阪神ドラ1森木、“スーパー中学生”を襲った大ピンチとは? 窮地を救った恩師の助言

阪神から1位指名を受けた高知・森木大智【写真:宮脇広久】

硬式転向で球速が上がらず「ボールが滑っていた」

高知高の最速154キロ右腕、森木大智投手が11日の2021年「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」で阪神からドラフト1位指名された。中学3年の夏に軟式で150キロを計測し「スーパー中学生」として全国にその名を轟かせたが、高校に進学し硬式のボールを握ると球速が上がらず、右肘の故障というピンチに追い込まれたこともあった。

森木は高知中3年の時、春の全日本少年軟式野球大会と夏の全国中学校軟式野球大会で、チームを“ダブル全国制覇”に導いている。硬式より球速が出にくいといわれる軟式球で150キロをたたき出したのは、夏の四国大会決勝だった。

内部進学した高知高では、1年の夏から主戦投手となり注目を浴びたが、球速はなかなか150キロの壁を超えない。2018年夏に高知中監督から高知高監督に転じ、森木を6年間指導した浜口佳久監督によると「硬球に指がかからず、滑ってしまっていた」。周囲の期待に応えられない焦りからか、夏の県大会決勝で敗れた後、右肘痛を訴え実戦から遠ざかった。

浜口監督は「指にかからないボールを無理矢理かけようとして、上半身主導のフォームになり、肘に負担がかかってしまっていた」と分析。トレーニング方法を見直した。「目標は下半身をしっかり使えるように強化すること。そうすれば、お前なら勝手に150キロを超える」と森木を励ました。

2年生になりコロナ禍で夏の県大会は中止となったがついに150キロを突破

2年生になると、コロナ禍で夏の県大会は中止となったが、ついに150キロを突破。今春の四国大会決勝で自己最速を3キロ更新し154キロに到達した。森木は「投球フォームを見直し、スクワットなどで下半身を中心に鍛えてきたことが(球速アップに)つながっていると思います」とうなずく。

今夏は県大会決勝で宿敵の明徳義塾に敗れ、甲子園には結局3年間で1度も出場できなかったが、スーパー中学生は着実に成長を遂げ、ノースアジア大明桜の風間球打投手(ソフトバンク1位)、市和歌山高の小園健太投手(DeNA1位)とともに「高校ビッグ3」と呼ばれる存在となった。

軟式から硬式の転向に戸惑ったように、プロでも壁にぶつかることはあるだろうが、乗り越えていくに違いない。浜口監督が「一生懸命努力する熱量では、誰にも負けない。ストイックというか、追い込まれるのが好き。私が『その程度の練習でいいのか?』と言えば、私の想像以上に練習する」と評する反発力があるからだ。

森木は「下半身や体力に、まだまだ弱い部分がある」と自覚。「球速よりも、相手打者が圧倒されるようなストレートの質を目指してやっていきたい」と語る。高校時代には立てずじまいに終わった甲子園のマウンドで、躍動する姿が目に浮かぶ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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