞台裏を「引退なので最後に」と明かした。
当時は1位・ソフトバンクと3位・西武がファイナルステージで激突。ソフトバンクの8年ぶりの日本シリーズ進出がかかっていた第3戦だった。試合は杉内(現・巨人コーチ)と涌井(現・楽天)の両先発の意地の投げ合い。9回を終えて0―0だった。
延長10回に杉内が1点を失ったが、その裏の二死二塁で涌井から起死回生の同点適時打を放ったのが長谷川だった。両先発ともが失点の悔しさにマウンドで涙した名勝負だった。長谷川は延長12回に試合を決めるサヨナラ打も放った。
現役生活で印象に残る1本として挙げた会心の一打。「今でも何であの場面で涌井投手のあんな素晴らしいボールを打つことができたのか分からないですね」。しかも、驚くべきことに当時、肩を骨折していたという。
「フェニックスリーグでの調整かな。ダイビングキャッチして、変な音がして、そこから箸が持てなくなって…」
レギュラーとしての意地があり耐えてきたが、いよいよ限界が訪れ、翌日には秋山監督(当時)にギブアップを伝えようと考えていた。そんな中での劇的一打だった。
「腹くくってやってたんですけど、今日で終わらないと明日ないなと思って。火事場のクソ力じゃないですけど、今考えても説明できないような打席でした」
鷹の打撃職人は笑みを浮かべ、感慨深く振り返っていた。