【大学野球】4年前の指名漏れがリスタートの日に 京産大の最速153キロ右腕が描き続ける成長曲線

京産大・北山亘基【写真:市川いずみ】

京産大・北山は京都成章高3年夏に甲子園出場、最速142キロをマーク

ドラフト上位候補に浮上している京産大・北山亘基投手は10月11日に自身“2度目”のドラフト会議を迎える。高校3年時に指名漏れを経験した最速153キロ右腕は「高校の時の方が思い入れもあってプロに行きたい気持ちだった」と振り返る。4年の時を経て変化したプロ野球の位置づけ。根底には「どこまでも成長したい」という貪欲な気持ちがあった。

プロ志望届を書くのは今回で2度目。書式は同じでも、北山の気持ちは高校時と今回では「全然違いました」という。プロの世界を目指し始めたのは京都成章高に入学して初めてキャッチボールをした時だ。「キャッチボール終わりで『お前プロ行きたいか?』って聞かれて、その時は漠然と甲子園に行きたいくらいにしか考えてなかったんで『あっ、行きたいです』くらいの気持ちで答えたら『お前やったらいける』って言われました。その瞬間から『そうなんかな』って自分に期待するようになって、プロを目指して3年間頑張ろうと思いました」。

学業はずっとオール5。真面目な北山は目標が定まると誰よりも練習に励んだ。1年夏からマウンドに立ち、3年夏にはエース兼主将として甲子園に出場。初戦で神村学園(鹿児島)にサヨナラ負けを喫するも、最速142キロをマークした。予定通りプロ志望届を提出したが「ほぼほぼ無理だなと思っていたんですけど、一応プロを目指して3年間やってきていたので、けじめをつけるためにも出そうと思っていた」と、現実味はあまりなかった。

「イベントに参加しているような感じ」で迎えた2017年ドラフト会議は指名なく終わったが、ショックは全くなかったと話す。「その日からまた頑張ろうって、気持ちを入れ直しました。中日に清水達也君(花咲徳栄)とか山本拓実君(市西宮)とか指名されましたけど、負けてる気は1ミリもなくて。現時点では負けているかもしれないけど、4年後追い付いてやるっていう気持ちでした」。2017年10月26日は北山にとってリスタートの日となった。

9月13日の神戸学院大戦で自己最速の153キロを計測

京産大では勝村法彦監督が重要視している身体の使い方を徹底的に学んだ。グラウンドだけでなく、解剖学書を自費で購入して読み込んだり、オンラインサロンで身体生理学の知識を得たりした。「正しい姿勢になれば動きもよくなる。正しい姿勢で動いたりトレーニングしたりランニングしたりっていうのを積み上げていく中で、動作の中の安定感がでてきました」と話すように、姿勢の安定がフォームを安定させコントロールや球質の向上に繋がった。

9月13日に行われた関西六大学野球秋季リーグ・神戸学院大戦では自己最速の153キロをマーク。最後のリーグ戦で3年半の成長を見せ続けているが、それに伴いプロ野球という夢の位置づけも北山の中で変化していた。「プロにはもちろん行きたいですけど、いいボールを投げたいという延長線上にプロがあるっていう感覚ですね。いい投手になりたいと頑張ってきた延長線上に今、プロの世界が見えてきたのでプロが全てっていう感覚ではなくなってきました」。

研究熱心な北山の心にあるのは「野球がうまくなりたいという純粋な気持ち」だった。それ故か、ドラフト会議が間近に迫っていても実感はまったくないという。「果てしなく成長したい気持ちなのでゴールはない」という貪欲な182センチ右腕。10月11日、北山にとっての“通過点”がやってくる。(市川いずみ / Izumi Ichikawa)

市川いずみ(いちかわ・いずみ) 京都府出身のフリーアナウンサー、関西大学卒。元山口朝日放送アナウンサー時代には高校野球の実況も担当し、最優秀新人賞を受賞。NHKワースポ×MLBの土日キャスター。学生時代はソフトボールで全国大会出場の経歴を持つ。

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