脱プラになって万引きが増えた?スーパーで万引き犯と目が合った日の話(つづき)

By 「ニューヨーク直行便」安部かすみ

(c) Kasumi Abe

この記事を出すタイミングを伺っているうちに下書きフォルダーにずっと入っていたのですが、昨日ヤフーニュース個人にアップした記事に関連しているので、この機会にアップしようと思います。

2020年秋、スーパーで万引き犯と目が合った日の話。

プラスチックの買い物袋が有料化になって、万引きが増えたのでは?について、以前このようなオーサーコメントをYahooニュースでしました。
オーサーコメント

このコメントでも触れましたが、実際にスーパーでビール瓶をポケットに入れて、出口で見つかっている人を見ました。また最近、いろんな大型リテール店に行くと、出口に2人くらいスタッフが立っていて「なに?ご丁寧にお見送り?」と思っていたけど、あれ違ったんですよね。

このトピックが久しぶりに気になったのは、週末ちょっと興味深いことが起こったからです。

週末のまとめの食料品買い出しに、近所のスーパーに行きました。買い物をしていたら、フワ〜と視界に見えたのです。盗んでいる人が!少し離れたビールコーナーで、ビール瓶を自分の袋(エコバッグと言うにはとても汚い、使い古された袋)に入れているおじさんを。70代ぐらいの方でした。

あぁいうのは、見なくても目に入ってくるもんなんですね。

私、自然とそのおじさんをジーと見てしまった。しばらく。そしたらおじさんがギョロッとした目で私を見て、こう言いました。「あなたは息子か誰かを探してるの?」私は「いいえ」と返したら、おじさんが「そうなのですね、さっきスケートボードで走ってる小さい男の子がいたんだよね。だから探しているのかと思った」とのこと。

でも、この会話とてもおかしいです。

そもそも、小さい男の子はその辺にはどこにもいなかった。もし私がその男の子を探していても、おじさんをジッと見る理由には繋がりません。

「このおじさんは常習だ」と直感で思いました。

私は顔を覚えられたら面倒なので、そのおじさんとの会話はそれで終え、もうこれは考えなしで、すぐさま近くの店員さんのところに行き、見たものをそのまま伝えました。

「誰かがビールを盗みました。そこのコーナーにいる人です」と。そして「私、あまりこういう(チクルような)ことしたくないんです。私が見たと伝えないでほしい」と伝えました。

店員さんははもちろんわかった、と言ってそのおじさんの顔を確認しに行き、「あぁ(またいつものあの人だ)」という顔をして、私にお礼を告げ、同僚?上司?に報告に行きました。

私はそもそもこういう非生産的なゴタゴタに時間を取られたくないし、おじさんに顔を覚えられて恨まれるのは嫌なので、私にとってまったくいい経験ではありませんでした。

でもその後この経験を思い返してみて、あのおじさんて、いつもそういうことしている人生なんだなと思ったら、少しかわいそうになりました。だって、どこか後ろめたい気持ちで店に行ったり(窃盗は慣れているのであれば後ろめたい気持ちもないかもだけど)、「あ、またあいつがきたから見張ろう」と思われる生活や人生なんて全然ハッピーじゃない。

補足すると、ニューヨークは税金が高い分、低所得者はフードスタンプというスーパーで使えるチケットを配給してもらっているんです。また定期的にフードの配給もあります。コロナ禍になって長蛇の列ができています。無料のフードをもらうのはIDとか必要なくて、『誰でも』(外国人の私でも)もらおうと思ったら食料をタダでもらえます。つまりNYでは餓死が起こりにくいシステムだし、お金がなくても指定の店で「買える」システムになっています。

でも、、、配給品に、流石に嗜好品は含まれないんですよね。だから吸い殻のタバコを拾って吸っている人をよく見るしあのおじさんみたいに、ビールを飲みたかったら盗むしかないのでしょう。(そもそもそんな高くないんですけどね)

ま、とにかくあのおじさんの行動を思い返しながら、学んだわけです。外国人の私でも、コロナ禍で配給所に並ぶことなく生活できてるって、なんてラッキーだろう。普段、贅沢はしていないけど、外食したかったら外食できて、スーパーで好きなものを買えるし、なんて自分は恵まれているんだろう、と教えてもらえたわけです。

あのおじさんがもう一つ教えてくれたのは、やはり犯罪には注意しようと。あのような方は、普通の人に比べると、犯罪をするしないの判断ネジが、普通の人と比べて1つも2つもゆるい。例えば、盗む生活が当然になると、お金払って物を買うのは馬鹿らしくなります。そうしたらエスカレートして、別の犯罪も普通になってしまう。私は普段あまり考えもしなかったけど、窃盗とかスリとか、ニューヨークは2000年代以降、ヨーロッパなどに比べて少なかったわけですが、今後は気をつけなければと改めて思いました。あのようなおじさんが、次はいつ強盗犯になるかもわからないし(私は一度、以前の自宅に強盗に入られた経験あり)、治安悪化のニューヨークで、さらに身を引き締めて気をつけようと思ったのでした。

あと最後に、、、

たまに子連れの若いお母さんも、バッグに商品を入れている人を見かけます。支払っているのかいないのか不明ですが。子連れの若い白人の母親なんて、店側からすると「ノーマーク」です。

日本でも外国人というだけで、警察に突然路上で事情聴取を受けたりと同様のことが起こっているが、アメリカでも同様のことが起こっています。つまり人種、性別、格好など「見た目」により「そのような(犯罪しそうな)人」という烙印を押されマークされ取り調べが起こることがよくあるのです(Stop-and-frisk=ストップ・アンド・フリスクと言われるものです。レイシャルプロファイリングは許されることではありません)。

これも悲しきかな、アメリカの現実。

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