予選レコード更新のシェドンが復活の連勝劇で通算50勝。ターキントンも60勝到達/BTCC第9戦

 10月9~10日にイギリス・ドニントンパークで開催された2021年のBTCCイギリス・ツーリングカー選手権第9戦は、今季から名門チーム・ダイナミクスに復帰を果たした3冠王者ゴードン・シェドン(FK8型ホンダ・シビック・タイプR)が、予選ラップレコードを更新してのポールポジションを獲得。そして日曜もレース1をポール・トゥ・ウイン、サクセスバラスト満載のレース2でもペナルティ絡みで連勝を記録するなど、キャリア通算50勝に到達して古巣復帰後の初勝利を華々しく飾る結果となった。

 また、シーズン残り2戦でタイトル争いに喰い下がりたい古豪ウエスト・サリー・レーシング(WSR)の4冠王者コリン・ターキントン(BMW330i M-Sport/WSR)も、リバースポールの好機を活かしてレース3を制し通算60勝の節目に乗せるなど、メモリアルな週末になると同時に最終戦に向け熾烈なバトルが続いている。

 2022年本格導入を予定する共通ハイブリッド機構搭載のテストカー『トヨタ・カローラBTCC(現『トヨタ・カローラGR Sport』)』の実戦登場に沸いた第8戦シルバーストンに続き、2021年のBTCCも残すは2戦。このドニントンで最後から2番目のレースウイークエンドを迎えた。

 その公式練習からアダム・モーガン(BMW330i M-Sport/カー・ゴッツ・ウィズ・シシリー・モータースポーツ)やジェイソン・プラト(ヴォクスホール・アストラBTCC/エイドリアン・フラックス・ウィズ・パワー・マックスド・レーシング)など、駆動方式を問わず最速の座が入れ替わる混戦模様を呈すると、予選ではQ1セッションで全体5番手としていた“フラッシュ”ことシェドンが躍進を見せる。

 今季序盤のスネッタートンでは最速タイムを記録しながら、ペナルティで順位を失っていたベテランは、Q2で1分09秒501とラップレコードを更新する驚異的タイムを刻み、2番手ダン・ロイド(ヴォクスホール・アストラBTCC/エイドリアン・フラックス・ウィズ・パワー・マックスド・レーシング)とプラト、2台のファクトリー・ヴォクスホールを従えて逆襲の狼煙を上げる最前列確保となった。

「BTCC復帰後もトリッキーな数ラウンドが続いたが、すべてがうまくいけば僕らはこの位置に来られることを確信していた」と、久々にシビックとの“定位置”に戻ったシェドン。「クルマは望む反応を示し、最初はQ2進出のため、もうひとつはポール獲得のため2回のフライングラップを決めることができた。高揚感を覚えるこの新フォーマットは気に入ったよ(笑)。多少の重りはあるがフィーリングは良いので、明日は栄光を掴むためにすべてを賭けようと思う」

 2021年もハルフォーズ・レーシング・ウィズ・カタクリーンとして参戦する、かつてのホンダ系ファクトリーチームは、明けた日曜最初のヒートから力強いレース運びを披露。シェドンはターン1へホールショットを決め、好スタートの後続ロイドをも抑え込んでいく。

予選ラップレコードを更新してのポールポジション獲得となったゴードン・シェドン(FK8型ホンダ・シビック・タイプR)が、レース1の主導権を奪っていく
週末最初のFPで最速を記録したアダム・モーガン(BMW330i M-Sport/Car Gods with Ciceley Motorsport)は、レース1序盤の多重クラッシュで戦列を去る
2台ともに予選好調だったファクトリー・ヴォクスホール勢は、ダン・ロイド(ヴォクスホール・アストラBTCC/Adrian Flux with Power Maxed Racing)が2位表彰台に喰い込んだ

■「この週末のシビックは素晴らしかった」と連勝のシェドン 

 一方、前戦で連勝劇を飾ったロリー・ブッチャー(トヨタ・カローラGRスポーツ/TOYOTA GAZOO Racing UK)と、セナ・プロクター(FK8型ホンダ・シビック・タイプR/BTC Racing)に立て続けにパスされた3番手発進プラトが大きくポジションを落とすなか、続く3周目のオールドヘアピンではジェイク・ヒル(フォード・フォーカスST/MBモータースポーツ・アクセラレーテッド・バイ・ブルースクエア)と、その僚友オリー・ジャクソン、そしてBMWのモーガンらが絡む多重クラッシュが発生し、早くもセーフティカー(SC)が導入される。

 しかし、7周目のリスタートでも2番手ロイドにチャンスは訪れず、19周のチェッカーまで1.311秒差のマージンを維持したシェドンが待望の今季初勝利。BTCC復帰後初のポディウム頂上へと登壇することになった。

 続くレース2でも好調シェドンは衰え知らずのドライビングを披露し、スタートでブッチャーのカローラに奪われたリードを2周目には奪還。サクセスウエイトが載ったシビックが強さを見せつける。さらに後方11番手からは、トム・イングラム(ヒュンダイi30ファストバック Nパフォーマンス/ギンスターズ・エクセラー8・ウィズ・トレードプライイスカーズ・ドットコム)が驚異の巻き返しを見せ、オープニングラップからトップ6入りを果たすと、勢いそのままに首位シェドンに仕掛けていく。

 10周目の攻防劇でコピスコーナーのインに飛び込んだヒュンダイだったが、「不当な“プッシュ・トゥ・パス”利用によるアドバンテージを得た」としてレース後にペナルティ対象となり、最終的に2位降格のイングラム、3位ブッチャーを従えて「どちらのレースも“圧勝”とはいかなかったが、この週末のシビックは素晴らしかった」と語ったシェドンが通算49勝、そして50勝目と連勝を飾る結果となった。

 続いてリバースグリッド採用のレース3は、最前列発進のファクトリーBMWがヒルのフォードと好調エイデン・モファット(インフィニティQ50BTCC/レーザーツールズ・レーシング)を抑えて最初にゴールラインを通過し、ターキントンがBTCC通算60勝目に達する節目の勝利を記録。

 その一方で、この週末の3ヒートをそれぞれ7位、4位、8位で終えた選手権リーダーのアシュリー・サットン(インフィニティQ50BTCC/レーザーツールズ・レーシング)は「計り知れないプレッシャーだが、僕らは『あと6レース、この週末を終えればあと3レース』と、すべてで“正しいドライブ”をするだけ」と、32点の大量マージンを抱えて10月23~24日の最終戦ブランズハッチ“GPレイアウト”での勝負に臨むこととなった。

レース2のスタートで一時首位を奪ったロリー・ブッチャー(トヨタ・カローラGR Sport/TOYOTA GAZOO Racing UK)は、3位、3位、4位と安定した速さを披露した
最終戦を前に32点の大量マージンを築いた選手権リーダーのアシュリー・サットン(インフィニティQ50BTCC/Laser Tools Racing)
レース3の勝利で通算60勝とし、タイトル戦線に残った4冠王者コリン・ターキントン(BMW330i M-Sport/WSR)。ランク上位5名にタイトルの可能性が残る

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