【大学野球】西武が1位指名を公表 ドラフトの目玉に挙がる西日本工大・隅田知一郎の転機と決断

西日本工大・隅田知一郎【写真:福谷佑介】

ドラフト1位候補の隅田知一郎に単独インタビュー

プロ野球ドラフト会議は10月11日に都内で開催される。西武が既に1位指名を好評した目玉の1人が、西日本工大の隅田知一郎(ちひろ)投手だ。最速150キロの真っ直ぐと6種類の変化球を操る即戦力左腕がFull-Countの独占インタビューに応じ、自身の転機などについて語った。

――ドラフトまで1週間を切りました。今の心境は?
「1週間切ったなあって感じです。ドキドキ、ワクワクもしますけど、不安もあります。そういうのを含めたら、まだ、どの気持ちが出ているわけではなく、全部一緒ぐらい。特にまだ意識はしていないです」

――注目されているという実感はありますか?
「スカウトの方々との面談でも、自分が思っている以上の評価を頂きましたし、そこに応えていくために、これからもっと頑張らなければいけないなと思っているところです」
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――面談で印象に残っている言葉はありますか?
「安定感と完成されている変化球を評価されたことです。全ての変化球をバランスよく投げられるというのは自分の武器だと思うので。同じ変化球を多投しなくてもいいくらい、色々な変化球を投げて抑えてきました」

――隅田知一郎とはどんな投手でしょう?
「チームではエースという立ち位置でずっと投げてきたので、マウンド度胸とかそういう面では全国の大学生や高校生には絶対負けないと思っています。プロに行っても、緊張はすると思うんですけど、そこまでピッチングに影響するまでではないかなと。(気持ち的には)すぐにでもプロで投げられそうな感じはあります」

――これまでの野球人生で転機になったことは?
「高校2年生の時にケガ(左肘の疲労骨折)をしたことですね。その期間はボールを投げられなかったので、走り込みをしたり、体幹をしたり。その時の取り組みが、自分にとって1番の原点かなと思います」

――実際に自身の中でプロが近付いた転機はありますか?
「いっぱいありますね。最初は自分が大学3年生の時の秋のリーグ戦前です。北九州市立大の益田武尚さん(現・東京ガス)が注目されていた時に練習試合があって、そこで益田さんと投げ合った時ですね。益田さんのことを見に来ていたスカウトの方に自分も見て頂けて、それが広く知ってもらえるキッカケになりました」

西日本工大・隅田知一郎【写真:福谷佑介】

波佐見高からなぜ全国的な知名度は高くない西工大に進学したのか?

――その他にもポイントはあった?
「その後の秋のリーグ戦では7、8球団のスカウトが見に来てくれて、150キロも出せました。あとは、今年の春のリーグ戦と神宮(全日本大学野球選手権)ですね」

――波佐見高校から、なぜ全国的にあまり知られていない西工大へ進学したのでしょう?
「高校の時にはプロは全く意識していませんでした。高校2年の時に怪我して、その2日後に声を掛けてくれたのが(西工大の)武田監督でした。進路のことは何も考えずにとりあえず夏大会でマウンドに戻りたい気持ちと、甲子園に行きたいということだけ考えてやっていきました。そうしたら、夏の大会で投げることが出来て、甲子園にも行けました。甲子園の後には、大学や社会人から色々と誘いは頂きましたが、最初に声をかけてもらった西工大で頑張ろうと思いました。(早い段階で決まったので)進路の心配をすることなく高校野球に打ち込めました」

――甲子園に出てプロへの意識は芽生えませんでしたか?
「自分たちの代は“清宮世代”なので。甲子園の最多本塁打記録も更新した選手(中村奨成、現広島)のいる世代で、凄い選手ばかりでした。甲子園で、これが全国レベルかと感じたので、大学で頑張ろうと思いましたね」

――プロを意識するようになったのはいつからですか?
「大学に入ってからですね。武田監督にずっと『お前はプロに行け』と言われて。『プロに行ける』とかではなく『行け』と(笑い)。そう言われて、徐々に意識するようになりましたね」

――それまでは大学で野球を続けよう、くらいの気持ちだった?
「そうですね。西工大は就職率がいいので、それも含めての進学でした。プロが無理だったら、就職するつもりです」

――武田監督に「プロに行け」と言われた時、実際どう感じましたか?
「1年春からもう試合に出してもらっていました。先輩たちの足を引っ張るわけにはいかないですし、自分が成長しないと勝てないとずっと言われ、自分でもそう思ったので、そういう気持ちでずっとやっていました」

――チームを勝たせるためにプロに行けるような投手にならなきゃいけないと?
「はい。人より努力しろとずっと言われてきました。継続力はあると思います。やると決めたことは、ずっとやれるので。コロナが流行する前は、寮からグラウンドまでの5.5キロを毎日走って行って、走って帰ってきていました。練習でもランニングメニューがあるので1日15キロくらい走っていました」

――地道なトレーニングが下半身を強くした。
「めちゃくちゃ強いわけではないですけど、前の自分に比べたら強くなったと思います。握力とかも弱いんですよ。左は50キロもないですし。手術しているので左は少し弱くて、右の方が強いです」

177センチ、76キロの体格でも最速150キロ「投げ方をわかっているからですかね」

――177センチ、76キロと大きくない中で150キロを投げられるのはどこに秘訣があるのでしょう?
「投げ方を分かっているからですかね。高校から継続して取り組んでいることが、高校の時は意識しながらやっていて、大学ではそれが無意識に出来るようになったからだと思います」

――具体的にどんな意識を持ってやってきたのですか?
「始動して着地するまでの間の取り方、体重移動の比率とタイミングですね。昔は下半身の弱さが悩みでした。力をグッと溜めて、足で蹴ってヒップファーストで前に流れていくんですが、下半身が弱いとゆっくりと前にいくことができないんですよ。下半身強化しながらフォームに繋げるみたいなトレーニングをずっとしてきました。右足は地面に着いているけど、身体はまだ後ろにあるみたいな。それが下半身の弱い高校生だったらできないんです」

――まだ自分の中で伸びしろを感じている?
「感じますね。ウエートトレーニングを冬しかしないんですよ。それも下半身だけです。あとは自重トレーニングとランニングだけでした。プロに行ったら、専門的なウエートトレーニングも入ってくると思うので、もっとパワーはつくんじゃないかなと思います」

――これまでウエートトレーニングやって来なかったのには理由が?
「自分の中で無知だし、合わないんじゃないかというのがあったので。プロに行って、正しいトレーニングを合うのか合わないのか見てもらって、合うのであればやってみたいなと。それが上手くいけば、もっと速くなるんじゃないかと思います」

――球速の理想はありますか?
「154、155キロが出せたら、理想なんじゃないですかね。(楽天の)早川さんが155キロだったので。早川さんも細いですよね。自分もそっちの系統なので。地面からパワーを貰ってボールに伝えるというところは一緒なんで、楽に投げてあれくらい投げられたらいいなと思います」

【ブルペン動画】斬れ味鋭いボールを間近で! 隅田知一郎投手のブルペン投球映像

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(上杉あずさ / Azusa Uesugi)

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