【大学野球】捨てた奪三振、大学4年で目覚ましい成長 日大152キロ右腕が迎える2度目のドラフト

日大・赤星優志【写真提供:日大硬式野球部】

6人きょうだいの末っ子、高校3年で最速145kmマークも指名漏れ

この春、急激にスカウトの評価を上げた選手がいる。日大の右腕・赤星優志投手だ。最速152キロの直球と多彩な変化球を武器に東都大学野球2部春季リーグ優勝と、入れ替え戦制覇に貢献。日大を4年ぶり1部昇格に導いた。日大鶴ケ丘高3年時代にプロ志望届を提出するも指名漏れ。4年越しのプロへの挑戦は「できることは全てやってきた」と、当時とは違う確かな手応えを感じている。

6人きょうだいの末っ子として生まれ、2人の兄の影響で小学1年時に野球を始めた。テレビに映るプロ野球選手に憧れたが、兄2人、姉3人との“テレビ争奪戦”に勝てるはずもなく、野球中継を見たくても見られない日々だった。贔屓球団はなかったが、漠然とプロ野球選手になりたいと思うようになった。

プロを本格的に意識したのは、日大鶴ケ丘高3年の春だった。中学時代は投手と遊撃を兼任していたが、高校に入り投手に専念。3年春には145キロを計測した。ただ、志望届を提出したが、プロに行ける自信があったわけではなかった。「なんとなく厳しいかなとは感じでいました」。結果は指名漏れ。「悔しさよりも、『まあ、そうだろうな』といった納得の気持ちの方が大きかったですね」と振り返った。

納得する一方で、プロへの思いは余計に強くなった。日大進学後は4年後のドラフト指名だけを考えて練習に取り組んだ。高校時代には取り入れていなかったウエートトレーニングで下半身を強化し、3年秋には東都2部開幕戦の青学大戦で自己最速の152キロを計測した。このシーズンは5試合に登板して3勝1敗、防御率3.38の成績で先発に定着したが、課題も見つかったという。

「先発として大事なのは長いイニングを投げること」

「どうしても後半に打たれてしまうんですよね」。皮肉にも三振を奪うことが原因の一つだと気づいた。奪三振は投手の醍醐味だが、どうしても球数が増えてしまい、終盤にバテてしまう傾向があった。そこで、奪三振へのこだわりを捨てた。「先発として大事なのは長いイニングを投げることなので。三振を取りたいというのはありますけど、打たせて取ることを意識するようになりました」

強化したのがツーシームやカットボール。カーブやスライダーなどを投げる際に腕の振りが緩む癖があったが、ツーシームやカットボールではそれが解消されることにも気づいた。「これは武器になる」と確信した。

そこから赤星は目覚ましい活躍を見せることになる。4年春には主戦投手として2部リーグで3勝1敗、防御率0.78をマークして最優秀選手賞を受賞。3校総当たりで実施された入れ替戦では東洋大を相手に1失点完投、翌日の立正大戦でも救援で勝利投手になり、1部昇格に導いた。そして、現在実施中の秋季リーグは1部初登板となった国学院大戦で123球3奪三振、翌週の中大戦で113球8奪三振で2試合連続完封。打たせて取る投球を心掛け、スタミナ切れすることなく9イニングを投げ切った。

本人も高校の時とは違う手応えを感じている。「できることは全てやってきたので、あとは自信を持って待つだけです。プロに入っても今の投球スタイルを変えずにやっていけたらと思います」。高校時代の迷いはもうない。新たな武器を手に入れ、自信を持って11日のドラフト会議を迎える。

◯赤星優志(あかほし・ゆうじ)
1999年7月2日、東京都世田谷区生まれ。小学1年生から兄の影響で野球を始め、中学時代は軟式野球チーム「上馬シニア」に所属。日大鶴ケ丘高3年時には145キロを計測し、プロ野球志望届を提出するも指名漏れ。日大スポーツ科学部に進学し3年秋から先発として登板、4年春には2部リーグで3勝1敗、防御率0.78の成績を収め、1部昇格に貢献。秋は1部初登板から、2戦連続で完封勝利を収めた。最速152キロ。身長176センチ、体重80キロ。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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