半導体をさらに進化させるEUV(極端紫外線)って何?需要拡大で注目される企業をピックアップ

デジタルトランスフォーメーションや5G など最新のテクノロジーを支えているのは半導体の高性能化です。特にDRAMや演算処理を行うプロセッサは微細化が進み、高性能化が著しくなっています。

1962年にシリコンウエハーという金属の円盤の上にトランジスタを形成する技術が確立されてから約60年が経ちましたが、この間半導体の微細化を可能にし高性能化を牽引してきたのが、微細な回路パターンをシリコンウエハー上に転写する先端露光技術です。


##EUVの波長はエックス線並み
露光とはフォトマスクに書かれた半導体回路パターンをレーザー光線とレンズを使って4分の1程度に縮小してシリコンウエハーに転写することです。微細な半導体回路パターンを転写するには短い波長の光線を使う必要があり、半導体の高性能化は使用するレーザー光線の短波長化によって成し遂げられてきたといっても過言ではありません。

当初、先端露光プロセスに使われた光線は、水銀ライトを光源にするg線やi線でしたが、1990年代に入るとプラズマでレーザー光を発生させるKrFエキシマレーザーの取って代わり、2000年に入ってからは、同じエキシマレーザーでも波長の短いArFエキシマレーザーが使われました。

その後は新たな光線の開発が停滞し、ArFエキシマレーザーが20年近く最先端露光プロセスで使われました。レーザーの波長が変わらなくとも工夫することで微細化をして、半導体は高性能化しましたが、線幅が10ナノメートル(1ナノメートルは10億文の1メートル)以下になるとArFエキシマレーザーではうまく加工できなくなり、もっと短い波長のレーザーが必要となりました。そうしたタイミングで使われるようになったのがEUV(極端紫外線)です。

EUVの波長は13.5ナノメートルでほぼエックス線と同じです。ArFエキシマレーザーの14分の1です。したがって、EUVを使えば今までの限界を打ち破れます。

EUVが半導体産業成長のドライバーに

iphone13のプロセッサは線幅5ナノメートルの技術で作られています。これが2024年には2ナノメートルの生産が始まります。そして、2030年までには1ナノメートル台まで微細化が進むというのが半導体業界としての技術ロードマップです。1ナノメートルというと、髪の毛の5万分の1、コロナウィルスの百分の1、そして、ほぼ原子10個分です。こうした極限的な微細加工を可能にするのがEUVです。

残念ながら、EUV露光装置そのものは、オランダのASMLが独占しています。しかし、露光装置とセットで使われる製造装置や検査装置、そして、部材については日本メーカーが高いシェアを持っています。

東京エレクトロンはEUV用の感光性樹脂、フォトレジストをシリコンウエハー上に塗布し現像するコーターデベロッパーで市場を独占しているほか、レーザーテックは、世界で唯一、EUVを使ってフォトマスクの欠陥を検査する装置を販売しています。このフォトマスク欠陥検査装置は高い評価を獲得しており、受注が急増しています。

フォトマスクの基材となる金属膜付きガラス、マスクブランクスについては、HOYAがシェア8割を握り、主要な半導体メーカーを顧客としており、残りの2割のシェアを持つAGCも好調です。EUVプロセスで使われる感光性樹脂、フォトレジストについても、日本の3社、JSR、東京応化工業、信越化学の寡占となっています。

このほかにも、世界で唯一、EUV用防塵カバー(ペリクルと呼ばれます)を量産している三井化学、EUVプロセスでフォトレジストとセットで使われるメタルマスクが好調なアルバックが関連銘柄として挙げられます。

EUVは半導体産業の成長ドライバーであり、今後、EUVで作られた半導体が世界に劇的な変化をもたらします。スマホやパソコンがさらに高性能化するほか、自動運転から宇宙開発までEUVを使って作られた半導体が重要な役割を果たすことは間違いありません。EUV関連銘柄への期待は大きく、金利上昇などで一時的に株価が調整しても、中長期的に上昇トレンドが続くと考えます。

<文:投資調査部 斎藤和嘉>

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