【インタビュー】園子温監督、「僕が集中治療室にいた時にニコラス・ケイジが心配してくれて…」ハリウッドデビュー作誕生秘話明かす

『愛のむきだし』(08)、『冷たい熱帯魚』(10)、『ヒミズ』(11)、『新宿スワン』(15)と次々に話題作を世に送り出してきた園子温監督の最新作『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』は、監督自身初のハリウッドデビュー作だ。2019年に心筋梗塞で倒れるも復活、主演のニコラス・ケイジの協力を得て完成させたという本作について話を聞いた。

―まるでおもちゃ箱をひっくり返したような楽しい作品でした。どういう経緯で映画化に至ったのでしょうか?

4年ほど前に脚本が送られてきたんです。もともと、僕は『愛のむきだし』(08)という映画を撮る前から何度かロサンゼルスに行って、ハリウッド映画を撮るための(自分の)プロモーションを始めたんです。2005~6年くらいですね。その頃からゆくゆくはハリウッドで映画を撮りたいと思っていて、いろいろな人に会わせてもらってたんです。

―ずいぶん前からだったのですね。

だいぶ前からこういう計画をしていたんですが、その頃はまったく上手くはいかず、帰ってきて『愛のむきだし』を撮ったりしました。なので、正直なところ送られてきた脚本は読まなくても引き受けようと思いました。万が一、読んでダメな内容でも、後でなんとかなるだろう、面白くすればいいだろうという勢いで(笑)。それで、すぐOKしました。

―主演のニコラス・ケイジも決まっていたのですか?

その時は、ニコラス・ケイジは決まっていなかったのですが、あとからニコラス・ケイジに決まったと聞いて。今から2年前、撮影が始まる1年くらい前にニコラス・ケイジと新宿で待ち合わせをしました。「君の『アンチポルノ』(16)に超感動しちゃったよ!」「出るのが当たり前」だと(笑)。それで一緒にやろうということになったけれど、その後僕が心筋梗塞で倒れてしまったんです。

―その時期だったのですね。

それまではメキシコが舞台のマカロニ・ウエスタンみたいなものにしようと思っていたのですが、僕が集中治療室にいた時にニコラス・ケイジが心配してくれて。「メキシコで撮るのは大変だから、日本で撮ろうよ」と言い出して。いい奴なんですよ。でも僕はハリウッドの最初の1本目を彦根で撮ることになるなんて、最初はちょっと嫌だなと(笑)。

―ただ、おかげでエキゾチックな作風になりましたよね?

気心の知れた今までのスタッフに囲まれて撮ることができて、そういう良さもありました。でも、これはアメリカ映画なので、向こうの観客に向けてまず作る映画でもあるわけです。となれば、日本を舞台にしていても、彼らからすればファンタスティックな感じになると思うことにしました。それが撮影地を日本に決意した一番の理由です。まさに向こうのマカロニ・ウエスタンも混ざるわの、ごった煮ワールドにしてしまえば、日本人が観ても気が触れた世界観になって、この世にはないパラレルワールドのどこかという設定になるなと。明治維新がなくてそのまま江戸が続いて、最新の技術があるが、でもみんなちょんまげをしているみたいな。そういう感じで始まりましたね。

―話が戻りますが、ニコラスさんとはなぜ新宿で?

彼は東京に用事があって、撮影前に会いたいとうことでついでに新宿で会いました。それでゴールデン街に行ってふたりで飲み、仲良くなったんです。彼は本当にスターという感じではなく、ボディガードも一切いないし、僕ともうひとりくらいで飲んで。ラフですね。まさか(撮影で)自分のフィアンセまで見つけて帰るとは思っていなかったですね(笑)。映画にちょっと出ていますけど。

―どういう方なのですか?

巨匠然としない人ですね。撮影が日本のノリなので、「夜中になってもいいじゃん!」みたいな感じは、アメリカだったら絶対許されない。それも何も不平不満も言わず、やっていました。撮影が終われば、日本の役者スタッフと居酒屋へ行って、彦根の安い居酒屋で一緒に飲みましたね。

―今でも交流が?

そうですね。よくLINEをしています。でもLINEでは映画の話はしないですね。「最近何している?」みたいな。友だちです(笑)。早く東京で酒が飲みたいとか、そういう話しかしていないかな。あとは彼女とのいちゃいちゃした写真を送ってきて「今ハッピーだぜ!」みたいな内容ですね。

―最後に映画を待っている方へメッセージをお願いいたします!

これは一般の人向け映画です。普段映画を観ない人が観て楽しむ映画だと思うんですよね。一年に1本も観ない人でも楽しめるはずです。人を選ばない映画だと思っていて、小さい子からおじいちゃんまで、家族で観にいっていただければと思っています。

『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』

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