読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、58歳の夫と持ち家で二人暮らしの53歳の女性。離れて暮らす子どもたちのそばに住みたいと考えているものの、持ち家は売却するべきか、賃貸に出すべきか? また、引越し後の家は購入すべきか、賃貸にすべきでしょうか? FPの飯田道子氏がお答えします。
私(53歳)は去年早期退職して、現在はパートで復帰し、手取りで15万円ほど。夫(58歳)は自営業で収入が10〜45万円と不安定、最近体調を崩し60歳まで働けるか不安です。
コロナで県外移動が困難になり、定年後のサポートをしたり受けたりの利便性を考え、子どもたちの近くに引っ越しをしたい気持ちが強くなりました。子ども達は県外から戻る気持ちがありません。10年ほど先のことになりますが、現在の持ち家の取り扱いと新しい住居の選び方に悩んでいます。
現在の家は私達夫婦で購入したものです。不動産会社に依頼し賃貸にするか売るつもりです。相場はサイトで調べると1,000〜1,500万円ぐらいですが、売る頃には1,000万円以下かなと考えています。
自宅で住み続ければ住居費用はかかりませんが、引っ越し後は賃貸または購入ならどの程度の金額まで可能でしょうか? 現在の家は、売却と賃貸に出すのはどちらがよいでしょうか?
【相談者プロフィール】
・女性、53歳、パート・アルバイト、既婚
・家族について:
夫(58歳、同居)、別居の子ども2人(31歳、29歳)
・住居の形態:持ち家(戸建て・三重県)
・毎月の世帯の手取り金額:25〜60万円
・ボーナスの有無:なし
・毎月の世帯の支出の目安:平均約25万円
【毎月の支出の内訳】
・食費:8万円
・水道光熱費:1万5,000円
・保険料:7万円
・通信費:1万円
・その他:10万円
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:10万円(平均)
・現在の貯金総額(投資分は含まない):3,500万円
(両親から計2000万円相続済み、退職金約900万円受け取り済み)
・現在の投資総額:200万円
・現在の負債総額:なし(住宅ローンは繰り上げ返済で完済済み、市内で敷地面積70坪、建坪60坪、6LDK、半二世帯住宅、築15年)
・老後資金:公的年金は夫婦で年間総額200万円の予定
・個人年金:毎月3万円を10年間
※相談内容は一部編集させていただきました。
飯田:今回は、定年後の利便性やサポートを受けることを考慮して、引っ越しを考えている相談者様です。10年先を目途にしているようですが、現在の持ち家を売却または賃貸に出すことを考えているとのこと。引っ越しした後は、賃貸で暮らすのと、購入して暮らすのではどちらが良いのかも気になるようです。また、賃貸の場合、家賃として、いくらまで捻出できるのかも知りたいようです。相談者様の場合、賃貸と購入のどちらが良いのでしょうか? また、考えて欲しい注意点についてもお話します。
現在の家は売ったほうが良いか、賃貸に出したほうがいいか?
まず、現在の家をどうするかというご質問についてですが、賃貸に出すよりも、売った方が良いでしょう。立地や物件そのものを見ていないので、一般的な話になりますが、立地によって借り手がつかないことがあります。また、管理を自分たちでやるのは大変ですし、管理を委託すると、その分のコストがかかります。管理委託料のほか、貸し出す際の修繕費、固定資産税もかかります。売却してしまえば、相続もシンプルですので、賃貸に出すという選択肢は、あまりおすすめできません。
今から生活コストが抑えられれば今後の暮らしは楽になる
現在の毎月の支出は平均25万円、年間で300万円の支出になることがわかります。ただし、毎月の支出の内訳を合計すると、27万5,000円になっています。変動費や使途不明金には注意してください。
一方の収入を考えてみましょう。年金受給時になると、年金200万円と個人年金月額3万円を10年間受け取ることができます。個人年金受給時の年収は、236万円。10年経過すると200万円の収入となります。
単純にこの数字だけを比べると、明らかに支出がオーバーしているのですが、毎月の貯蓄額は平均10万円ですので、実質の支出は月額15万円です。年間の支出額は180万円ですので、シミュレーション上では、このままの生活を続けていても暮らしていけることになります。
ただし、気になるのが食費8万円、保険料7万円、その他10万円です。食費には外食費も含まれているのだと思いますが、夫婦2人にしては多いですね。外食をしても、2万円くらいは節約できるのではないでしょうか? 保険料は、今だけの金額だと思いますが、医療保険に加入していないときには、新たに加入を検討することをお勧めします。その他の中には、無駄遣いがないか、必ず見直しをしてください。
この3項目の支出が減れば、その分、生活は楽になります。今から生活コストを抑えるよう、準備しておくと良いでしょう。
賃貸なら、7万円くらいまでOK?
ご主人は体調を崩しぎみとのことで、今後の収入が増えることは難しいと思います。そのため、できるだけ支出が増えないような形で暮らすのが一番です。
自宅を売却した場合、手元に1,000万円増えることになりますので、現在の預貯金3,500万円と投資額200万円とあわせて、4,700万円が手元に残ることになります。もし、賃貸で暮らした場合、立地にもよりますが2DKもしくは2LDK、50㎡以上の賃貸物件の場合、6~7万円程度見込んでおけば、借りられる物件はあるようです。
その場合、生活費は年金から捻出し、家賃は預貯金を切り崩すと、月額7万円、30年間の支出は、2,520万円です。手元には2,000万円強、残る計算になります。また、7万円は多めに見積もった金額ですので、実際は、もう少しゆとりがある生活になると思われます。
購入する場合には、物件の価格にもよりますが、概算ですが、同じ地域の中古マンションの場合、諸経費込みで2,500万円程度は必要になります。購入した場合は、ランニングコストとして、管理費、修繕積立金、固定資産税、都市計画税もかかるため、賃貸に比べてコストは多くかかってしまいます。
賃貸・購入、どちらでもOK。ただし誤差やタイミングに注意
現在の見込みになっている年金、預貯金、支出等を総合して考えていくと、賃貸で暮らしても持ち家を購入して暮らしても、どちらでもいいでしょう。ただし、正確なエリアではありませんので、誤差が生じてしまうのは明らかです。
賃貸で暮らす、持ち家を購入して暮らすにしても、エリアや最寄り駅、間取りなどを絞り込んでいき、実際に足を運んで住まいを見極めることが大切です。10年先が目安となると、今と状況も大きく変わってしまうことも考えられます。動向は、ゆったりとチェックしてください。
また、ご主人が60歳、それ以前の年齢でリタイアしてしまったときには、収入は相談者様の収入のみになってしまうため、不足分を預貯金から補う形になってしまいます。その場合は、相談者様のパート収入15万円のみになりますので、節約は必須です。是非、この機会に支出の見直しをして欲しいと思います。
頂いたデータではご主人の細かい体調のことなどは分かりませんが、落ち着いたら、心身の安定・体調管理の一環として、働いても良いでしょう。
10年先は長いようであっと言う間です。どこで、どのように暮らすのかをイメージしながら、住まいを選んでください。