湖ごとに特色ある風景が広がる三方五湖の湖畔…ゆったりサイクリングのススメ【ふくいのそと遊び】

湖ごとに異なる表情を見せる風景。晴れた日にゆっくりとペダルを漕いでみては。

  ここ数年、日本全国でサイクリングを楽しむ方々が増えてきました。現在までですと「スポーツ」「健康維持」等を目的として親しまれている方々が多かったですが、最近では「エネルギー問題」「SDGs」を意識した、『自然に優しい移動手段』として、地方自治体が率先してサイクリングの推進に取り組んでいます。また、近年では海外からの旅行者を意識し、外国人に優しいサイクリングコース「ナショナルサイクルルート認定」を目指し、活動されている地域も多いようです。まさに福井県も若狭路コースを認定してもらうべく、先進地である滋賀県ともタッグを組み、進めている最中です。

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 「三方五湖」は名前のごとく、「広さ」「深さ」「水質」が異なった5つの湖から形成されており、まさに生物多様性を保持していて、全国でも希少価値の高い湖群です。この三方五湖は、ナショナルサイクルルート認定を目指す「若狭路コース」のちょうど真ん中付近に位置し、コース内でとても意味のある場所になっています。最近では三方五湖を一周するコースの呼び名を「ゴコイチ」とし、少しずつではありますが浸透してきています。

 私も時々、三方五湖一周を楽しむ機会があるのですが、自転車を活用し楽しむ時は、車でスッと回ってしまう時とは違っていろいろな発見をすることがあり、とても楽しく思っています。目的地までの移動手段として自転車を選び、先を急ぐ場合はなかなか周りを気にする余裕もなく、新たな発見に繋がりにくいですが、心に余裕を持ち、面白いと思えるところで何度でも自転車を止める気持ちで挑むサイクリングは一味違った楽しみを与えてくれます。

 5つの湖の中で一番大きな「水月湖」周辺では、北側にこの地域の特産品である『梅』の畑が広がっています。その梅畑と湖の境目に整備されているサイクリングコースを楽しむことができるのですが、本当に湖のすぐ近くを走ることから、時々大きな鯉が姿を見せてくれたり、海の魚であるボラやスズキを見ることができたりするなど、沢山の魚と出会えます。

 次に「三方湖」。三方湖沿いには昔から移動手段として活用されていた船を仕舞っておく『船小屋』がいくつか存在します。わらぶき屋根で出来た船小屋は見ごたえがあると同時に、この地域の歴史を感じることの出来る建造物として楽しむことができます。

 そして、湖畔に一番豊かな自然が残る「菅湖」の湖畔を走ると、冬季には渡り鳥の姿が。5つの湖の中では一番、渡り鳥が生息することが知られていて特別な景色を見せてくれる湖です。自転車を止めて、双眼鏡片手に野鳥を楽しむことがおすすめです。

 美浜町に入って1つ目の湖の「久々子湖」は、五湖の中では湖畔沿いにもっとも近代社会が広がっていて、人間生活と自然がうまくマッチした空間として楽しむことができます。今や地元美浜町民の文化となりつつある『ボート競技』が盛んに行われており、湖面では若者達が青春の日々を過ごしている姿が拝見でき、なんだか心が熱くなる空間です。

 そして最後が「日向湖」です。この湖周辺は昔ながらの漁村が広がり、なんとも言い難い風情を感じることができる空間です。過去には2度ほど映画の舞台としても活用された経験があるぐらい、ほかの地域からお越しいただいた方々に感動を与える力を持った湖畔になっています。

 このように「三方五湖」は、生物多様性に富んだ自然豊かな地域でありながら、それぞれの湖周辺にはそれぞれの歴史や風土が生み出した人間社会の風景も広がり、この地を楽しもうとする方々の心をホッとさせる素敵な空間です。

 是非、高速のサイクリングで通り過ぎるのではなく、のんびり・ゆったりと、その場所独自の「匂い」「風」「人」「文化」を感じ、過去に思いをはせながら楽しんでいただければ幸いです。「三方五湖」の湖畔には、まだまだ私の知らない「過去」「文化」「歴史」が眠っているはずです。今後もサイクリング楽しみながら、その一つ一つを紐解いていこうと考えています。

 もしチャンスがございましたら、三方五湖へサイクリングを楽しみにお越しください! そして、感じたこと・気付いたことがありましたら教えてください。一緒に過去を解き明かしていきましょうね!!

(「自然に大の字 あそぼーや」代表 田辺一彦=福井県若狭町)

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