海賊対処で海外派遣の元海自隊員 休暇認められず提訴 横浜地裁

横浜地裁

 海外任務に伴う慢性的な超過勤務で休暇が取れず、精神的な苦痛を受けたとして、元海上自衛官の男性(29)が国に慰謝料など約500万円を求めて横浜地裁に提訴した。12日に第1回口頭弁論が開かれる。

 訴状によると、男性は2015年に海自に入隊。19年11月から20年6月に海賊対処の派遣行動で、アフリカ東部ソマリア沖や中東アデン湾で活動した。さらに、同8月から21年2月には中東での情報収集活動に従事した。航海中は全ての日が勤務扱いで、その分の代休が付与される。21年2月時点で、男性の保有する年次休暇は50日、代休は95日だったとしている。

 男性は帰国後に休暇の消化を申し出たが認められなかった。海自の任務に従事する限り、休暇を取る見込みは立たないとし、「このままとどまれば壊れるまで使い倒される」と主張。21年3月に海自を退職したが、同年末までに見込まれた代休が15~20日失効したなどとし、精神的な苦痛を受けたとしている。

 その上で、未消化分の休暇に相当する給与約200万円と慰謝料300万円を請求している。

 防衛省海上幕僚監部は「係争中のため、答えを差し控える」としている。

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